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2015.10.21
お知らせ「理事長の独り言 第5号」を掲載しました

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【第5号】 スペースデブリ(宇宙ごみ)をどうするか?

 

                            平成27年10月20日

 

 

(スペースデブリとは何か?)

旧ソ連が1957年10月に初の人工衛星スプートニクを打ち上げてから約60年、今、宇宙はスペースデブリが増えていっぱいだ。「スペースデブリ」とは、地球を周る軌道や大気圏への再突入途上にある、もはや役に立たなくなったすべての人工衛星、ロケット等の人工物体で、それらの破片や要素も含む、と定義される。要するに「宇宙ごみ」である。10cm以上のものだけでも2万個以上あり、ミリ単位のものを入れると数千万個とも言われる。これらが秒速約8kmで宇宙を飛んでいるので、運用中の人工衛星などに衝突すると破壊するなどの重大な影響を与える。実際、2009年2月に米露の衛星が衝突し、2000個以上の宇宙ごみが発生したと言われている。だから、この「宇宙ごみ」を何とかしなければいけないと、今や米、欧、露、中等を巻き込み世界で盛んに議論されている。

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◀デブリのイメージ図(地球から比較的近い位置でデブリが多く確認されている他、静止軌道と呼ばれる大きな楕円状にもデブリが確認できます)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (日本宇宙フォーラム(JSF)の役割)

この問題に取り組むにはまず、宇宙ごみがどこにどれくらいあるかを正確に把握する必要がある。これを「宇宙状況監視(SSA:Space Situational Awareness)」という。実はわがJSFは岡山県の井原市美星町に光学望遠鏡(美星スペースガードセンター)、鏡野町上斎原にレーダー(上斎原スペースガードセンター)を所有し、宇宙ごみの観測をしている日本で唯一の機関だ。観測で把握した宇宙ごみの大きさ、軌道のデータ等はJAXAに提供している。それによって、もし特定の宇宙ごみがJAXAの衛星と衝突するリスクがあると分かれば、JAXAはそれを避けるため地上からの指令で同衛星の軌道変更を行う処置をとっている。従って、JSFの役割は宇宙空間の円滑な利用を確保するうえでとても重要だ。

 

 

(日米SSA協力)

SSAについては、2013年5月にSSAに関する日米協力取り決めが締結され、JAXAと米戦略軍統合宇宙センター(JSpOC)との間で相互に情報提供が開始された。JSFはこの協力の一端も担っており、JSFの観測データが昨年5月からJAXAを通じてJSpOCに提供されている。去る9月に東京で開催された第3回日米包括宇宙対話の共同声明では、日米双方向のSSA情報の共有の進展を歓迎し、本分野でのさらなる協力を促進する旨が確認された。我が国では、2018年以降JAXAや防衛省において本格的なSSAの体制が整備される見通しだ。JSFもこれまでの経験を活かして協力できることは是非やっていきたい。

 

 

(宇宙活動に関する国際行動規範)

宇宙空間が人類社会全体のために持続的に利用できるよう、SSAの結果を活かして、国際社会は宇宙ごみ発生防止のため積極的な措置を採るようにしなければならない。このために、例えば今年の7月、国連本部にてEU主催による「宇宙活動に関する国際行動規範」に関する多国間交渉会合が開催された。日本を含む109か国、2国際機関、6NGOが参加した(外務省HP、以下同)。この会合ではEU提唱の『国際行動規範』案が議論された。その内容は、①宇宙物体同士の事故等の可能性を最小化する、②宇宙物体の破壊をやめる、③宇宙物体への危険な接近の可能性のある運用予定・軌道変更・再突入等のリスクを通報する、④他国による違反の可能性がある場合に協議を要請する、等である。この案は、多くの参加国から支持を受けたようだ。しかし、これが守られても宇宙ごみは増えることはあっても減らないだろう。なぜなら、この案は今飛行中の衛星等の衝突や破壊を防ぐことには役立つかもしれないが、今後これまでとは比較にならないほど多数の衛星が世界で打ち上げられていく中で果して十分な措置であるか疑問だからだ。近い将来の民間企業によるコンステレーションと言われる4千個単位の衛星打ち上げ計画などが実施されると、宇宙は増々混雑し衝突のリスクが増大、宇宙ごみも急激に増えるのではないかと危惧される。

 

 

(宇宙ごみを除去する方法)

寿命後の衛星は、それが高度2,000km位までだと残燃料を使って25年以内に大気圏に再突入する措置をとることが、宇宙関係者の事実上の国際合意になっている。高度36,000kmの静止衛星は、機能停止後は推進力を使って高度を更に約300km上げ、その位置がいわば静止衛星の墓場になるようだ。それによって空いた静止軌道にはまた新しい静止衛星が配置される。問題はその他の軌道上の宇宙空間で「ごみ」になった衛星や破片をどうするかである。9月20日付の朝日新聞GLOBEに、「宇宙の掃除屋」を目指してベンチャーを立ち上げた方の話が載っていた。接着剤をつけた衛星を打ち上げ、それが「ごみ」になった衛星にくっつき、一緒に数日から数年かけて大気圏に突入するのだという。また、直感的に思うのは、例えば1000m四方の投網を宇宙で展開して「ごみ」を一網打尽にして大気圏に突入して燃え尽きるような衛星は開発できないのだろうか。

 

 

(今後の宇宙ごみ対策をどうするか)

12月のパリでのCOP21では、気温上昇を抑えるために2020年以降の各国の炭酸ガス排出枠(削減量)が決められることが期待されている。合意案には19世紀末に比べて今世紀の大気温度上昇を2℃未満に抑える目標が選択肢に入っているという。これと似たような議論の構図が宇宙ごみにもあるように思える。持続的な宇宙空間の利用を確保するために、宇宙での「ごみ」の個数や密度は一体どの程度まで許容されるのだろうか。何ら制限もなく人工衛星を打ち上げ続けていけるのだろうか。我が国では山に登ると「ごみ」は持ち帰ることになっている。このルールが直ちに宇宙にも当てはまるとは思わないが、参考になる考え方ではないだろうか。各国関係者が衛星の打ち上げばかりを競争するのは望ましくない。現在、先進国は新興国と協力し、宇宙ごみの増加抑制のための話し合いを続けているが、一日も早くそのためのルールを決めるべきであり、さらにいずれは減らすための措置も検討しなければならない時期に直面するのではないだろうか。

 

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▲地球とその周辺で確認されているデブリのイメージ図

 

 

 

【理事長の独り言 バックナンバー】

【第1号】“中年の星”油井亀美也さん宇宙へ飛び立つ!

【第2号】夏の特別展「宇宙への挑戦」

【第3号】「こうのとり」が運ぶもの

【第4号】「宇宙の日」と有人宇宙飛行

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