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2017.11.13
お知らせ「理事長の独り言 第27号」を掲載しました

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(第27回)人類の夢の実現となるか?

 平成29年11月13日

  

 

(大人気の「SPACE MEETS YOKOHAMA-きぼう、その先へ」)

  

油井亀美也、大西卓哉、金井宣茂の3宇宙飛行士が初めて一堂に会するというので、その会場に行ってみた。先月26日に横浜パシフィコの国立大ホールで開催された「SPACE MEETS YOKOHAMA―きぼう、その先へ」とタイトルのついたイベントである。金井宇宙飛行士が12月半ばから国際宇宙ステーション(ISS)に約4か月滞在するので、その壮行も兼ねた大集会だ。桜木町駅から歩いて、午後6時15分頃に会場に着く。既に玄関に向けて長蛇の列が並び一番後ろは見えない。開会まであと15分しかない。列には男女を問わず若者が多い。更に小さなお子さん連れの家族が目につく。幼稚園か、小学校の低学年か。乳飲み子を抱いた若いお母さんもいて驚く。「ここまで来るのも大変だったのでは?」受付を済ませながら気づいた。フロアは満員電車並みに混雑し人々で溢れている。満員電車と違うのは子供が沢山いてその活気がすごいことだ。よく見ると、展示物があちこちにある。宇宙食出品の店がいくつもあり、宇宙服、ISSの「きぼう」の模型なども展示されている。とにかく、熱気がムンムンだ。科学技術分野の中でも「宇宙」の人気がずば抜けていることを痛感させられる。しかも若い世代に。今の日本でこういう光景を目にすることはめったにない。今日は一体何名くらい集まるのか?((注)この日のイベントの最後に閉会の挨拶に立った宇宙飛行士の古川 聡さんは4000人の入場者があったと発言)大ホールに上がるエスカレーター待ちの列も長さが分からないほど。もう、開始時間だ。だが、お客さんはまだ入り切れない。これだけ大勢の人が集まったのは、JAXAにとっても初体験。結局開始時間が午後7時に繰り下げられた。

  

  

(油井、大西両宇宙飛行士が大いに盛り上げた会場)

 

ここで大活躍したのが、油井さんと大西さんだ。突然舞台に油井さんが現れて、「進行係から7時まで場を繋ぐように言われたので出てきました。」とにこやかに話し始めた。明るくエネルギッシュな語り口で会場の関心が油井さんに集中する。油井さんが尋ねる!今日のイベントを「チラシで知った人?」「インターネットで知った人?」「私(油井)のツイッターで知った人?」。それぞれに会場から沢山の手が上がり、がぜん盛り上がる。大西さんも登場する。穏やかで知的な話上手だ。二人が掛け合いながら、舞台から降り、フロアとの活発なやりとりとなる。会場は最高潮に盛り上がる。さすが宇宙飛行士、対話能力が素晴らしい!二人が質問を受けますと述べると、数えきれないほどの子供たちの手が上がる。次々と「ハイ!ハイ!ハイ!・・・」。指名された子供からの質問は、「二人は喧嘩をしたことがあるか?」「宇宙食で好きなものは?」「宇宙飛行士になるために大事なことは?」など。最後の大事な質問に対し、大西さんは、「嫌なことから逃げない。苦手なことをする。ポジティブな考え方をする。」と答え、油井さんは「勉強も家の手伝いも好きなことを続ける。嫌いなことをやるのも大事。」と答えた。二人は、宇宙飛行士に限らず、人間として成長するために大事なことを伝えたと思う。イベントのプログラムも良かったが、一番盛り上がったのは、予定になく急遽「場繋ぎ」で行われた20分間の油井、大西両宇宙飛行士の舞台登場だった。シナリオのない舞台でシナリオを作り、二人による自然体で構えのない子供たちとのやりとりは、宇宙飛行士の能力の一端を表していた。宇宙飛行士は子供たちにとって「英雄」だ。「英雄」と近くで直接話ができて、子供たちには忘れられない日になっただろう。

  

  

(第1部「きぼうの今と未来~Before 2020」と金井宇宙飛行士のミッション)

 

午後7時、プログラムの第1部は「きぼうの今と未来~Before 2020~」のトークショー。ここで初めて金井さんも含む3人の宇宙飛行士が揃った。油井さんと大西さんはその生い立ちとともに、ISSでの活躍ぶりを映像とともに説明し、この日の主役の医師でもある金井さんはISS「きぼう」での自らのミッションを説明した。三つの重要な活動があり、第一はたんぱく質結晶生成実験、第二は小動物(マウス)飼育、第三はアジアン・トライ・ゼロGなるアジアの学生からの提案実験の実施、だという。実はわがJSFの専門家が、JAXAとの契約に基づき、多くのISSでの実験の準備作業や成果のまとめを担当し、各種の支援をしている。今日、たんぱく質結晶の実験は創薬との関係でその重要性が増しており、マウスの実験は人間の健康に影響を与えるデータを取るもので、第2回マウス長期飼育ミッションが終了したところで今後テーマが増える見込みである。いずれについてもJSFは全力を挙げて支援業務に取り組みたい。会場の子供たちからの質問に対し、金井さんが「もともとあった深海医学への関心が宇宙医学への関心に発展したのが宇宙飛行士になろうと思ったきっかけ」「一番つらかった訓練は、ジェット練習機T-38による飛行訓練」と答えたのは興味深かった。そして「宇宙を楽しんで無事に帰ってきます」と元気に決意表明し、最後に油井さんが会場に向けて「ツイッターをフォローし、金井を支えてほしい」と呼びかけた。金井さんのISSでの活躍と成功を祈ります!

  

 

(第2部「きぼう、その先へ~From 2020 to 2030~」は宇宙探査推進総決起大会)

 

第2部もトークショーでタイトルは「きぼう、その先へ~From 2020 to 2030~」。登壇者は3宇宙飛行士に加えて山崎直子元宇宙飛行士、國中 均JAXA宇宙探査イノベーションハブ長、佐藤直樹JAXA国際宇宙探査推進チーム担当である。テーマは宇宙探査である。当然予想されたことだが、登壇者全員が宇宙探査には積極的だったと言ってよい。國中ハブ長は次のような趣旨を述べた。「宇宙探査は有人と無人のベストミックスのやり方になる。JAXAだけでやるのではなく、オープンイノベーションで、民間企業との共同技術開発が重要。月や火星に人を送り込みたい、2020年代には月の南極に基地を建設したい。これを実現するには、地上の技術と宇宙の技術の融合によるイノベーションを実現し、効果的、効率的に取り組む必要がある。」山崎さんは、「ISSの2024年以降はまだ答えはないが、継続なら民間が運営するかもしれない。ISSでの水循環技術は重要だがまだ完全ではなく、そのような重要技術の改善に日本の技術が使われるとよい。将来、月からの地球の映像を見られるようになると素晴らしい。」佐藤さんは、「まず月、そして火星に行く。月探査のシナリオとして、2030年代には日本人宇宙飛行士を月に立たせたい。その前の2020年代に月の近くに宇宙基地を建設したい。」これらを受けて、油井さんは「2020年代に月に行けたら士気も上がる。新しい技術や訓練も必要になる。」、大西さんは、「自分はアポロ11号による人類初の月着陸のような興奮を経験したことがない。探求心が人類進歩の源。それに貢献したい。」などと述べた。最後に会場に向けて司会者が、「宇宙探査を進めるべきと思う人は赤い札を掲げて」と呼びかけると、ほぼ全員が赤い札を掲げた。第2部は、まさに「宇宙探査推進総決起大会」となった感がある。

  

  

(宇宙飛行士への期待と宇宙探査の費用対効果)

4000人もの人が集まったのは、宇宙飛行士の人気が絶大だからであり、子供たちや若者にとって"あこがれ"のそして"夢"の存在だからだ。一方で宇宙飛行士は、国民からの支持があって誕生したのだから、これからも宇宙と国民を繋ぐ架け橋となって、積極的に子供たちや国民の宇宙リテラシーの向上に貢献してほしい。同時に、これだけの宇宙サポートの熱気をどうすれば我が国の一層の宇宙活動の充実・拡大、特に有人宇宙探査につなげられるのかと自問した。国の如何なる政策も国民の理解と支持があって初めて前進できる。宇宙分野は、衛星利用が気象、通信、放送、測位(GPS),災害監視など既に広範な実用分野に及んでいる。これらの分野は、経済や日常生活に関係深く、国民の支持も得やすいし、投資もしやすい。他方、科学的探求やそれに近い世界に入ると、その意義の専門性や抽象性、日常からの距離のゆえに、一般に政治や行政からの支持にも限界が出てくる。必要な投資について、いわゆる「費用対効果」の議論もより厳しくなるからである。

  

宇宙探査についても、その「効果」をどのように考えればいいだろうか。効果には、産業や科学技術、イノベーション、国際政治や国際貢献、安全保障、国力などいくつもの要素があるが、それだけで説得力を持てるだろうか?宇宙飛行士は国民からの信頼厚い英雄だが、英雄が叫べば宇宙探査が実現できるというほど単純でもない。

  

  

(月探査は"人類の夢"の実現?)

  

独り言第26回でも述べたが、今の世界の動きから見て、国際宇宙探査は、まずは有人で月を目指すことになるだろう。しかも国際協力によって実施されるだろう。その場合、月探査の「効果」、つまり、"意義や価値"をどう考えればよいだろうか。宇宙飛行士になることは、"個人の夢"だが、人が月探査を行うというのは、個人の夢でも企業の夢でも国の夢でもなく、"人類の夢"の実現であり、「新たな人類史を切り拓く人類協働の取組」だと位置づけられないだろうか?だからこそ、必然的に国際協力による取組となるのであり、意志と能力を備えた国はすべて参加が認められるべきだと考える。従って、月探査の意義は、第一に「人類にとっての意義」が明確にされるべきではないか。その点を参加各国が出発点として共有することができれば素晴らしい。そのためにも、月探査計画全体のコンセプトや基本ロードマップが同時に議論されることが望ましい。その上で、国際協力の形態と各国の役割分担の具体化、各国内もしくは国境を超えた官民協力、技術論や方法論等を順次参加国間で検討・協議しつつ、併せて月探査の参加各国にとっての意義や価値を相互に確認していくプロセスを経てはどうだろうか。このようなやり方となれば、有人月探査プロジェクトが、"人類の未来の平和を創る"プロジェクトになるのも当然のことである。これこそ、G7やG20のテーマに相応しい。日本はそのためのリーダーシップを取り、「人類の夢」の実現に貢献すべきではないだろうか?

   

 (了)

    

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