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25年度開催結果


2013年 作文の部<中学生部門>入賞作品
特別賞 宇宙政策担当大臣賞

「地球からのメッセージを届けたい-私は宇宙キャスター-」
宮城県 仙台二華中学校3年  鈴木 美紀
 
「うわぁ、ISSの前はすごい行列よ! 開場まで一時間以上あるというのに……」
 ここは、宇宙空間に作られた「宇宙博覧会」会場。地球から気軽に宇宙に行けるようになった今、「身近に宇宙を」ということで開催されるイベントだ。パビリオンは、「宇宙飛行士の館」「宇宙食レストラン」「宇宙植物園」など万人受けするものから、「宇宙環境とスペースデブリ(宇宙ゴミ)」「宇宙の謎・ダークマター(暗黒物質)」などという、宇宙オタクが好きそうなものまである。
 私は、「瑠璃色の地球館」というパビリオンを担当する。地球から派遣され、宇宙に来て三年。主に宇宙から見た景色を取材し、その情報を国際宇宙ステーション(ISS)内のスタジオから地球に発信。巷でちょっと人気の宇宙キャスターである。
「みなさん、こんばんは! ニュース・コスモの時間です――台風が進路を日本寄りに変えました――それでは、今日一日の地球の動きをお伝えします」
 その実績が買われての、今回の抜擢だった。
 さあ、いよいよ会場だ。色とりどりの宇宙服を着た人が、蜘蛛の子を散らしたように思い思いに流れていく。軽い足取りは宇宙服のおかげだろう。重力や体温が調整できる上、軽量でコンパクト。空気だって自在に作れるという。こんな夢のようなオシャレな宇宙服が、お手ごろ価格で手に入るとは!
 地球で宇宙服制作に加わった私の仲間たちは、とことんユニバーサルデザインにこだわった、という。国籍や老若男女問わず、誰でも使える優しい宇宙服を作りたい、と。
 いつだったか、私が
「障害を持つ妹をいつか宇宙に連れていきたい。星が好きな妹でね……」
なんて、口にしたことがきっかけだったらしい。宇宙へのバリアフリーは宇宙服から、との思いで取り入れたと後から聞いた。
 そのような仲間の心遣いを思い、感慨深く人々を見ていると、あっという間に「瑠璃色の地球館」には、たくさんの人が押し寄せた。
「あらっ、お姉さん『ニュース・コスモ』の人でしょっ! その宇宙服、ステキだわぁ」
 おばちゃんたちに捕まり、質問攻めにあった私は、満席との知らせを受けてこの回の入場を締め切った。
「本日は『宇宙博覧会・瑠璃色の地球館』へようこそ! ここでは、近年地球が歩んできた歴史を三部構成の映像で振り返ります」
 第一部「地球の悲鳴」。人々は今まで知らされていなかった真実をも突き付けられ、時折ざわついた。今でこそ美しい地球だが、百年前は破滅寸前の状態だったからだ。
 森林伐採で緑がなくなる平原。温室効果ガスによる気温の上昇、地球温暖化。工場からの大気汚染。生活排水による海への汚染。行き場をなくした生き物たち。絶滅する動植物。
 加えて、人が人を傷つける醜い過去。戦争、テロ、ミサイル、核。爆弾、地雷、化学兵器、放射能兵器、生物毒素兵器。
 続く第二部は、「宇宙からの警告」。隕石やスペースデブリの衝突・落下が、至る所で立て続けに起こった衝撃的映像だ。宇宙では、ISSから二百メートルまでスペースデブリが接近し、宇宙船へ避難。予測が追いつかない隕石の落下は、建物や人体への被害を大きくした。高速で移動するスペースデブリにあっては、衛星を台無しにしていった。
 締めの第三部は、「再生(彩生)への道」。地球の滅亡を示唆する危機的状況が、地球人の意識を変えた映像だ。
「さすがにここまではヤバい……」
 破壊を食い止めるのは、国際協力の下、宇宙を監視するのが必要不可欠。そこで各国は、隕石の被害を最少に食い止めるべく、観測と予測の精度をあげることに一丸となった。スペースデブリについては、除去衛星の打ち上げ、拾ったスペースデブリの再利用。これ以上スペースデブリを増やさないよう、溶けたり消えたりする資材の開発。
 こうした動きは各国の宇宙科学を発展させただけではなく、人々の心を変えていった。
「地球は、思いやりの心が集結して生まれ変わったのです。キレイな地球には、憎しみ合う心は存在しません。誰もが温かい心を通わせ、生きているのです」
 キャスターらしく、最後は決めた。
 そう、私の役目は「かけがえのない私たちの星『地球』を守っていく」という強い信念を、人々の心に植え込んでいくこと。そのためには、こうした本業以外の広報活動も喜んで引き受けていく。丸くて青いビー玉のような地球を未来に残したい、この思いは切実だからだ。広い広い宇宙のほんの小さな私だが、地球を愛する気持ちは果てしなく大きい。だから、地球全体を見渡せるこの仕事に就いて地球からのメッセージを届けているのだ。

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