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29年度開催結果


2017年 作文の部
グランプリ 【中学生部門】
文部科学大臣賞
メディアパートナー賞 朝日新聞デジタル賞 小学生部門

『地球の未来を守るための月のあり方』
西東京市立田無第四中学校 3年生 鞠子 けやき
 
 二〇三〇年七月某日、月面にて。僕は二十五歳になった。大学で宇宙工学を学び卒業後訓練を経て僕は月に降り立つことができた。
「月って、地球と衝突してできた地球の兄弟なんだよな。」
僕と共に月面探査をしているもう一人の宇宙飛行士は言った。
「ジャイアントインパクトによってな。」
僕は答えた。月の五分の一は地球と同じ組成であるのに全く地球の兄弟とは思えないほど殺風景な景色が広がっている。
 僕達二人は月面探査の任務を任された宇宙飛行士だ。目的は人類の月への移住のために必要な科学的データを取ることである。地球では環境破壊が進み人類の継続的な生存に、危機感を覚た多くの科学者が宇宙への逃避つまり月への移住を真剣に考え始めた。二十世紀半ばから、アポロ計画をはじめとする月探査が本格的に始動した。さらに月には氷の状態で水があることが分かると、NASAは、月にある六〇億トンの氷で四万人が百年間暮らせると発表した。それは、「♪十五夜お月様〜」と歌われていただけの月が、人類にとって、未開発の資源と変わった瞬間であった。
 月への移住に際し、克服すべき課題は山積みであった。まず地球の六分の一しかない重力やマイナス一七〇度から一二〇度という月面の温度較差をどのようにコントロールするか、食糧の調達をどうするかなど科学者達は様々な課題に取り組んだ。そしてついに、月面に豊富に堆積している3Heを核融合しエネルギー源とすることを考えついた。月に巨大施設を造りその中で生活するための生態系を造る。スモール地球建設。一九九〇年代に失敗したバイオスフィア2計画を見直して、月で実践するという目論見であった。
 そして、この計画のために僕らは月のどの場所にどれくらいの規模でスモール地球を造れるかということを試算するために月面で調査している。測量機を用意しながら僕は思った。「月の資源を使ってこの場所に巨大な施設を健て、月の資源を使って生活していくんだよな。」と。では、いつかこの月の資源が無くなったらどうなるのだろう。僕達の子孫達は新たな惑星に資源を求めて月からの脱出を計画するのだろうか。月面には廃墟となった巨大施設が残るのみ。月環境問題という言葉が将来生まれるかもしれない。我々人類は地球環境問題を解決できないままに、その問題から逃避して月を目指しているだけだ。まず地球環境問題に真摯に取り組み、解決策を見つけた上で月開発をすべきだ。
「やっぱりまず、地球を自然あふれる状態に戻すことが必要じゃないか。」
思わず声が出た。
「えっ何か言ったか。」
宇宙服越しにこもった声でもう一人の宇宙飛行士が答えた。
「いや何でもない。測量を始めよう。」
今僕が測量しているこのクレーターは餅をつくうさぎのどの部分にあたるのだろう。クレーターを埋め立てればうさぎはいなくなってしまう。僕はこの場所を資源などとは思いたくない。幼い頃、祖父母と見た十五夜の月のうさぎが妙に懐しく思い出された。
 この任務が終わったら、月の開発のために進んだ科学技術を地球環境問題解決のために使おうと発信しよう。いつまでも青い星、地球でいられるようにと。
 予定通りの日程で終わった。帰りのシャトルの窓越しに遠ざかる月を見ながら僕は、月が僕の行く道と地球の進むべき道を教えてくれたのだと思った。
 それから二十年後、地球上では科学者は緑あふれる地球に戻すために力を注いでいる。そして僕は今、旅行会社で働いている。明日の業務は月へのツアー添乗員だ。今地球ではエコムーンツーリズムが大流行である。月に旅行し、地球の美しさを知る。地球を守っていこうという啓蒙も兼ねてのツアー旅行だ。シャトルは週に一度多くの客を乗せ月へ出発する。そして月面に着くと僕は案内する。
「みなさん、このクレーターが月のうさぎの耳の部分なんです。そして今私達は月のうさぎになって、地球を眺めているんですよ。」
するとツアー客の一人がこう言った。
「月のうさぎはこんな美しい地球の姿を見ながら、餅をついていたのね。」
「ええ、月のうさぎのためにもこの美しい地球を守っていきましょう。」
僕は笑顔で答えた。

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