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25年度開催結果


2013年 作文の部<中学生部門>入賞作品
国立天文台長賞

「宇宙で広がる可能性」
愛知県 大口町立大口中学3年  水谷 玲那
 
 二一〇〇年、いつも通り黙々と仕事をこなしていると、
「宇宙コロニー・キズナに行かないか」
と局長から言われた。突然の指令だった。大学の薬学部に入り、薬剤師になるためにいろいろな講義を受け、就職して今に至る。この時代、いくら簡単に宇宙に行けるようになったとは言え、まさか自分がそうなるとは思わなかった。
 幼い頃、宇宙飛行士が著した本を読んでから、宇宙に興味はもっていた。家族でJAXAに出かけて最新の飛行機を見たり、夜になるとベランダからISSを眺めたりもしていた。宇宙が私たちにとって身近なものになる時代が来ることは薄々感じていたし、宇宙を舞台に新しい可能性が次々と発見されていることも知っていた。「もし宇宙に行けたら……」と淡い期待を抱いていたのも事実だ。
「ついに私にそんな機会が訪れたんだ!」
 冷静に考えると逆に興奮してきた。
 荷物をまとめると、種子島宇宙センターから発着する、宇宙へと続く、「スペーストレイン」に乗り込んだ。窓を見ていると、地球がどんどん小さくなっていく。それは、教科書に載っていたような綺麗な青と緑の球体だった。改めて地球の美しさに気づく瞬間だった。
 車内を見回すと、どうやら同じように指令を受けた人は私だけではないことに気づく。黒縁の眼鏡を掛け、白衣を着て、一言もしゃべらない研究者、常に鏡を見て身だしなみをチェックしている美容師、体つきがしっかりしているトレーナー、数々の有名建造物を手がけている建築家も乗っていた。どんなことが待っているのかと考えているうち、
「まもなく、キズナです。」
というアナウンスが入り、コロニーに着いた。
 さすが宇宙。地球のような重力を全く感じない。荷物も重さを感じさせない。行き交う人々の足取りも軽く見える。
 同じトレインの人々とひと通りコロニー内を回った。体の筋肉が衰えすぎないように、スポーツジムが設けてあったり、ショッピングセンターには、体の成長を促進する宇宙専用の栄養ドリンクが並んでいたりし、新しい発見があった。
 その後、派遣先である、「コスモ薬局」に着いた。多くの星から集められた、見慣れない言語で表記されている箱や瓶がいくつも並んでいた。地球では漢方などの天然物質や化学的に合成した物質で作られ、様々な処方の仕方があるが、宇宙ではそれぞれの星でその方法に独自性を持っているのを知っていた。月の場合、粒の細かい月の砂を使って作る。成分の四十パーセント以上が酸素であるから、水素と反応させて水を作り、その他液体と調合するシロップ剤が主流になっているのだ。水星では昼と夜の温度差が大きいことから、体温の調節を的確にできる塗り薬が多い。風邪などの体調を崩したときも皮膚から処方する。宇宙一大きな総合薬局で、珍しい薬も手に入る「コスモ薬局」には、多くの星のバイヤーでいっぱいだった。
 私は小・中学生の頃、身近に困っていることがあれば、それを解決するためにどうしたら良いか、いつも考える習慣があった。当時の私のように、私はこの広い宇宙でできるだけ少ない処方箋で周りを笑顔にすることはできないかと考えていた。そして、いくつもの研究と実験を繰り返し、新しい薬をいくつか作り出した。それぞれの星の特徴を理解し、飲み薬・塗り薬など、今まで使っていたものより使ってもらいやすいように工夫をした。
 お客さんが来た。体全身を外熱ガード服で覆っている水星人だ。私は、自信を持って自分が開発した薬を勧めた。
「こんな薬が欲しかった。これはいい!」
 バイヤーは、私が開発した薬をたくさん買っていってくれた。その後も、たくさんの人が興味津々に手にとって見てくれていた。
 地球から派遣された私が広い宇宙の中で認められ、とても嬉しかった。地球とは異なる環境で過ごすことができたから、今までとは違う研究ができ、新しい発見ができた。そんな時、よく家で唱えていた言葉を思い出した。
「百聞は一“験”にしかず。」
 百回聞くよりも実際に体験するほうがよく分かる、という意味だ。私が宇宙に一歩出たことで可能性をまた一つ増やすことができた。これからも宇宙規模でたくさんの人を笑顔にさせ、助けるためにコスモ薬局での仕事を全うしたいと夢は広がっていった。
 あっ、今日もお客さんがやってきた。
「宇宙線でのどを痛める人が多くて……。」
「この薬、どんな症状でも効きますよ。」
 頭のどこかでつも考えていた「自分の特技で人を助ける」という夢が、ついに実現できた気がした。
 気づくと、いつも応援してくれている遠い地球に住んでいる家族に、夢が叶った喜びを伝えようと、いつまでも手を振っていた。

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