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2018.12.10
お知らせ「理事長の独り言 (第33号)」を掲載しました。

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宇宙政策調査研究センターの設置(第33回)

平成30年11月30日

 

(宇宙政策調査研究センター(JSF/SPRC)の設置)

 

先月半ばに、日本宇宙フォーラム(JSF)内に宇宙政策調査研究センター(SPRC:Space Policy Research Center)を新たに設置した。今回は、このJSF/SPRC設置の背景や意図などについて紹介する。

 

(JSF/SPRC設置の背景要因)

  

背景要因として2つある。一つはこのところ政府や与党が宇宙に関するシンクタンク機能を整備・強化する必要があると指摘していることである。もう一つは、JSF自身がこれまでも長く宇宙のシンクタンク的な活動を実施してきたことである。

 

<政府・与党の政策>

 

第一の要因で政府や与党の政策に関わることだが、宇宙基本計画(平成27年1月9日策定、平成28年4月1日改訂)において、宇宙政策の「調査分析・戦略立案機能の強化」として、「諸外国の宇宙政策や宇宙産業の動向等を調査分析し、我が国が取るべき戦略を長期的視点から検討するための企画立案機能を強化する」とされた。また、本年5月15日にまとめられた自民党の宇宙・海洋開発特別委員会の提言においても、「リアルタイム調査能力、政策企画立案能力を有する宇宙シンクタンク機能を整備し、適時適切に政府の宇宙政策を支援する」と指摘された。これらの政策を受けて、JSFとしてもこれまでのシンクタンク的な活動を更に充実させることが重要と判断し、JSF/SPRCを設立することを決定した。 

 

<JSFのこれまでの関連活動>

 

第二の要因でJSF自身のこれまでの関連活動に関わることだが、非営利団体としての中立性と宇宙に関する情報収集、活用、発信の実績を評価され、各種調査分析やコンサルティング業務を、政府、JAXA、企業、研究機関などの依頼を受けて実施してきている。この2年間の実績を見ても、宇宙基本計画上の3つの重要課題、「宇宙の安全保障の確保」「民生利用の推進」「産業・科学技術基盤の整備」の各項目に関し、内容の詳細は省くが、例えば次のような調査研究等を実施している。

 

① 宇宙空間の安定的利用の確保に関する調査(SSA(宇宙状況認識)シンポジウム開催を含む、平成29年度内閣府委託)

② 軌道環境改善のための公共事業或いは民間事業に向けたシナリオ研究

 

(平成29年度JAXA委託)

 

③ 欧州における宇宙を用いた海洋状況認識(MDA)の現状と国際協力に関する調査(平成29年度新技術振興渡辺記念会研究助成)

④ 世界の宇宙航空研究開発動向調査及び調査情報システム維持運用の業務(平成29年度、30年度JAXA委託)

⑤ 宇宙基本計画に基づく国際協力の推進に関する検討調査(平成30年度内閣府委託)

⑥ 宇宙交通管理(STM: Space Traffic Management)の現状と今後の動向に関する調査研究(平成30年度新技術渡辺記念会研究助成)

⑦ 先進的な宇宙利用モデル実証等に関する調査(平成30年度内閣府委託)

⑧ 衛星データ統合活用実証事業(平成30年度経済産業省委託)

⑨ 有人宇宙輸送のビジネス展開に関わる調査(平成30年度JAXA委託)

   

(JSF/SPRCは幅広い連携協力の下で運営)

 

JSFは、1994年2月の発足以来、

ア.宇宙関連イベントや内外での会議開催等を幅広く支援する「広報普及事業」、

イ.国際宇宙ステーションの日本の実験棟「きぼう」での実験研究や光学望遠鏡やレーダによる宇宙デブリの観測等の「宇宙利用事業」、

ウ.官民の国内外での宇宙事業展開や人材育成支援等の「宇宙事業展開支援」

を中核事業としてきたが、これらに加えて、今後は上記に示した国内外の宇宙に関する調査研究活動を更に発展させ、民間の事業拡大、調査を通じた人材養成、国の政策決定の支援にも力を入れていきたい。JSF/SPRCはそのための中核活動拠点である。しかもJSF/SPRCの活動は、JSFの役職員だけで支えるものではなく、広く外部の有識者、専門家の協力を得て、運営したいと考えている。外部の連携協力機関には、大学、民間シンクタンク、JAXA, 国の政策研究機関などを想定しており、調査研究テーマに応じて、各機関、あるいは各機関の識者や専門家に参加してもらい、関係者の情報、知見を結集してより効果的な調査研究ができるように対処したい。

 

(JSF/SPRCが今後重視するテーマの例)

 

今後のJSF/SPRCの活動の在り方を考える上で、最近興味深い動きがあった。一つは去る9日にJSFで開催した賛助会員交流会での大貫美鈴さん(スペースアクセス(株)代表取締役、宇宙ビジネスコンサルタント)の講演「宇宙ビジネスの衝撃」である。大貫さんは、今の世界の宇宙ビジネスコミュニティでは、「10の衝撃」が進行中だという。それらは、

 

① 宇宙は経済開発が重点となった。世界の宇宙の売り上げの80%が民間需要。

② ロケットの価格破壊が起きていた。これにはロケットの再利用等が影響。

③ 人工衛星の小型化分散化が進んでいた。今後通信事業で22000機以上の小型衛星の打ち上げ見込み。

④ あらゆる分野で宇宙データの利用が進行。社会のデジタリゼーションを推進。

⑤ 宇宙製造が始まっていた。曝露プラットフォームの利用、宇宙3Dプリンティングによる製造等。

⑥ 月・火星の経済開発を目指した取り組みが始まっていた。商業宇宙ステーションベンチャーの登場等。

⑦ 多くの宇宙ベンチャーが生まれていた。今世界で1000社、2030年には10000社にも増大の可能性。

⑧ 日本のベンチャー・キャピタル投資が世界2位になっていた。

⑨ 商業宇宙開発にダイバーシティ(多様性)がもたらされていた。日本の宇宙ベンチャーは20数社。

⑩ 宇宙コミュニティでの雇用機会が増えていた。

 

と言う。この講演から、世界の宇宙産業が多くのベンチャー企業の出現により、急速にダイナミックに拡大しつつあることが分かる一方で、非常に厳しい競争関係にもあることも窺われた。既にJSFでは上記調査活動の⑦⑧を通じて、衛星利用による新たな産業展開、民生利用の推進に資する調査事業に取り組んでいるが、大貫さんの講演内容は急激に変化しつつある宇宙産業分野で今後JSF/SPRCが取り組むべきテーマを考える上で大いに参考になった。

   

また、宇宙安全保障についても目に留まる報道があった。10日付読売新聞朝刊は、政府は「宇宙・サイバー防衛強化」として、「現(防衛)大綱が策定された2013年以降、日本をとりまく安全保障環境は大きく変化している。・・・最近の安全保障で衛星が重要な役割を果していることを踏まえ、宇宙の監視態勢を強化し、自衛隊組織の再編を図る。・・・」と報じている。丁度、米国でもトランプ大統領の指示で「宇宙軍」の創設が検討されつつある。ここにきて、日米ともに宇宙安全保障が極めて重要な国の課題になりつつある。JSFによる上記の①③⑥の調査はすべて宇宙安全保障に関わるものであり、更に、昨年度まで毎年、計7回にわたり、内閣府主催のSSA国際シンポジウムの開催支援をしてきた。しかもJAXAからの委託により、過去10数年に渡り、実際に宇宙デブリの観測も実施し、そのデータをJAXAに提供してきている。また、MDAについても米国海軍研究局の助成を受けて、平成27年度と28年度にかけて、国内研究者による数次の研究会の開催し、仕上げとして国際ワークショップ(WS)を開催した。今年度も来年2月に別の海洋関係のシンクタンクと国際WSを共催することを計画中である。このような実績に鑑みれば、今後も宇宙安全保障の分野で、JSF/SPRCは政府やJAXAの活動に重要な貢献ができると思う。

  

(シンクタンク-JSF/SPRC-の役割)

  

シンクタンク機能を持つ産官学の研究所等では、宇宙の分野にも実績を持ち、今も積極的に活動している機関は少なくない。日本全体の宇宙政策、宇宙戦略の企画立案機能、能力を強化するためには、それぞれの機関が自らの特徴を存分に活かし、積極的に活動することが必要である。JSF/SPRCとしては、引き続き、広く外部の有識者、専門家の協力を得て、非営利団体としての中立性を生かした客観的な調査研究を行い、研究成果を広く発信することや、自発的な政策提言を行うことにも努めてまいりたい。政府においても、国内関係機関の活動を様々な形でしっかりサポートしていただきたい。宇宙政策、宇宙戦略とは、結局のところ国家の持続的安定と繁栄に資するためのものだからである。JSFもSPRCの活動により、その一翼を担いたい。

  

 SSA.jpg2018年3月開催のSSA国際シンポジウムの様子

 

(了)

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