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2016.12.01
お知らせ「理事長の独り言 第17号」を掲載しました

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【第17号】 APRSAFに参加して     

                           平成28年12月1日

 

 

(第23回APRSAF(アジア・太平洋地域宇宙機関会議)の概要)

先月の15日から18日まで、フィリピンのマニラで第23回APRSAF(Asia-Pacific Regional Space Agency Forum: APRSAF-23)が開催され、初めて参加した。今回のテーマは「宇宙科学技術とイノベーションによって未来を創る」("Building a Future through Space Science, Technology and Innovation")である。最初の2日間がWorking Group(WG)のセッションで、宇宙利用、宇宙技術、宇宙環境利用、宇宙教育の4つのWGがあった。各WGとも丸2日間行われたから、それぞれ参加国からかなりの数の主として実務者による発表があった。私の役割は、初日15日夕刻に開催されたside event 「革新的宇宙事業と宇宙世代のリーダーシップ・メンタリング」において、米国宇宙財団の上級副理事長とともに共同モデレーターを務めること及び2日目の宇宙教育WGで「JSFでの宇宙教育」について20分ほどのプレゼンをすることだった。

SideEvent.JPG後半の2日間がプレナリーで、3日目は、JAXAの奥村理事長、インドネシアLAPANのジャマルディン総裁等などによる12か国からの「カントリー・レポート」、「自然災害の緩和技術」と「イノベーションのための小型衛星」をテーマとする2つの特別セッション、4WGからのまとめの報告、4日目の最終日に、国際機関及び他地域宇宙関係機関の計9機関からのアジア太平洋地域との宇宙協力の報告、全体とりまとめセッション及び勧告の採択があった。これらすべてのセッションに参加したわけではもちろんないが、この機会にすこし感想を述べてみたい。

 

 

(APRSAFでの域内協力の進展)

今回のAPRSAFには33か国/地域そして10国際機関から576名の参加があった。各国参加者には当事者意識が強く感じられた。ホストしたフィリピン側は会議の全体共同議長をゲヴァラ科学技術省次官(研究開発担当)が務め(日本側共同議長は文科省白間官房審議官)、またプレナリーでの基調講演をデ・ラ・ペニャ科学技術大臣が行うなど責任をもって今次会議を盛り上げようという空気に満ちていた。今回の共同主催者は、フィリピン科学技術省の産業・エネルギー・新興技術研究開発会議(Philippine Council for Industry, Energy and Emerging Technology Research and Development -Department of Science and Technology(DOST-PCIEERD))及び文部科学省とJAXAである。もともとこのAPRSAFは23年前に当時のNASDA(宇宙開発事業団)が中心になって始めたもので、アジア太平洋諸国の宇宙機関間の協力について意見交換するためのボランタリーな集まりである。当時の日本と他の国々との宇宙技術やその利用という点では、その実力にかなりの格差があったと想像されるが、今やこの地域の国々の経済発展、技術発展を考えると、日本は宇宙先進国という立場にはあるものの、双方が具体的な協力を進められる環境は格段に整備されてきたと言えるだろう。そして現実にAPRSAFでの議論を経て、衛星を使ったセンチネルアジアという災害監視プロジェクトが今年10周年を迎え、また、過去8年間続いているSAFE(Space Applications for Environment)という森林や農業等の環境監視、国際宇宙ステーション「きぼう」を使った「Space Seed for Asian Future」(アジア各国の植物種子を「きぼう」に打上げ・回収し教育等に利用するミッション)実験や、「アジアの学生のための航空機微小重力実験コンテスト」、フィリピンのDiwata-1小型衛星の「きぼう」からの放出(今年4月)などの協力が行われている。

 

(APRSAFのパフォーマンスの向上のために)

一方、今回のAPRSAFに参加して、この地域間の協力をより効果あるものにするのは運営上もう少し工夫の余地があるのではないかと感じた。若干の例を挙げると、まず第1に参加者や発表者の問題である。宇宙に関心を持つすべての人たちが参加できるオープンな会議でいいのだが、WGやプレナリーにおける発表者のレベルについてはもう少し統一されてもいいのではないかと思った。WGは4つの分野で、さらに具体的なテーマ(複数)を対象にするわけだから、それを担当する実務者がプレゼンするのが適当だと思う。ただ、プレナリーではSpace Agencyの長やそれに準ずる者、あるいは学界や宇宙企業のトップクラスに位置する者から、その年の"APRSAFのテーマ"に相応しい、自国、この地域そして世界の現在の課題やその取組、政策方針、国際協力への姿勢といった骨太の話題を話してもらい、お互いに意見交換もして、プレナリー参加者の共通認識を醸成してはどうかと思う。従って、これとも関係して第2にプログラム構成の問題になるが、各国のカントリー・レポートのようなややルーティン的なものは別にそのためのWGを設けて、実務者が報告するというやり方でもいいだろう。今回12か国がカントリー・レポートをしたが、宇宙機関の長による発表は3か国にとどまっていた。

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また、今回のプレナリーで「自然災害の緩和技術」と「イノベーションのための小型衛星」の特別セッション(パネル討論)があった。同様に、アジア太平洋地域で宇宙技術の利用ニーズをよく考慮の上、そのための具体のテーマを選定し、高いレベルあるいは高度の専門家による掘り下げた報告とパネル討論を増やすことも有意義だろう。つまり今よりインタラクティブなセッションを増やすのである。それが今後の協力に発展する可能性は大いにある。また、そのほうが聴衆にとっても聞きごたえのある魅力的なものになるのではないだろうか。更に、この地域での今の課題や将来の協力全般について、Space Agencyを含め責任政府機関(日本の場合、例えば文科省など)のしかるべき者がAPRSAFでside eventとして集まって話し合うことも考えられるだろう。

 

 

(APRSAFを多国間国際協力推進のための中核の場へ:リーダーシップの発揮を!)

当初は宇宙機関の集まりから出発したAPRSAFだが、今や参加者はSpace Agency に限らず、政府、国際機関、学界、大学、企業、NPOと広がり、さらに米、露に加えて、欧州、中東の国からも参加がある。宇宙協力の将来を考え、意見交換するための国際的にオープンなプラットホームになっている。今回の会議のまとめ(要約と勧告)においても、「APRSAFは、シナジー(相乗効果)を求め、情報交換を行うための理想的な場であり、アジア太平洋地域の共通利益のための協力プロジェクトを開始するためのプラットホームでもある」と確認された。これも過去23回の積み重ねの発展の成果であり、APRSAFに関与されてきた関係者の努力の賜だと思う。また、併せて、「APRSAFはSpace Agencyの間だけでなく、宇宙技術利用機関や開発援助機関ともネットワークを広げ、宇宙技術を使って社会的な課題を解決すべく支援を続けること」も合意された。この合意のとおり、APRSAFが参加国間において、宇宙技術や宇宙利用の分野で協力プロジェクトを開始し、協力参加関係国での宇宙システムの整備・発展、社会的な課題の解決、環境問題への取組、経済の持続的発展への寄与などに目に見える活動を展開することが期待される。これらの活動には政府とSpace Agencyがまずはしっかりと参加または支援する必要があるが、テーマによって国際機関、企業、大学、NPOなどのプレイヤーとの積極的な協力も必要とされよう。APRSAFを当初からリーダーシップをとって牽引してきた我が国、特にJAXA及び文科省は、アジア太平洋地域全体の政治的・経済的諸情勢にも鑑み、これからますますAPRSAFをこの地域での多国間宇宙国際協力推進の中核の場、いわば関係機関が協力して取り組む宇宙外交の場として活用し、その更なる発展に努力してもらいたいと思う。

 

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