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2016.12.28
お知らせ「理事長の独り言 第19号」を掲載しました

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【第19号】 「こうのとり」6号機(HTV6)の打ち上げ成功に想う

         ―― "6"は鬼門でなくなったか?

         ―― アジア太平洋地域との協力をどう進めるか?

  

                              平成28年12月28日

 

(「こうのとり」6号機の打ち上げ)

H-IIB.jpg 今月9日の夜(22時26分47秒、日本標準時(以下同))、宇宙ステーション補給機「こうのとり」6号機(HTV6)を搭載したH-IIBロケット6号機(H-IIB・F6)が種子島宇宙センターから打ち上げられ、ロケットは計画通りに飛行、打ち上げ後約15分11秒に無事に「こうのとり」6号機を分離した。これでH-IIBは6回連続で打ち上げ成功、H-IIAも含めれば31回連続成功である。世界に誇れる高い打ち上げ成功率だ。また、4日後の13日夜(19時39分)には国際宇宙ステーション(ISS)にロボットアームで把持され、14日(3時24分)にISSと結合した。これから、宇宙飛行士の飲料水や食料、ISSの運用と利用に必要な物資等がISS内に運び込まれる。いろいろな実験なども実施される。よい成果が得られることが楽しみだ。

 

(鬼門の"6"はもはや鬼門でないか?)

 筆者個人の経験で、全く論理的でもないことだが、筆者から見て「宇宙」における数字の"6"は鬼門である。何故か?以下の苦い経験があるからだ。

 まず、独り言第13回で「壊れてしまったASTRO-H『ひとみ』から何を学ぶのか」を取り上げたが、その中で科学技術庁(当時)の担当課長として処理に当たった1994年8月に発生した「きく6号」の軌道投入失敗の顛末を紹介した。H-II試験機2号機による打ち上げと衛星の切り離しまでは成功したのだが、静止軌道への衛星投入失敗という予期せぬ事態に直面した。事故原因究明や再発防止対策の策定のため、その後の4か月間は緊張と重たい気分の毎日だった。

 第二に、H-IIロケットの5号機が1998年に、同8号機が1999年に連続して打ち上げ失敗したことにより、H-II6号機と7号機は打ち上げすら行われず、プロジェクト自体がキャンセルされてしまった。H-IIロケットは、それ以前の米国からの技術導入によって製造されていたNロケットなどと違い、日本の期待を集めた初の全段国産ロケットで大きな期待があった。それだけに衝撃は大きく、当時筆者は宇宙以外の仕事をしていたものの、日本のロケット開発能力をとても心配した。しかし、結局H-IIロケットの開発は中止され、H-IIの全面改良型のH-IIAの開発への移行が決定された。

 第三が2003年11月のH-IIA6号機の打ち上げ失敗である。しかも打ち上げわずか約11分後にロケットは前代未聞の指令破壊をされた。この内容は、独り言第10回「祝!H-IIA30号機打ち上げ成功」の中で言及した。同機の積み荷が情報収集衛星だったがゆえに、原因究明と再発防止策の策定への官邸の要求は非常に厳しく、技術及び体制の両面で多くの関係者を巻き込んで日夜の検討が繰り返された。幸いこの時の再発防止対策が"生きて"その後のH-IIAの打ち上げが連続成功している。

 つまり、日本の宇宙開発において、筆者個人にとって、「6」という数字を見ると過去を思い出し、とても気になるのである。しかし、嬉しいことにH-IIB6号機の打ち上げは完璧に成功し、「こうのとり」6号機(HTV6)も無事にISSにドッキングした。「こうのとり」6号機は来年1月中にも、ISSの不用品等を最大6トン搭載してISSから離脱し、大気圏に再突入し破棄される予定である。すべての作業を無事に終え、これを機に、宇宙の"6"はもはや鬼門ではなくなることを望む。

 

(「こうのとり」の新たな付加価値)

 独り言第3回の「『こうのとり』がはこぶもの」において、ISSへの物資の輸送の他に「こうのとり」あるいはその技術の活用をどうするか、基本は物資の"輸送"を担うということだろうが、それで何をなしとげるのか、との問いかけをした。

 今回の6号機のミッションにはそのヒントになるような「こうのとり」自体を使用して行う新しい実験の試みがある。一つは、2020年代中頃にロケット上段のデブリ除去実用化をめざし、導電性テザーの要素技術実証が行われる。これは「こうのとり」6号機のISS離脱後大気圏へ突入までの7日間をかけて実施の予定と聞く。同様に宇宙用薄膜太陽電池フィルムアレイシートモジュール実証実験で行われ、新しい太陽電池の機能が確認される。これらの技術実証は「こうのとり」6号機そのものが実験場になったようなものであり、「こうのとり」に新たな付加価値が与えられたと見なせる。

 

(「きぼう」をアジア太平洋地域の協力のプラットフォームに――小型衛星の放出)

 「こうのとり」6号機には、「きぼう」を利用するいくつかの実験装置が運び込まれたが、改めて注目したのは日本の大学と企業が製造した超小型衛星が7機、また、「きぼう」内の小型衛星放出機能を6Uから12Uに倍増させた放出機構を輸送したことである。7機の衛星のうち静岡大学のものは既に19日に宇宙へ放出された。

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 先月マニラのAPRSAFに参加した時、フィリピン政府関係者が強調し大変喜んでいたことが一つある。フィリピン初の50kg級小型衛星DIWATA-1について、北大と東北大が協力して開発を完了し、その後同衛星を米国の補給船「シグナス」でISSに打ち上げ、本年4月に「きぼう」から成功裏に放出したことである。そのことからも、「きぼう」の倍増した小型衛星放出機能を国内の大学や企業のためだけでなく、アジア太平洋諸国の小型衛星の放出に積極的に活用し、アジア太平洋諸国との協力に関する我が国のリーダーシップを更に発揮してほしいと思う。今回のAPRSAFでの「宇宙技術WG」や「宇宙環境利用WG」での議論からも、この協力は、APRSAFの重要なトピックになりうるのではないか。

 既に日本とアジア、アフリカ諸国との間でそのような協力の動きが散見されるが、アジア太平洋諸国の小型衛星を「こうのとり」でISSに輸送し、「きぼう」内から宇宙に放出すれば、「きぼう」も「こうのとり」もアジア太平洋諸国の衛星打ち上げのためのプラットフォームになるわけである。同時にISSがアジア太平洋諸国との協力に拡大開放されることとなり、国際協力プロジェクトISSの意義(独り言第7回)が更に高まるというものだ。当然、日米OP3(日米オープン・プラットフォーム・パートナーシップ・ プログラム)の目的にも合致する。我が国とアジア太平洋諸国との広範な国家間関係の強化にも良い影響を与えるだろう。

 また、宇宙に放出するアジア太平洋諸国の小型衛星の開発のため、DIWATA-1の場合のように、各国の若い世代の参加を得て、日本の大学の研究者や企業の技術者が衛星開発・製造について協力する枠組みを作れれば、我が国が技術と人材育成の両面でもこれらの国に貢献できることになる。

 以上のような研究、基礎技術、人材の各分野でのbottom up的な取り組みを広げていくことは、将来の我が国とアジア太平洋諸国等の新興国との国際宇宙ビジネスや宇宙インフラ輸出の拡大をもたらす可能性を高めるだろう。

 

(宇宙協力に戦略的思考を)

 今や米露にとどまらず、仏、中、印、英、独等主要な宇宙大国は、宇宙開発、宇宙技術に関心を持つ新興国との連携・協力をできる限り幅広く構築しようとしのぎを削っている。そのことが、国際社会の中で自国の広範な戦略的利益に合致すると強く意識しているからだ。新興国もまた、自国の経済発展のために宇宙技術の利用が必要不可欠であるとの認識を深め、積極的に宇宙大国との国際協力の強化に努めている。まさに、宇宙技術の宇宙空間への利活用は、協力パートナーを巻き込みながら、世界的に激しい競争の時代に入っていると認識すべきであろう。その意味で、我が国も長期的展望の下に、アジア太平洋諸国をはじめとする新興国との二国間、多国間の宇宙協力を、産官学の役割分担と連携も考慮しながら着実に推進していくことが望まれる。

 

 

(参考)

○プレスリリース:H-ⅡBロケット6号機による宇宙ステーション補給機「こうのとり」6号機(HTV6)の打ち上げ結果について(平成28年12月10日、三菱重工業株式会社、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)

○プレスリリース:宇宙ステーション補給機「こうのとり」6号機(HTV6)の国際宇宙ステーションとの結合について(平成28年12月14日、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)

○JAXA宇宙航空研究開発機構 宇宙ステーション・きぼう広報・情報センター 「こうのとり」6号機の主な搭載品

○国際宇宙ステーション計画を含む有人宇宙活動(内閣府宇宙政策委員会宇宙産業・科学技術基盤部会提出資料、資料2-1、平成28年10月19日(水)、文部科学省研究開発局)

 

 

 

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