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2016.04.01
お知らせ「理事長の独り言 第12号」を掲載しました

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【第12号】 これからの宇宙の新産業化推進

 

                                     平成28年3月31日

 

(スペース・ニューエコノミー創造ネットワークの発足)

去る3月22日に、これからの宇宙の産業化を推進して行くための重要なイベントが開催された。内閣府の宇宙戦略室が主催するスペース・ニューエコノミー創造ネットワーク(S-NET)のローンチ・イベント(立ち上げのための会議)である。我々JSFはこのイベント開催の支援を行った。

 

宇宙戦略室が用意したS-NETの説明ペーパーによれば、その設立目的は、「“宇宙”をキーワードに、新産業・サービス創出に関心をもつ企業・個人・団体等が参加するネット・ワーキング組織で、様々なプレーヤー(国、大手中堅宇宙企業及び関連子会社、ベンチャー・中小企業(非宇宙)、大手中堅企業(非宇宙)、ベンチャーキャピタル(VC)(非宇宙)、研究機関や大学など)が集う「場」としての役割を担う。同時に、参加企業等を積極的に支援・コーディネートする「支援機能」を有し、プロジェクト組成・事業創出などで多くの成功事例を排出することを目指す」とある。これまで非宇宙産業と位置付けられていた企業やVCなども含め、多様なプレーヤーの協力を促進するための組織だとしている。既にS-NETには個人が400名以上、企業は200社以上が登録している。

 

(JAXAによる宇宙の新産業化推進プログラム)

一方で、宇宙の産業化推進に寄与し、また影響を持つプログラムがほかにもあり、S-NETとの関係をどう建設的なものにしていくかが大事な課題になると思う。例えば、いずれもJAXAが実施しているプログラムだが、「革新的衛星技術実証プログラム」、「JAXAオープンラボ公募」、そして「宇宙探査イノベーションハブ」との関係付けである。

 

「革新的衛星技術実証プログラム」では、JAXAは平成29年度にイプシロンロケットで打ち上げを計画中の「革新的衛星技術実証1号機」に搭載する実証テーマを募集し、先月12件を選定した。選定テーマの中には、本体衛星の実証1号機に搭載し実証する部品やコンポーネント、50kg級の超小型衛星として打ち上げるもの、小さなキューブサットとして打ち上げるものが含まれている。7件が大学、4件が宇宙関係企業・団体、1件がJAXA自身の提案である。いずれの提案も、日本の衛星システムの競争力向上、国際的優位性の確保、衛星市場の成長や海外ビジネス展開のために貢献が期待されるとしている。

 

「JAXAオープンラボ公募」は、提案者が宇宙航空に関連する製品・サービスやJAXA技術を活用した製品・サービスを創出し事業活動を行うこと、あるいはJAXAの有する宇宙航空技術を進展させること等が期待できる研究提案を募集し、JAXAと共同研究を行うプログラムである。研究内容は衛星に限らず幅広い。JAXAは年間最大1000万円の共同研究費を分担する。これまでの共同研究例として、宇宙下着、宇宙での「CM撮影ビジネス」、地球観測衛星データを利用した高品質茶葉を使用した「お茶」などがあるという。しかし、これだけでは物足りない。もっと成果を出し発信することが必要ではないか。

 

「宇宙探査イノベーションハブ」は、JAXAが科学技術振興機構の支援を受けて27年度から発足したプロジェクトで、正式名は「太陽系フロンティア開拓による人類の生存圏・活動領域拡大に向けたオープンイノベーションハブ」である。29日にJSFも開催の支援をした第2回宇宙探査オープンイノベーションフォーラムで事業の主な内容が紹介された。本プロジェクトは、「月・火星のような重力天体での探査活動と地上における最先端技術を融合させ、我が国の産業界や大学とともに革新的な宇宙探査技術の開発を行う。そして得られた成果を『宇宙での産業化』のみならず『地上産業での実用化』を目的とする」という。今年度の研究提案募集の結果、65件の応募があり、昨年12月に第3者による選考により31件が採択された。採択された探査技術は、広域未踏峰(昆虫型探査機から小型軽量な探査機の開発)、自動・自律型(我が国の最先端の自動車技術や建設技術を大型化・宇宙仕様化)、地産地消型(宇宙で必要な物資を効率的かつ無人で現地で生産するシステム)の3分野に関するもの及び共通技術(電源、通信技術等)である。更にこれらの採択提案は、「課題解決型」と「アイデア型」に分かれ、JAXAから手当てされる研究費は、前者は3年程度(上限5年)で、総額1~3億円、後者は1年程度で100~500万円である。今回採択された案件に参加する企業は25社になるが、ほとんどが非宇宙企業で、宇宙企業は1社に過ぎない。この数字にはちょっと驚いた。大学は12大学が参加する。

 

(S-NETとJAXAプログラムの積極的な連携の重要性)

「革新的衛星技術実証プログラム」は、国際的な衛星市場における日本の競争力・優位性を一段と高めるためのものである。JAXAオープンラボ公募は将来性を考えた基礎的研究に相当する。また、「宇宙探査イノベーションハブ」は、日本の主として非宇宙企業が持つ有力な既存技術を宇宙探査に使えるように飛躍的に発展させ、宇宙で実用化するとともに、地上にもフィードバックし、いわばスピンオフ効果とも言える地上技術のイノベーションも起こすことも狙いにしている。即ちこれらプログラムは、S-NET創設の目的と重なる。

 

従って、S-NETとこれらプログラムはお互いの連携を図り、利用し合う関係を構築すべきだと思う。バラバラに実施されると無駄が出る。S-NETという「場」で、各プレーヤー(JAXA含む)は目的意識をもって対話をし、情報交流をすることが重要だ。それによって、関係プレーヤー(機関)が上記のプログラムへの参加を決める、プログラムの充実提案や新規提案をする、あるいは上記プログラムの成果を基に協力して事業化に取り組む、そのためにVCや企業が資金を拠出する、そのような動きが出てくると理想的だ。もちろん、必ずしもS-NETを介さなくてもよい。他方、S-NETで話し合うだけでは新規事業やベンチャーは生まれない。実践(行動)が必要である。上記のプログラムでは研究や技術開発を実践できる。その成果が革新的であれば、宇宙での新技術、新製品あるいは新サービスの提供、そしてベンチャーも含めた新ビジネスが生まれる可能性が広がる。「対話の場」のS-NETと「実践の場」のJAXAのプログラムが相互に連携、補完、啓発しながら、今後の我が国の宇宙産業の高度化と裾野の拡大に貢献してもらいたい。

 

(参考リンク)

革新的衛星技術実証プログラム

http://aerospacebiz.jaxa.jp/jp/ainori/

JAXAオープンラボ公募

http://aerospacebiz.jaxa.jp/jp/guide/guide01.html

宇宙探査イノベーションハブ

http://www.ihub-tansa.jaxa.jp/

 

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【理事長の独り言 バックナンバー】

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【第2号】夏の特別展「宇宙への挑戦」

【第3号】「こうのとり」が運ぶもの

【第4号】「宇宙の日」と有人宇宙飛行

【第5号】スペースデブリ(宇宙ごみ)をどうするか?

【第6号】衛星設計コンテスト

【第7号】国際宇宙ステーション(ISS)への参加の意義

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