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26年度開催結果


2014年 作文の部<小学生部門>入賞作品
文部科学大臣賞

「宇宙色のガラス」
北海道 むかわ町立穂別小学校6年  大宮 蒼子
 
 私は今、火星探検から帰ってきたところだ。今回の探検の目的は、火星の地殻を持ち帰り、ガラスを作ることだった。ガラスの主成分はケイ酸塩と呼ばれるもので、地球の地殻やマントルにも含まれる。私は、小学校六年生の時に修学旅行でガラスの製作体験をして以来、いつか惑星のケイ酸塩を使って宇宙のガラスを作ってみたいという夢をもっていたのだ。
 調べてみると、太陽系の惑星で内部構造にケイ酸塩が含まれているのは、水星、金星、火星、地球の四つだけということがわかった。そこで、まずは地球のとなり、火星からケイ酸塩を持ち帰る探検に出ていたのだ。
 火星は赤い星として有名だが、実際探検して調べてみると、火星の砂にはさびた鉄が含まれていて、これが赤く見える原因であることがわかった。せっかくなので、この鉄も持ち帰り、ガラスに混ぜてみることにした。
 宇宙のケイ酸塩を使って作るのは、とんぼ玉というガラスの玉だ。火星のケイ酸塩でとんぼ玉を作ってみると、予想通り濃い紅色のビー玉のようになった。表面には火星のさびた鉄を溶かして、マーブル模様になるようにつけてみた。すると、とんぼ玉の表面に明るい部分と暗い部分ができ、それはまさに、私が小学生の時望遠鏡で見た火星そのもののようになった。探検した時は、ものすごく遠くに感じていた火星が、すぐそこにあるような気がして、胸がわくわくした。
 火星とんぼ玉作りに成功した私は、次に水星探検へ出かけることにした。水星は太陽に最も近い惑星で、その表面温度は平均で百七十九度とも言われる。さらに、熱極と呼ばれるカロリス盆地ではもっと高い温度になる。この高い温度を利用すれば、地球にもどらなくても、現地でとんぼ玉を製作することが可能ではないかと考えたのだ。
 水星に着いた私は、早速マントルからケイ酸塩を採取することにした。水星の表面にはたくさんのクレーターがあり、名前がついている。「ベートーベン」や「モーツアルト」といった私がピアノの発表会でひいた曲の作曲者の名前もあるから面白い。
 私は、その中でも「バショウ」と名前のついたクレーター付近からケイ酸塩を採取することにした。「バショウ」とは、江戸時代に俳句で有名になったあの松尾芭蕉のことだ。ケイ酸塩を採取しながら、せっかくなので私も一句作ってみた。
  水星の 奥の細道 ガラス道
 さあ、材料はそろった。これをカロリス盆地まで運び、ちょうど太陽が一番高くなる時刻に合わせて、とんぼ玉の形を作っていく。まず、太陽の熱でやわらかくなったガラスを、ゆっくりと棒に巻きつけ、くるくる回転させる。これをしばらく続けていると、次第にきれいな球形ができあがってくる。材料は周りにいくらでもあるから、どんどんガラスを巻き付けて、手のひらサイズまで大きくすることにした。
 しかし、このままではとんぼ玉は完成しない。少しずつ玉の温度を下げていかなくてはならないのだ。そこで私は、極の近くに移動して、太陽の光が当たらないクレーターの深くまでとんぼ玉を運ぶことにした。水星の中でも太陽の光が当たらない場所は、氷が存在するほど温度が低いのだ。徐々に冷やされて固くなったとんぼ玉は、澄んだ水色をしていて、地球を透かして見ることができた。もし、芭蕉がこのとんぼ玉を通して地球を見ることができたら、どんな俳句を作るのだろう。
  ケイ酸塩 集めてガラス 宇宙色
 こうして、無事に水星とんぼ玉も完成した。
地球に戻る帰り道、今度は能や歌舞伎の脚本家として歴史で習った「世阿弥」のクレーター付近で、能のお面や歌舞伎の顔の模様がついたとんぼ玉を作ってみようかな、などと私はのんきに考えていた。
 ところが、久しぶりに地球に帰った私に、驚くべき仕事が待っていた。なんと、七年後の冬季オリンピックの開催地に、私が住む北海道が選ばれたのだ。そして、そのオリンピックのメダルに、私が作っている宇宙のガラスを使いたいというのだ。
 世界が注目する大きな仕事を任された私は、火星と水星で作ったとんぼ玉をながめながら、早速、次の探検の計画を立てている。
 やっぱり、金メダルは金星で作ろうかな。地球のケイ酸塩と水星や金星、火星のケイ酸塩を混ぜたらどうなるだろう。
 アイデアは次々とわいてくる。もしかしたら、宇宙には、ガラスの材料になる物質が他にもあるかもしれない。私は、まだまだ宇宙の探検を続けるつもりだ。そして、オリンピックの時には、美しい自然があふれる地球と無限の可能性がかくされている宇宙を表現した、これまでだれも見たことのない宇宙色のメダルを選手の首にかけるのだ。

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