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26年度開催結果


2014年 作文の部<中学生部門>入賞作品
日本宇宙フォーラム理事長賞

「夢実現!私の火星探検」
愛知県 大口町立大口中学校3年  水谷 萌七
 
 「はやぶさ」が打ち上げられ七四年が経った二〇七七年。現在は「はやぶさ7」の旅立ちを待つばかりとなっていた。二〇「七七」年に「7」号が打ち上げられるということで、「セブンイヤー」と言われる今年は、日本中がその話題で盛り上がっている。イトカワの岩石質微粒子を持ち帰ることに成功した「はやぶさ」も、「7」では、飛行機能も兼ね備えた「ローバー」を積み込み、新しく発見された惑星から、ボーリング調査による岩石や大気などを持ち帰る予定だ。
 時代は、月と火星まで有人飛行が可能となり、一般人も宇宙旅行を楽しめるようにまでなっていた。月と火星については、ロケットなどの発着基地周辺に限り、散策することもできるようになっている。
 幼い頃から宇宙に対して興味をもっていた私は、いつかは宇宙へ……と星空を見ながら宇宙へのあこがれを抱いていたものだ。
 しかし、私は、趣味が高じた「フリークライミング」で世界大会に出場するまでになっていた。そして幼い頃の思いは、いつしかどこかへ消えてしまっていた。
 そんなある日、文部科学省から一通のメールが届いた。「あなたのフリークライミングのお力を借りて、火星の地形について調査をお願いしたい」と。
 「はやぶさ」の数々の実績から、宇宙大国をリードするまでになっていた日本主催のプロジェクトである。
 忘れていた幼い頃の思いがよみがえってきた。ただただ、嬉しかった。宇宙に行けるなんて。しかも、私の力が役に立つのだなんて。私は、すぐに「やります。ぜひ、やらせてください。」と返信していた。
 しかし、火星の散策が可能になったと言っても、それはその星のほんの一部で、まだまだ未知のエリアは多い。特に火星は、エベレストの三倍もの高さを誇るオリンポス山や、「太陽系最大の峡谷」と言われるマリネリス峡谷、日本列島がすっぽり入るくらいの火星最大のクレーターであるヘラス平原など、地球より小さい星だが、その地形は随分とダイナミックなものだ。
 出発は半年後。早速、JAXAで研修や訓練を行った。特に、実地訓練となる、岩石と細かい塵のような砂で覆われた表面を再現した訓練場では、地球の岩山を登るものとは感覚が違い、何度命を落としそうになったか分からないほど過酷なものであった。初めの、子供が無邪気に喜ぶような「嬉しい」という感情は、やがて緊張感の方が強くなっていた。
 そんな訓練も終わり、いよいよ火星へ出発するときがきた。以前は半年かかっていた火星への移動も、一か月で移動できるようにエンジンと燃料が改良された。しかし、「一か月」も、である。移動手段である「コスモ・バス」内では、最終の確認。地形の把握と、シミュレーションに時間を費やした。
 発着基地につくと、小型飛行機「マーズ・スワロー」に乗り換え、タルシス高地へ。いくつもの火山が並ぶ絶景スポットだ。
 最新の宇宙服には、火星の大気の大部分を占める二酸化炭素から酸素を作り出すフィルターが付き、酸素ボンベを背負わなくてもいいもので、生地も薄く動きやすい新素材だ。ヘルメットは、全方向が透明になっていて、あらゆる情報が目の前に表示され、安心だ。
 いよいよ、高地の山々を登る。重力が地球の三分の一のため、比較的軽やかに移動ができる。しかし、油断は禁物だ。地球の砂漠より細かい砂は、訓練でもどれだけ足をとられたことか。そして、所々にある針のような鋭い岩が並ぶ絶壁は、クライマーの私でもかなり神経を使う。最新のGPS機能が安全な経路を選択してくれ、足跡を記録してくれることは嬉しいシステムだ。登り出して十キロ。しばらくすると、地平線が見えてきた。
「なんて美しい景色なんだ!」
 宇宙に関する情報が満載の電子雑誌「SPACE MAGAZINE」で見るよりも、実物はかなり美しく壮大だった。赤茶色の中にも、地層の何色かのグラデーションが見事に映えていて、地球にはない景色に感動した。
 見える景色はすべてメモリーに動画として記録されるため、初の発見となる火星の高地をしっかりと視界に収めた。
 マーズ・スワローに戻り、次のクレーターに移動。そして、次の峡谷へ……。
 そんなことを繰り返しながら、火星での一か月間の「探検」はあっという間に終わった。
 火星から見える地球は、多くの星の中の一つである。しかし、輝き方は随分と違う。これは青く燈んだ大気と水のおかげだろう。私の故郷、地球を思うと涙が出てきた。その涙は、とてもゆっくりと頬を伝った。
 地球に帰ると、「また頼むぞ!」と何人もの人に声をかけられた。
 これからの私の人生は、火星と地球との往復が続きそうな予感がした。

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