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2017.04.07
お知らせ「理事長の独り言 第22号」を掲載しました

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【第22回】情報収集衛星(その1) 

―情報収集衛星の誕生、発端は北朝鮮―         

 

2017年4月7日

 

(情報収集衛星レーダ5号機の打ち上げ成功)

先月17日、種子島宇宙センターから、情報収集衛星レーダ5号機がH-ⅡAロケット33号機により打ち上げられ、正常に分離されて所定の軌道に投入された。これで、レーダ衛星は4機となり、光学衛星3機と合わせて、我が国の情報収集衛星は7機体制となった。2025年頃には情報収集衛星8機、データ中継衛星2機の計10機体制にすることが計画されている。

    

(情報収集衛星導入の理由は北朝鮮ミサイルの発射)

我が国が何故情報収集衛星を打ち上げることになったのか、ご存知の方は多いと思うが、発端は北朝鮮である。経緯はこうだ。1998年8月31日、北朝鮮は東の方向に向けて、弾道ミサイルテポドン1号(日本政府の判断)の発射実験を行った。このテポドンの1段目(推定)は日本海に、2段目以降(推定)は、日本の東北地方上空を通過して、三陸沖の太平洋に落下した。この北朝鮮から突然発射されたミサイルの脅威に国論は震えた。与野党が一致して政治的判断を下し、我が国独自の事実上の偵察能力を保有すべく、早くも同年12月22日には情報収集衛星導入が閣議決定された。     

当初は光学、レーダ各2機の4機体制で始まったが、上記の通り将来10機体制に発展する。最近の北朝鮮は全く国際世論を顧みない。それを無視して繰り返す無謀な弾道ミサイル発射実験や新たな核実験の兆候を見れば、北朝鮮の行動が既に"危険なレベル"に達しているとの見方は多い。米国は前政権とは違って、軍事的対応も含めたあらゆる選択肢をテーブルに載せているという。万一に備えるために我が国も朝鮮半島に対する"弾道ミサイル等の偵察能力"の拡大と強化は必要不可欠だろう。

  

(情報収集衛星はdual use―大規模災害等にも活用)

実は情報収集衛星は、国家安全保障上のニーズに対応するだけでなく、自然災害などへの対応にも活用される。だから"情報収集"衛星なのである。実際、法令上の情報収集衛星の定義は、「我が国の安全の確保、大規模災害への対応その他の内閣の重要政策に関する画像情報の収集を目的とする人工衛星」である。2011年3月の東日本大震災の影響地域の画像が関係省庁に配布されたり、2015年9月の台風18号により水没した茨城県常総市の鬼怒川流域の被災地域の撮影画像が公開されたりもしている。東南アジア諸国での台風被害の様子をこれらの国に画像提供されることもある。

  

まさに情報収集衛星はdual useなのである。同衛星も技術的には地球観測衛星と変わらない。観測対象は地球上の何でも可能だ。その能力は平和の構築や社会の安定、発展、防災・減災のために総合的に活用される。特に、災害時の民生利用は国民が大いに歓迎するところだが、あまり知られていないように思える。自衛隊が、この20年ほどPKOや災害復旧、人命救助など国内外で活躍していることが、しばしば国民の目に触れ、自衛隊への理解と支持を増やしている。政府は情報収集衛星についてもその民生利用のpublicityをもっと上げる努力をして、同衛星の重要性について国民の理解を広げることはできないのだろうか。

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 出典:内閣官房ホームページ

 

  

(内閣衛星情報センター)

情報収集衛星はdual useと述べたように、その画像の利用省庁が、内閣官房、警察庁、公安調査庁、外務省、防衛相、消防庁、経済産業省、海上保安庁、国土地理院にまで広がるので、同衛星の運用は、防衛省ではなく内閣情報調査室に属する内閣衛星情報センターにより行われている。

  

実は、情報収集衛星導入の閣議決定時(1998年12月)にはまだ同センターは存在しなかった。当時は大規模な行政改革(省庁再編)の議論が進行中であり、2001年1月の現省庁体制発足を機に、同センターも正式に発足した。偶々、筆者は1999年夏から2001年初めまで、科学技術庁(当時)で行政改革業務を担当していた。科技庁が宇宙開発利用を重要任務の一つとしていたことから、内閣衛星情報センターの制度設計の一端や科技庁から人とポストをセンターに移管する仕事にも携わった。今も人事交流がある。当初、その活動には興味、期待、不安があったが、同センター発足約2年後、2003年3月28日にH-ⅡA5号機により光学衛星とレーダ衛星の各1号機が打ち上げられて以降は、同センターの運用業務が本格化した。発足から16年余を経てこの間紆余曲折もあっただろうが、内閣衛星情報センターは、我が国の安全を守るための重要な機関になったと思う。

  

情報収集衛星導入の直接契機となった北朝鮮の脅威は今や差し迫ったものになっている。東シナ海や南シナ海の問題もある。更にアジア・大洋州地域における自然災害の頻度は増大傾向にある。従って、情報収集衛星の役割や同センターの活動への期待は以前にも増して大きい。

 

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出典:内閣官房ホームページ

  

   

(H-ⅡA6号機による情報収集衛星の打ち上げ)

情報収集衛星について忘れられない思い出が、H-ⅡA6号機による光学衛星とレーダ衛星の各2号機の打ち上げである。2003年11月29日のことだ。しかし、打ち上げは失敗した。その顛末を「情報収集衛星(その2)(第23回)」でご紹介したい。

  

(参考)

1.H-ⅡAロケット33号機による情報収集衛星レーダ5号機の打ち上げ結果について

2017年3月17日 三菱重工株式会社

           国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構

2.情報収集衛星(フリー百科事典「ウィキペディア」)

 

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