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26年度開催結果


2014年 作文の部<中学生部門>入賞作品
特別賞 宇宙政策担当大臣賞

「君のいる宇宙」
山梨県 山梨大学教育人間科学部付属中学校2年  小平 守莉
 
 「君は本気でそんな星があると思っているのかい?」人は私のことを馬鹿にする。「そんな夢物語にはつきあえない。」そうあきれる人もいる。でも私はついに見つけたのだ。シャーマン、君に会える方法を。「もうすぐ、会えるからね。」私はまだ見ぬ君を想った。シャーマン、君は私を覚えているだろうか?
 中学生だった頃、私は生きるのにとても無気力だった。家と学校の往復だけの毎日。夏休みに入り私の世界はよけいに狭くなった。家と塾以外はなにもない世界。そんな私の世界を唯一広げてくれるのはパソコンで見る衛星写真だけだった。ボタン一つで映しだされる世界中の写真。私の世界はパソコンの画面にしかなかった。そんなある日のこと、いつものように衛星写真で宇宙の様子を見ていると、光り輝く球体が映しだされていることに気がついた。「なんだこれ?」写真をズームしようとした時だった。私の頭に響き渡る声が聞こえた。「僕はシャーマン、MⅣ惑星に住んでいるんだ。君は?」とんでもないことがおきているのに私は不思議と冷静だった。「僕はシュウ、地球に住んでいるんだ。」頭の中で私は静かにその声に答えた。私の答えにシャーマンは嬉しそうに自分の星のこと、そして自分自身のことを話しはじめた。シャーマンは地球人でいう十五歳で今は病気療養中。だから学校にも行けないし友達には会えない。暇をもてあましていたシャーマンにお父さんが宇宙探索リモコンをくれたそうだ。科学の進んだMⅣ惑星では簡単に宇宙探索ができるラジコンみたいなものがあるそうだ。そこには通信機能がついていて離れた相手とも会話ができるそうだ。
 夏休みの間、私達はたくさんのことを話した。君と出会って私の世界は大きく広がった。あれだけ嫌だった勉強が楽しく思えた。「シュウ、自分のために勉強すると思うから辛いんだよ。未来のため、世界のため、そして宇宙のため、そう考えてごらん。シュウが学ぶことで多くのものが救われるかもしれないんだぞ。」君は私に夢と希望を教えてくれた。私は君さえ居れば何にでもなれると信じていた。でもサヨナラは突然やってきた。夏休み最後の日、「僕は今から治療のため、入院しなくてはいけないんだ。でも絶対に元気になって君に会いに行くから。」君の言葉に私はただうなずくことしかできなかった。励ましの言葉もサヨナラも言えなかった私はただ君からの連絡を待つしかなかった。でも季節が通り過ぎていっても君からの連絡はなかった。
 「自分で会いに行けばいいんだ。」そう思うようになったのは二度目の夏休みが終わる頃だった。私は君と出会った衛星写真の場所から君の住むMⅣ惑星の場所を辿ってみようと試みた。何の知識も見識もない私にとってそれは苦難と困難の日々でもあり、希望と情熱の日々でもあった。「勉強って探検と似ていると思わないか? 自分の知らない領域に足を踏み入れる。たやすく探検できる場所もあれば苦難に満ちている場所もある。いってみれば僕達は自分の脳という宇宙を旅する冒険家なんだよ。その宇宙を広げるのも狭くするのも自分自身なんだよ。」シャーマン、今なら君の言いたかったことが理解できるのに。
 「準備ができました。教授。」あれから何十年も季節が流れた。私は私の頭の中の宇宙を探検し続け、やっとこの日を迎えることができた。「じゃあ、お願いします。」私の合図と共に宇宙に浮かぶ幾つもの衛星が特殊な電波を発する。何十年もかけて調べ、研究してわかったこと。君に出会えた夏、宇宙では電波嵐が起きていたということ。君がもし今も私に会いたいと思っていてくれているならきっと君も……。
「教授見てください。違う波形の電波が!」
 計器にはあきらかに私達が発している電波とは違うものが映しだされている。私は静かに目を閉じ、頭の中の宇宙に話しかける。私の宇宙は君と繋がっているのだろうか? 君の宇宙は私に繋がっているのだろうか?
 「…………」
 宇宙はいつも側にあるのだ。そしてそれは無限に広がっている。見上げた空だけが空ではないのだ。見えなくても触れなくてもその上には無限に広がる宇宙が続く。そしてそれはシャーマン、君にも繋がっているんだ。
「教授……」助手が私にハンカチを渡すと静かに部屋を出ていく。溢れ出る温かな涙を私はぬぐうことなく私の頭の中の宇宙に語りかける。君に話したいことがたくさんあるんだ。シャーマン、君とこうして語り合うために私がしてきた探検の数々を。そしてこれから始まる探検の日々を。


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