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27年度開催結果


2015年 作文の部
<中学生部門>入賞作品
特別賞 宇宙政策担当大臣賞

「銀世界の住人」
茨城県 茨城県立並木中等教育学校3年 佐脇 愛香
 
 民間人が地球外の惑星に派遣されるようになって早十年。歴史に名を残すべく、誰もがこぞって宇宙調査員を志願していた。しかし、一回に選ばれるのは日本中でほんの数人だけ。しかも、秘密裏に行われているテストに合格しなければならなかった。そんな中、僕は選ばれた。今回の調査は生命体の発見が目的だ。これから行く星は金属でできているらしい。もうすぐそこに着く。小型の宇宙船に人間一人とロボット数台。便利な時代だ。外を見ようとすると、ぐらり。突然機体が揺れ、動かなくなった。それが着陸だと理解するのに少し時間がかかった。ずいぶんと乱暴だ。ベルトを外し、宇宙服を着る。船外で活動できるのは十時間程度。ロボットが慌しく動き回り、外に通じる扉が開いた。恐る恐る最初の一歩を踏み出した。
 あたりは一面の銀世界。もちろん雪の例えではない。金属の銀色だ。衛星による調査では、地表が金属で、液体金属の海がある、ということしかわかっていない。すべてが似たような色のせいで、写真ではいまいち実態が摑めていなかった。こうして歩いたことで、地面が柔らかいことがわかった。重力の関係で、軽くスキップするだけで遠くまで行ける。乗ってきた宇宙船が小さく見えるほどだ。衛星写真によると、そろそろ液体金属の海があるはずだ。画像と見比べながら進んでいく。向こうに何か四角い家のような建物が見えた。周りに針金の木のようなものも生えている。まさかこんな金属ばかりの星に誰か住んでいるのか? 生命が存在するのか? 期待に胸を膨らませながら、建物に近づく。誰かいないかと、大きく手を振ってみる。背後から何かが近づいてくる気配がした。僕の考えが甘かったか。侵入者として攻撃されるのか。こわごわ振り向くと、地球から一緒に来た通訳ロボットだった。こいつが宇宙人と話せるかは怪しいが、ひとりよりは心強い。唐突に通訳ロボットが話し出した。
「我々以外の話し声を感知しました。敵意の有無は不明です。十分に注意して下さい。」
 警戒しながら通訳の示す方向を見る。何かがこちらへ歩いてくる。銀色の塊? この星に住んでいるのはロボットなのか? こちらに構わず、どんどん近づいてくる。もうお互いの顔がはっきり見える距離。相手は口を動かしている。通訳が僕に向かっていった。
「言葉が通じました。相手も地球のロボット語を話しています。地球人とぜひ話がしたい、と言っています。どうしますか。」
「僕もこの星のことが知りたい、喜んで話をしよう、と伝えてくれ。」
 僕は彼の家に招かれた。地球から持ってきた疑問を次々にぶつけても、嫌な顔一つせず答えてくれた。この星には彼と同じ種族の生命体が暮らしていること。液体の金属を摂取することで生命を維持でき、植物もそれで育っているということ。地球における水がここでは液体金属ということらしい。一通りの質問を終えたところで、ある疑問が浮かんだ。
「なぜ今までこの星は発見されなかったんだろう?」
 室内を沈黙が支配した。彼は余裕のある仕草でゆっくりと口を開いた。言っていることはわからないが、なんとなく不穏さを感じた。
「地球人によってこの星と私たちが生み出された、と言っています。」
 なんと、僕ら地球人が彼らを生み出したというのか。僕の顔を見ながら、彼はすらすらと話し始めた。はるか昔、地球からロボットがたくさんやってきて、この星を開拓した。今まで金属しかなかったところに、液体金属で動くロボットを「生命」として配置した。その時のロボットの子孫が今話している彼らの種族だという。ロボットの子孫という概念がまず理解しきれなかった。生命の誕生には水とエネルギーが必要というが、それを超えた生命体がいるということになる。水を必要としない生き物。今までの定説を大きく覆す大発見。僕が見つけたというよりは、彼に教えてもらったというべきか。この何もかも知り尽くした生き物が急に怖く思えた。
「この星はいわば大きな実験場だ。ロボットが生命として根付き、人間のようになれるかを実験している。」
 今までロボット語で話していた彼が日本語を話した。何が何だかわからない。混乱して頭が動かない。唯一の味方のはずの通訳ロボットも無言を貫いている。
「僕は世紀の大発見をしたんじゃなくて、この星を見つけるように仕向けられていた……。」
 すべては仕組まれたことだったのだ。新たな生命の概念を作るため、行なわれていたこと。彼はさらに続けた。
「もうとっくに人間は絶滅しているんだよ。」
 頭の中がショートした。本当に、回路がショートした。僕も、彼らと、同じ……。

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