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24年度開催結果


2012年 作文の部<中学生部門>入賞作品
国立天文台長賞

ありがとう!感動の実況中継
鹿児島県 鹿児島修学館中学校1年  野中 光泰
 
 宇宙には、障がい者がいない。なぜならば、星ごとに体格や特性がものすごく違っていて、健常者と障がい者の区別がないからだ。
 重い星には手なが人(じん)が住んでいる。身長が伸びないぶん、手が左右に長く発達した。一方、軽い星には足なが人(じん)が住んでいる。背は伸びたが、バランスを取るために手は短い。また、明るい星には視覚の発達した目よし人(じん)が住んでいるが、聴覚は発達していない。一方、暗い星には聴覚の発達した耳よし人(じん)が住んでいるが、目はあまり見えない。
 「こんなに体格や特性が違いすぎるみんなを集めて、どうやって宇宙オリンピックが開催できるのですか?」
 ぼくは、インタビューした。第一回宇宙オリンピックの実況中継のアナウンサーに選ばれたのだ。すると、実行委員長が答えた。
 「たとえば夏の大三角形地区にある三八〇〇個の惑星の中から手なが人(じん)を三人、足なが人(じん)を三人それぞれ選びます。同じように冬の大三角形地区にある二九〇〇個の惑星からも手なが人(じん)三人、足なが人(じん)三人をそれぞれ選びます。そして、夏チームと冬チームが対戦するのです。」
 まずは、バスケットボールだ。夏の大三角形チームは、長身の足なが人(じん)を攻撃で活かし、動きの速い手なが人(じん)を守備で活かす作戦。一方の冬の大三角形チームは、足なが人(じん)と手なが人(じん)の役割を分けずに、攻撃も守備も一緒にし六人が一つになって連係プレーする作戦。
 最初、夏チームが、足ながの三人でパスを回して、どんどん得点を重ねていった。
 「おっと、なにか、仲間同士で言い争いをしています!」
 味方の手なががボールを持つと、足ながが、
 「早く寄こせ。チビ!」
と怒鳴ったのだ。そして、足ながが守備で相手に抜かれた時、味方の手ながが、
 「のろま!」
とさけんでいる。これが、夏チームの様子だ。
 「これで、持ち味を活かした試合といえるのでしょうか!」
 思わずぼくは、そう言ってしまった。
 一方の冬チームは、最初のうちはなかなかボールが取れなかった。こぼれ球を冬チームの手なが太郎が拾った。手ながは動きが速い。
 「冬の手なが、すさまじい勢いのドリブルです。夏の足ながの股をすりぬけて、味方の足なが次郎にパスしました!」
 「冬の手なが次郎がスクリーンに入りました!おっ、ゴール下にいた味方の足なが三郎にボールが渡って、そのままシュートを決めました。」
 それがきっかけだった。冬チームは、手なが三人と足なが三人がよくかみあって、ついに勝利した。足ながが手ながを肩車した。
 「これが、本当のチームワークです!」
 次は、ペア・マラソンだ。目よし人(じん)一人、耳よし人(じん)一人の二人一組でペアを作って出場する。シリウス第五惑星を出発し、いくつもの星の間をすりぬけて、第二十三惑星までの速さを競う。こと座ペアは、交替でおんぶして、疲れたら休むのを繰り返す作戦。一方、銀河ペアは、おんぶをしないで手をつないで走る作戦。
 「おっと、トップのこと座ペアが立ち止まっています!星の影にさしかかったところで、運悪く目よしが耳よしをおんぶしています。さすがの目よしでも真っ暗闇では何も見えないようです。」
 「あ、銀河ペアの追い上げです。耳よしが星との距離を音波で感じ取って目よしの手を引きながら無事に通過しました!」
 次の関門は、ごうごうと燃えたぎっている熱い星の通過点だ。こと座ペアは耳よしが目よしをおんぶして通過しようとしていた。
 「ごうごうとした騒音のせいで、こと座ペアの耳よしの聴覚は役にたたなくなって立ち止まってしまいました!」
 一方、手をつないでいる銀河ペアは、ここでは耳よしの耳が使えなくなったので、目よしが手を引いた。心が寄り添っている。
 「目よしが、その目をさらに丸々と見開き、にこにこしながら余裕でごうごう星のそばを無事に通過しました!」
 こうして、おんぶ型のこと座ペアを逆転して、手をつないでそれぞれの良さを活かした銀河ペアが優勝した。二人は、つないだままの手を高々と差し上げた。
 みんな違ってみんないい、というよりも、宇宙では、みんな違わないと困るのだ。
 「全宇宙の皆様!宇宙環境は多様です!これに対応して生き抜いていくためには、みんなの違いを活かすしかありません!宇宙オリンピックは、私たちにそのことを教えてくれました!ありがとう!」
 マイクを持つぼくの手が、いつまでもいつまでも、ふるえ続けていた。


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