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29年度開催結果


2017年 作文の部
特別賞 【小学生部門】
宇宙政策担当大臣賞

『Rally on the moon』
つくば市立桜学園栄小学校 5年生 本橋 聡太
 
 今日は、第九十五回世界ラリー大会だ。でもいつものレースとはひと味違う。ここは月だ。そして、各国のトップレーサーが集まる世界ラリーだ。ぼくはその日本代表だ。
 ルールを説明しよう。月の赤道を一周し、先に一周したチームが勝ち。昼は太陽光で発電して、夜は昼にためた電気を使う。制限時間は月の一日。つまり地球上の二十七日と七時間四十三分だ。
 地球にいるチームかんとくと無線がつながった。
「本橋、システムの点検をしてくれ。」
ぼくはまた、無線をかえす。
「ネットワーク異常なし、モーター異常なし、全システム異常なし。」
 いよいよスタートだ。チームの期待をぼくがせおっている。目を閉じて、深呼吸をする。三、二、一、スタート!月から見えた太陽がまぶしすぎて、ぼくはスタートで出遅れてしまった。月には太気がないので、太陽の光がそのまま伝わるため、太陽光がとても強い。スタートから一気に二〇〇キロまで加速する。大気がない分、スピードを出せる。
 実況のえい星中継が聞こえる。
「おおっと、本橋選手が出遅れてしまいました。しかし追いついてきました!五位のマシンをパスして五位におどり出ました。」
 そして、最初のアクシデントが起きた。
「おおっと、スペイン代表がクラッシュ!クレーターにひっかかってしまったようです!」
どうやらさっきぬいたマシンがクラッシュしたようだ。月はオフロードの上クレーターがいっぱいある。そこに引っかかったようだ。
 レースは静かの海をこえ、裏側へ突入。さらにクレーターがいっぱいあるようだ。月の裏側は暗く、夜なので、さっき発電した電力を使う。他のチームも裏側特有のはげしい起伏に苦戦しているようだ。ぼくのマシンにはさっきためた電力がたっぷりあった。快調に飛ばし、他のマシンをどんどん追いぬき、一位まであがった。その時、ぼくのマシンに異変が起こった。表側を走った時のはげしい熱にやられて、モーターがこわれてしまったのだ。地球のチームから無線が飛ぶ。
「モーターが止まったのか?」
ぼくはまた、
「はい。オーバーヒートしてしまいました。」
と答えた。もうこれでリタイアかと思ったら、無線が飛んだ。
「月のうら側はマイナス一七〇度だ!これで冷やせ!」
「はいっ!」
 モーターが冷えてきたが、すでに順位は十五位まで下がっていた。また無線が飛ぶ。
「走れ!走れ!行け!」
 身体中が熱くなる。クレーターを飛びこえ、谷をこえ、気がついたら二位まで食いこんでいた。実況が聞こえる。
「さあ日本代表本橋選手、一位をもうれつに追い上げています!対するは宇宙大国アメリカ!本橋選手を押さえています!」
 ぼくのマシンのタイヤが一しゅんういた。月は地球に比べ、重力が六分の一なので、マシンがうき上がりやすい。それを上から高圧ガスを出しておさえこむ。両方とも時速七五〇キロを出してもうスピードでぬきつぬかれつの接近戦をくり広げる。二人の差は〇秒四しかない。ぼくがアメリカ代表のマシンに並んだ。むこうも負けじとふんばっている。両者アクセル全開で並び合う。速度計のパネルを見ると、時速八〇〇キロだ。大気が無く、押さえるものが全くないので、地球とは全くちがうスピード感だ。
 いよいよフィニッシュラインが見えてきた。両者アクセル全開でフィニッシュラインをこえた。同時だった。どこからどうみても、並び合ったままゴールしていた。写真判定の結果も同じだった。観客たちが宇宙服のヘッドセットを使い、ひそひその話し合っていた。
「どっちが勝ったんだ?」
「日本代表だ。」
「いや、アメリカ代表だ。」
 そして、一時間後、答えは出た。主催者がこう言った。
「日本代表とアメリカ代表のどちらにも、優勝トロフィーを授ける。」
宇宙は大気がないから、音は聞こえないが、それでもものすごい数の観客がどよめいていたのは確かだった。そして、ぼくとアメリカ代表が、だん上に上がった。優勝トロフィーが、ぼくとアメリカ代表に授けられた。大ぜいの観客が歓声をあげ、はく手をした。チームのみんなもモニターの中でだきあって喜んでいた。
 ぼくは、宇宙服の中で泣いていた。月でも、気持ちが通じるんだ。宇宙でも、気持ちがひとつになるんだ、と。

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