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27年度開催結果


2015年 作文の部
<中学生部門>入賞作品
文部科学大臣賞

「地球が平和であり続けるために」
北海道 札幌市立前田中学校3年 畑 翔太
 
「宇宙から見た地球の住所って何ですか?」
 無数の星をちりばめたかのように瞳を輝かせた少年の、こんな質問に僕はこう答えた。
 「『宇宙・おとめ座超銀河団・局部銀河群・天の川銀河・太陽系・地球』だよ。」
 月に一度の休日であるこの日、僕はとある科学館のホールで講演会を開いていた――。
 時は二〇八〇年。科学技術の進歩により、人類は太陽系内全ての惑星の調査を終え、小惑星帯やオールトの雲についても探査・研究を重ねた。その結果、太陽系誕生の謎や生命の起源など多くの謎が解明された。臥薪嘗胆に明け暮れた天文学者や科学者の成果である。
 しかし、数々の謎が解明されていく中で、未だ解明されていないのが宇宙誕生の謎だ。
 僕は、その宇宙誕生という壮大な謎に挑むプロジェクトチームのリーダーなのだ。
 「リーダー。先週の講演会はどうでしたか。」
 「子供の豊かな発想力を感じさせるおもしろい質問もあり、とても楽しかったですよ。」
 僕はチームの仲間に言った。管制室の3D映像の巨大なモニター画面には、一三〇億光年先を飛行中の探査機が映し出されていた。
 この探査機は宇宙誕生の謎を解明するため、すばる望遠鏡が五年前に新たに発見した最遠の銀河を目指し、深宇宙を飛行中だ。その銀河は、原始重力波という時空のさざ波が検出される可能性が極めて高い。原始重力波が検出されると、宇宙誕生直後にインフレーションと呼ばれる宇宙の膨張速度の劇的な加速が起きたことが証明される。残された大きな謎を解明するために不可欠な原始重力波の検出だが、全てはこの探査機に任されているのだ。
 「まもなく、ワープマターに突入します。」
 探査機から突如連絡が入った。チームのみんなは地球からのサポート態勢を整えた。
 ワープマターとは第二の暗黒物質とも称される物質で、宇宙空間の随所に存在が確認されている。この物質と探査機に貼られた特殊シートが触れ合うと瞬時に長距離を移動できる。世界中の国々の技術を集結させて可能にした、最先端の宇宙空間移動技術だ。
 二時間後、ワープマター突入成功の知らせが入った。探査機に異常はない。それでもチームのみんなは安心することなく、より一層気を引き締めて管制を続けた。まずは無事に探査機が銀河に到達することを願って……。
 一ヶ月後、その瞬間は何の前触れもなく、突然やってきた。銀河到達だ。それと同時に、人類は初めてその最遠の銀河の鮮明な姿も目にすることができた。白く輝く星。大きなリングを持つ星、生命を宿しているかのように青々と輝く星……。この銀河にも、様々な星があるようだ。僕はこの美しい銀河に祈る。いつかは宇宙誕生の謎が解明されて、未来の地球の、何かの役に立つことを。それが何十年先でもいい。僕は強くそう思った……。
 ――あれから三十年後、二一一〇年。僕はかつての仕事仲間と、ガリレオ・ガリレイの木星観測五〇〇年を記念して日本で開催されている天文博に来ていた。たくさんの展示物の中で一際賑わっているのが、あの最遠の銀河のコーナーだ。昨年、原始重力波の検出に成功し現在分析が進められているという。宇宙誕生の謎が明らかになるまであと一歩だ。
 そして隣では、その分析に携わる科学者が講演会を開いていた。その男性はこう話した。
 「僕は子供の頃、宇宙誕生の謎に迫る科学者の講演会に行きました。その時、『自分も将来この謎を解明する一助になりたい』と思ったことがこの仕事を始めたきっかけです。」
 僕は「もしかしたら」と思った。
 男性は次に科学技術について話していた。
 「広島と長崎に落とされた原子爆弾は、アインシュタインが発表した特殊相対性理論を応用したものです。アインシュタインは平和を愛する人でしたから、こんな兵器になるとは思ってもいなかったでしょう。また、ダイナマイトも初めは土木工事の安全性向上を目的として作られましたが、後に戦争に用いられました。このように科学技術の発展により人の命が奪われることもあったので、科学技術の発展は必要ないと思っている人も多いでしょう。しかし、そうではありません。地球温暖化が抑止されたことや災害予測が確立したことは科学技術の発展のおかげです。宇宙の謎が解明され、科学が進歩することは人々の生活の向上につながっていきます。地球が平和であり続けるために、人々の豊かな暮らしを守るために科学技術を発展させる。それが僕たち人類に与えられた使命なのです。」
 僕は目に涙を浮かべながら話を聞いていた。発展し続ける科学技術を、地球の平和のために利用していく大切さを多くの人に伝えてくれる人がいる。それが何よりも嬉しかった。
 外に出ると、満天の星空が広がっていた。
 その輝きはまるで、アインシュタインが地球の平和を願っているかのようだった――。

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