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26年度開催結果


2014年 作文の部<中学生部門>入賞作品
リモート・センシング技術センター理事長賞

「新たな未来を切り拓く宇宙探検」
北海道 札幌市立前田中学校2年  畑 翔太
 
 西暦二一〇〇年。火星に生命が発見されて、何万人かの地球人が火星移住を始めたあの日からもう四〇年近く経っていた。今、僕らは更なる生命存在惑星を発見・調査するために宇宙探検に出ている。行先はまだ誰も知らない。なぜなら宇宙空間を飛行しながら、トランジット法により生命存在惑星を発見し、その惑星を調査しに向かうからだ。トランジット法とは、系外惑星が恒星の前面を通過する際にわずかに暗くなる減光をとらえて系外惑星を発見する方法だ。僕には減光観測装置や、過去の宇宙開発で活躍した多くの機器が内蔵されている……。そう、僕は探査機なのだ。
 僕は五年前に二人の宇宙飛行士を乗せて、なんと火星から飛び立った。もう火星にはたくさんの人が住んでいるからね。火星移住はJAXAやNASAの他にも、日本に二〇一六年にできた宇宙庁が中心となって始まった。今では、火星人の技術者がたくさんいるので、僕は地球人と火星人によって共同開発された。史上初となる火星生まれの長距離有人探査機なので、ちょっぴり注目されているんだ。
 トランジット法による減光情報はまだ入ってきていない。でも今回の宇宙探検は、減光情報を待っているだけではない。実は今日、地球や火星とパブリックビューイングで交信する日なのだ。きっと地球や火星では大画面に多くの人が集まり、楽しみにしているはず。あと二〇分で始まるので、今宇宙飛行士たちがいつもより念入りに船内掃除をしている。
 「地球と火星のみなさん、こんにちは〜」
 宇宙飛行士の一人が言い、交信が始まった。隣ではもう一人の宇宙飛行士が言葉に合わせて手話をしている。これは、耳が不自由な人にも交信を楽しんでもらい、より多くの人に宇宙を身近に感じてもらおうという考えから始まったこと。とても好評だ。
 「では次に、宇宙の様子をご覧ください。」
 さぁ、僕の高性能カメラの出番だ。僕は星の数が天の川銀河の二倍もあるアンドロメダ銀河にカメラを向けた。みんな星々の美しさに驚いているに違いない。地球や火星からの歓声が探査機の僕にも聞こえた気がした……。
 交信は無事やり遂げた。久しぶりに地球人や火星人たちの姿を見て、僕も宇宙飛行士たちも元気をもらった。ほっと一息ついていると、僕は火星からの信号をキャッチした。
 「機体後方部のレーダサウンダーが一部破損しています。」
 という連絡だった。レーダサウンダーとは昔、月探査衛星「かぐや」にも搭載された電波で地質構造を調べるアンテナ状の観測機器だ。これが壊れたら惑星を詳しく調査できない。僕はロボット宇宙飛行士「そらた」に船外活動要請を出し、修理を頼んだ。そらたは超高性能ロボットだ。宇宙飛行士たちがそらたを起動し、修理に必要な工具を持たせて暗黒の宇宙へと放った。もちろん僕らから離れないようにベルトを付けて。七時間後「修理完了シマシタ。」と言ってそらたが戻ってきた。
 この破損は、地球人と火星人が昔、力を合わせて火星のオリンポス火山に設置した望遠鏡が発見してくれたそうだ。宇宙開発の積み重ねのおかげ。暗い宇宙を飛行しているけれど、僕らを後押ししてくれる何かがある。だからきっと、いや絶対に生命存在惑星は見つかるはずだ。宇宙飛行士たちもそらたもみんなそう思っているだろう。僕は最高の仲間と探検をしている。みんな気持ちは一つだ。
 それから一年後のことだった。僕はついにトランジット法による減光情報をキャッチした。すぐに観測機器を惑星に向け下調べした。
 「距離はここから一〇天文単位。いわゆる地球から土星の距離。大きさは金星ほど。ハビタブル・ゾーン内に位置し、水も存在。」
 僕はこの情報を地球に送った。すると地球からその惑星に向かうようにと指示が出た。
 ーー僕が火星を飛び立つ前日、僕の開発プロジェクトメンバーが記者会見で言っていた、忘れられない大切な言葉がある。それは、
 「努力を積み重ね、失敗を恐れずあきらめずに挑戦する。それが未来を創る道である。失敗も成功も、すべてが挑戦から始まった。」
 という言葉だ。この言葉がずっと僕の心の中にあったから、僕らはここまでこられたんだ。
 遥か昔、僕は聞いたことがある。地球が球体だと証明したマゼランたちの話を。きっと彼らは大海原を探検しながら、どんな困難にも全力で挑み、新たな未来を切り拓こうと強く思っていた。今の僕らのように……。そんな思いは、いつの時代の探検でも同じ気がする。
 先程地球から惑星着陸の指示があった。僕らはこれから新しい生命に出会うんだ。きっと教科書に載るような大発見に違いない。さすがに探査機の僕も内心ドキドキしてきた。僕らの宇宙探検はここからが本番だ。人類の挑戦にゴールという言葉はない。僕は速度をあげて、一気に惑星へと突き進んだ。

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