「一般財団法人日本宇宙フォーラム」トップページへもどる 「宇宙の日」ホームページへ戻る
「宇宙の日」ホームページ

 

27年度開催結果


2015年 作文の部
<中学生部門>入賞作品
国立天文台長賞

「ユニからマルチへ」
岩手県 岩手県立一関第一高等学校附属中学校3年 渡邉 ありん
 
 「我々は、ユニバースがマルチバースであることを発見しました。」
 P7(プラネット・セブン)が一堂に会し、主要天体首脳会議、通称宇宙サミットがはじまった。P7は知的生命が存在し、かつ文明が発展している地球、火星、エウロパ、ガニメデ、エンケラドス、タイタン、そしてグリーゼの七つの天体で構成される。これらの他にあと三つ生命がいる天体があるが、まだ文明的ではないために参加していない。宇宙サミットは毎年開かれ、今年は地球で開催されている。
 地球の首脳が発した言葉に、円形の会議室がシンとしずまりかえった。地球が続ける。
 「宇宙がユニでなくマルチ、つまり一つでなく複数あることが分かったのです。我々がいまいる宇宙は常に膨張していますから、それ以上に加速することのできる宇宙船を開発し、つい先日、二つ目の宇宙に突入しました。では、実際に交信してみましょう。」
 スタッフがスクリーンを用意し、宇宙船の様子が映しだされた。男女二人ずつ、四人の宇宙飛行士たちは全員楽しそうに笑っている。最年長らしい、地球にしかいない黒髪の男性が説明し始めた。
 「P7のみなさん、こんにちは。コマンダーのカメヤ・ユイです。私たちが進めているミッション『タウ・ゼロ』について簡単に説明します。まずタウとは、光の速度に近づくにつれて時間の進み方が遅くなる割合のことです。宇宙船が加速するとタウの値はどんどん減少し、ゼロに近づきます。私たちがのっているウラシマ号は光より速い速度まで加速することができるので、タウの値が負になります。実際に移動している私たちの感覚では、飛行をはじめてから一か月たっていませんが、ウラシマ効果で地球では二年くらい経過していると思います。次にミッションの説明をします。」
 そこで画面が切りかわり、「いままでの宇宙」という文字が映しだされた。黒のだ円形が中心にあり、そのまわりは白い。
 「既にこの宇宙についてはだいたい解明されました。しかし、画面の白い部分には光も電波も届かず、どのようになっているのかわかりませんでした。ならば、行って見てこようというのがこのタウ・ゼロミッションの概要です。では、膜宇宙から飛び出せる宇宙船をつくるためにはどうするか、考えてみましょう。」
 ポップな字体の「ウラシマができるまで」でP7の笑いをとり、ウラシマ号の詳細がムービーで紹介された。内容は次の通りである。
 「ウラシマができるまで」
一、どこまでも飛び続けられ、かつ安全な星間ラムジェットを採用
二、水素で核融合を起こす技術を開発
三、無人で試験飛行、安全を確認
四、ウラシマ完成
 なんともアバウトなムービーだが、首脳たちは自分の星に持ち帰ろうと速記者にメモをとらせている。
 「ウラシマができたところで、私たちがいまいるカラビ・ヤオ空間をご覧ください。画面左側の光を放っているところが余剰次元です。そして右側にあるのが、今回のミッションの成果です。上から六つめのだ円形の膜が私たちの宇宙です。ああ、他の膜に突入する用意ができましたので、失礼します。次は三か月後、みなさんにとって七年半後にまた会いましょう。」
 コマンダーがいたずらっぽく笑ったところで画面ははブラックアウトした。
 今回のサミットでは、ブラックホールからの脱出に成功した、宇宙の曲率が負であることを証明したなど多くの成果が報告されたが、一番衝撃を与えたのは地球のプレゼンであった。各天体の首脳たちは、自分の星でもっと研究を進めようと我先に帰っていった。そんな中、七年半後まで首脳でありつづけるために星での政治に頭がいっぱいな者もいた。
 「みなさん、こんにちは。第二期コマンダーのツルヤ・ユイです。タウ・ゼロがはじまってから千年経過したところでしょうか。先ほど、いま我々がいるF宇宙で『E=mc³ 』が成りたつことがわかりました」

もどる