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2016.02.18
お知らせ「理事長の独り言 第10号」を掲載しました

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【第10号】 祝!H-IIA30号機打ち上げ成功-H3による国際商業打ち上げ市場への進出―

 

                                                                                        平成28年2月18日

 

(祝!H-IIA30号機の打ち上げ成功)

昨17日、X線天文衛星ASTRO-H(参考:独り言第11回)を乗せたH-IIAロケット30号機の打ち上げが成功した。心からお祝いしたい。H-IIAは2003年11月の6号機の打ち上げ失敗以降、これで連続24回打ち上げ成功となる。宇宙コミュニティとして、科学技術立国日本として大変嬉しいことである。30号機という節目の成功だけでなく、2005年2月のH-IIA7号機による打ち上げ再開から、H-IIB及びイプシロンも含めれば今回で30機連続打ち上げ成功ともなる。打ち上げ成功率は全体で97.2%となり、日本のロケット技術が飛躍的に信頼性を増している証左であり、世界に誇れる成果である。

 

(H-IIA6号機の打ち上げ失敗)

昔の話で恐縮だが、H-IIA6号機の打ち上げが失敗したとき、筆者は文科省で宇宙を含む研究開発実務の責任者だった。搭載衛星が情報収集衛星という日本の安全保障に関わる重要な衛星だったにも拘らず、発射約11分後にH-IIAを指令破壊せざるを得ない事態になった。2本ある固体補助ロケットブースターのうち、1本を切り離すことができず、そのままではロケットが大きく軌道を離れるリスクが出てきたためである。破壊されたH-IIAとともに、衛星も太平洋の藻屑と消えてしまった。

乗せたものが“もの”だっただけに、官邸の要請は強く、原因究明と再発防止策の策定は苛烈を極めた。宇宙開発委員会(当時)での突き詰めた原因究明等の結果、二つの対策をとることになった。一つは、固体補助ロケットブースターの一部に構造上の欠陥、即ち設計上の不備があることが判明したため、技術的改善のための設計変更をすること、もう一つは、我が国のロケットの製造体制強化のため、直ちにプライムメーカー制を導入することであった。ロケット製造に関わるメーカーは10社以上あったが、それまで各社の責任と役割は分散されており、必ずしもいずれか一社が製造全体を実質的に統活するプライムの立場にあったわけではなかった。この機会にロケットという数十万点の部品からなる大きなシステムの信頼性を一段と高める必要があると考えて決断した。当時、既に旧体制下で3機のH-IIAが製造中であり、JAXAを含め関係メーカー間では契約の一部変更を余儀なくされたと考えられ、ご苦労をおかけしたと思う。

 

(当時講じた措置の妥当性)

6号機の失敗を契機としたH-IIAの固体補助ロケットブースターの技術的改善と製造体制強化は、その後の我が国ロケットの連続打ち上げ成功という実績をみれば、よい判断だったと言える。もちろん、設計変更をした失敗しないロケットに仕上げたJAXAやメーカーの技術者の皆さんの献身的な努力が基礎にあることは言うまでもない。これまでの関係者の方々のご尽力に改めて心から感謝と敬意を表したい。昨年12月、ある会合で当時の官房長官とご一緒し、言葉を交わす機会があった。あの打ち上げ失敗の反省と教訓、原因究明とそれに基づく再発防止措置が、「今の打ち上げ連続成功になったなぁ、良かったなぁ」ととても喜んでおられ、私も少し感激した。

 

(H3による国際商業打ち上げ市場への進出)

2014年から、国際商業打ち上げ市場への進出や信頼性の一層の高度化を目指してH3の開発が進められている。初号機の打ち上げは2020年度を目指している。H3はコンセプトをH-IIA/Bから根本的に見直したという。H3はH-IIAと比較して、打ち上げ費用は半減の約50億円、静止軌道打ち上げ能力の増強(静止移行軌道に6.5トン以上)、年間打ち上げ回数を6回に増加するなど意欲的な目標を掲げている。是非、その開発目標は実現してほしい。ただ、欧州、米国、ロシア、中国、インドなども新型ロケットの開発に取りかかり、あるいは既に初号機の打ち上げに成功し、いずれも2020年代の国際市場での商業打ち上げ参入を見据えている。競争は厳しそうだが、ここは踏ん張りどころである。我が国は昨年11月のカナダの通信衛星テルスター12VをH-IIA29号機で打ち上げたのが初めての商業打ち上げだった。まだまだ経験が足りないが、H-IIAの信頼性は今や世界最高と言ってもよい。であるからこそ、近い将来に我が国のH-IIAやH3が世界の打ち上げ商業市場で存在感を示すようになってほしいと願っている。

                                        

《ちょっと追加で言いたい附録》小型副衛星(ピギーバック衛星)

今回のH-IIA30号機の搭載衛星はASTRO-Hであるが、ロケットの打ち上げ能力の余裕(衛星搭載部のスペースやロケットエンジンのパワーなどの余裕)を活用して、3基の小型副衛星が打ち上げられた。名古屋大学のChubuSat-2(放射線観測とアマチュア無線の中継、質量約50kg)、三菱重工業(株)のChubuSat-3(温室効果ガスの影響把握とデブリ環境観測、質量約52kg)、九州工業大学の鳳龍四号(放電実験、プラズマ密度観測など、質量約10kg)である。我々JSFは、JAXAの依頼の下で、これらの小型副衛星の搭載に関する公募・選定をした。

このような小型副衛星の設計、製造、打ち上げ、運用は、大学等の衛星技術の研究や宇宙人材の育成に貢献するので、今後も継続拡大が期待される。JSFは、長年、衛星設計コンテスト(独り言第6回)や宇宙の日を記念した全国小・中学生作文絵画コンテスト(独り言第9回)も主宰し、宇宙人材の育成に関わってきた。今後も同分野の取り組みを大事にしたい。今回のような小型副衛星の打ち上げもこれらの行事と関係づけ、例えば衛星設計コンテストの優勝者が大学教官、あるいはJAXAの技術者と一緒になって、自分のアイデアを小型副衛星にできるような道が開ければ、大学生や大学院生の大きな励みになり、宇宙を志す学生もさらに増えるのではないか。それは我が国の宇宙開発利用の裾野拡大に繋がる。人材育成に関わる行事やプログラムをできる限り連携化できると良い。そのために、まずは教官、学生等大学自身の努力をお願いしたいが、JAXA、政府関係部局においても是非検討していただきたいことである。

 

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H-IIAロケット30号機©JAXA

 

【理事長の独り言 バックナンバー】

【第1号】“中年の星”油井亀美也さん宇宙へ飛び立つ!

【第2号】夏の特別展「宇宙への挑戦」

【第3号】「こうのとり」が運ぶもの

【第4号】「宇宙の日」と有人宇宙飛行

【第5号】スペースデブリ(宇宙ごみ)をどうするか?

【第6号】衛星設計コンテスト

【第7号】国際宇宙ステーション(ISS)への参加の意義

【第8号】「あかつき」とノーベル賞

【第9号】全国小・中学生作文絵画コンテスト

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