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2017.02.20
お知らせ「理事長の独り言 第21号」を掲載しました

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【第21号】失敗は成功の元?

                                     平成29年2月20日

  

(最近の宇宙活動の成果)

この2か月余りの我が国の宇宙活動を振り返ると、力強い成功とちょっと気になる失敗が繰り返されている。成功例は次の通りである。

① 昨年12月9日、H-ⅡB6号機による宇宙ステーション(ISS)補給機「こうのとり」6号機(HTV6)の打ち上げ成功、ISSの運用に不可欠の諸物資のISSへの移送、ISSの不用物資の「こうのとり」6号機への搭載、本年1月28日、「こうのとり」6号機のISSからの無事の離脱、そして同2月6日の大気圏への再突入とすべて計画通りにミッションが完了

② 昨年12月20日、イプシロンロケット2号機によるジオスペース探査衛星(ERG,のちに『あらせ』と命名)の打ち上げ成功及び本年1月23日、切り離された「あらせ」の衛星機能の健全性を確認、衛星状態は正常

③ 本年1月24日、H-ⅡA32号機によるXバンド防衛通信衛星2号機(のちに「きらめき2号」と命名)の打ち上げ成功及びきらめき2号の機能の健全性を確認(報道発表がないので筆者の推定)

これらは、我が国基幹ロケット3種類の成功オンパレードだと言ってよい。短期間にこのような成功が続いたのは初めてだろう。改めて我が国の宇宙技術の信頼性の高さを実証したもので、誇るべき成果と言ってよい。

 

(気になる失敗)

気になる失敗例とは、次の2つである。

ア.本年1月15日のSS-520の4号機について、打ち上げ後約20秒でテレメータからのデータが途絶え、機体の飛行状況を把握できなくなったため、安全上の措置として、第2段点火許可コマンドの送出を断念、ロケットは予定落下海域に落下したが、打ち上げ(実験)は失敗

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©JAXA(SS-520 4号機打ち上げ)

 

イ.「こうのとり」6号機のISSからの離脱後、大気圏再突入までの間に実施が予定されていた宇宙デブリ除去対策のための導電性テザーの実証実験「KITE(カイト)」において、放出機構の不具合のため長さ約700mのワイヤーの「KITE」が「こうのとり」から伸展せず、しかし、「こうのとり」の機体を利用し、電界放出型電子源を用いた電流を流す原理は確認、後者は成功と言えるのかもしれないが、前者の失敗が重たい

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©JAXA(HTV搭載導電性テザーの実証実験(KITE)イメージ図)

 

(失敗の原因究明と対策)

これらの失敗は何故起こったのだろうか?

ア.についてのJAXAのプレスリリースでは、興味深いことに、表題に「実験結果について」とあり、「打ち上げ」という言葉はなく、②や③とは明らかに違うのである。これには今回のSS-520の打ち上げプロジェクトの性格が反映されている。今回は、民生技術を用いてロケット・衛星の開発を行い、3kg程度の超小型衛星の打ち上げの実証を行うことを目的とするものだった。これは経済産業省の公募事業で、JAXAは民間企業とともにこれに応募し採択されたのである。SS-520ロケットはもともと2段式であるが、今回は第3段を新規に開発し、この3段式小型固体ロケットに超小型衛星を搭載し、双方の技術実証をするというプロジェクトだった。今、世界の宇宙市場で激しい競争が起こりつつある小型衛星市場への進出と同衛星を安価に打ち上げられる小型ロケットの開発・運用を目指したプロジェクトであっただけに、残念な結果となった。

2月13日にSS-520の実験失敗の原因と対策がJAXAから発表された。文部科学省の宇宙開発利用部会に提出された報告書(参考3)によると、テレメータのデータが途絶えたのは、そのための一部の搭載機器が電源を喪失したからと推定された。そしてその原因として可能性が大きいのは、電線自身が損傷し、短絡(ショート)が発生し、電源関係機器内外の部品が損傷または断線に至ったからだと推定された。"ショートを防ぐ"対策のため、電線と金属部を直に接しないような設計に見直すなど電線被膜の損傷対策が上げられており、随分基礎的な課題のような印象を受ける。また、ロケットの設計及び組立に関し、信頼性の高いシステムとすべくすべて細部にわたって見直しを図るなどともしている。これは、今回打ち上げ能力向上を目指して、軽量化等の設計変更を実施したことを一部反省しているのだろう。良かれと思ってチャレンジしたことが裏目に出たということだろうか。

 

イ.についてJAXAはなお原因調査中のようである。この実験は、「こうのとり」6号機から700mにもなるワイヤー「導電性テザー」を宇宙空間に展開し、そこに電流を流し、その際電流によってローレンツ力が発生し、宇宙デブリ(今回の実験では「こうのとり」6号機がいわば模擬デブリ)の動きにブレーキをかけ(減速させ)大気圏内に落下させることが実行可能か否かを確認しようというものである。しかし、ワイヤーが全く放出できなかったことは、放出機構に機械的なトラブルが生じたか、機構を駆動するための電子装置に問題があったか、真相の解明が待たれる。宇宙は極低温、真空、無重力、強い放射線など地上環境とは大きく異なるので、予期せぬ現象が起こる可能性がある。2月6日の「こうのとり」6号機のミッション完了についてのJAXA理事長談話では、「『KITE』の実験結果を詳細に分析し、不具合の原因究明を行うとともに今後のスペースデブリの除去技術の実用化に向けて活用してまいります」とある。

 

(今後の課題:開発計画の継続が重要)

今回の2つの失敗について課題は2つある。第一には、言うまでもなく、既に触れた原因究明と再発防止策の徹底であり、第二には、その上で開発計画を継続することである。

第一の課題について、ア.については概ね明らかになった。イ.はこれから本格化するのだろう。しっかり取り組んでもらいたい。宇宙開発の中で2つの失敗は規模としては小さいものかもしれない。しかし、小さな失敗が続いて大きな失敗に繋がることは避けねばならない。むしろ「失敗は成功の元」と言われるように、失敗経験を活かして大きな成功を実現してほしい。感度の高い注意深い態度で失敗の原因究明と再発防止策を明確にし、将来のすべてのプロジェクトに活かすことが必要である。

第二の特に強調したい課題は、JAXA理事長談話にあるように、今回のプロジェクトの実用化を目指して開発を続けてほしいということだ。民生技術を利用した小型衛星や小型ロケットの技術実証は、今後の我が国の宇宙産業の活性化と拡大推進に重要である。またスペースデブリの除去は宇宙の安定的利用のための世界的な課題であり、我が国が率先して取り組むに相応しい重要な政策課題である。いずれも失敗のままで終わっていいはずがない。中途半端は一番良くない。ただ気になるのは、2つともその開発や実証の継続が宇宙基本計画など政府の政策として明確にされていないことだ。政府、JAXA、関係企業は今後も協力し、両プロジェクトを継続してほしい。そして今回の失敗に学んで、確実に成功させ、市場の評価が得られるまでに技術の信頼性を高めてもらいたい。

 

(参考)

1.(プレスリリース) SS-520 4号機実験結果について

  2017年1月15日 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構

2.(プレスリリース) SS-520 4号機実験の実施について

  2017年1月13日 JAXA宇宙科学研究所

3.SS520-4号機実験結果失敗の原因究明結果および対策について

  2017年2月13日

  宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所SS520-4号機実験失敗対策チーム

  (資料24-1 科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会 

  宇宙開発利用部会調査・安全小委員会)

4.JAXAお知らせ 「こうのとり」6号機、大気圏に再突入・ミッションを完了

  2017年2月6日

5.(プレスリリース) 宇宙ステーション補給機「こうのとり」6号機(HTV6)の大気圏への再突入完了について  

  2017年2月6日宇宙航空研究開発機構

  理事長談話:宇宙ステーション補給機「こうのとり」6号機(HTV6)のミッション完了について

6.JAXA HP研究開発部門 HTV搭載導電性テザー実証実験(KITE)の結果について http://www.ard.jaxa.jp/pickup/kite.html

  

  

【理事長の独り言 バックナンバー】

http://www.jsforum.or.jp/info/2016/hitorigoto.html

 

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