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24年度開催結果


2012年 作文の部<中学生部門>入賞作品
日本科学未来館館長賞

美しい心の宇宙
東京都 東大和市立第一中学校3年  瀬野 実土莉
 
 その時、私はドキドキしながらスタートラインに立っていた。今から宇宙オリンピックの千メートル走の競技が始まるのだ。とてつもなく大きな競技場は満席で、各星のテレビカメラが、私たち選手を撮っている。全宇宙の注目を浴び、緊張感が増す。
 この名誉ある宇宙オリンピックに出場するために、私は日々の厳しい練習に耐えてきた。そして地球オリンピックと太陽系オリンピックを勝ち抜き、宇宙オリンピックの金メダル候補となったのだ。何としても負けられない。
 私の右側にスタンバイしているジュバの惑星から来たペジャ選手は、まるで怪獣のように大きい。時折体をブルルと奮わせては、意識を集中させている。もし競技中にペジャ選手の体に当たったら、バウンドしてはね飛ばされそうだ。気をつけなければいけない。
 私の左側にスタンバイしているラーヌ選手は、スピカの惑星の代表だが、地球のネズミくらいの体だ。他の選手たちも地球の馬サイズの者、猫サイズの者など、体格は様々である。
 ヨウイの合図が鳴った。私は最初からトップで走り、そのままゴールする予定だ。私が全意識を集中させた時、ドンの合図が鳴った。予定どおりにトップを走っている。と思ったら、違った。なんとトップは、ラーヌ選手だ。小さな足を、すごい速さで動かしている。私は焦りながら、一生懸命に彼を追う。
 だが、それどころではない事態となった。右後ろより定期的に熱気を発する息遣いが聞こえてくる。ペジャ選手が、私を抜こうとしているのだ。私は、彼に抜かれないよう必死で走る。しかし彼も必死だ。
「あっ!」
と、私が叫び声をあげたと同時に、私の体は宙に舞い上がった。ペジャ選手の体が私に当たり、バウンドしてしまったのだ。注意しなければと思っていたことが、現実に起きている。しかもそれは想像を超えた。私は急激な風に吸い込まれ、真っ暗闇の中へ入っていく。
「ここは、どこ? だれか助けて!」
 しばらくして、淡い光と共に女の人が現れた。
「ここは、ブラックホールよ。宇宙オリンピックでは、たくさんのゴミが出るから、掃除機の役をしているの。でも変ね。人を吸う設定にしてないけど……。あら、あなたは太陽系の地球から来た選手ね。地球は環境汚染が酷いから、そこで育つ地球人の体は、その汚染で構成されているの。だからこのブラックホールは、あなたをゴミと判断して吸ったのよ。」
 競技中にペジャ選手に当たっても、バウンドして少し飛ぶだけだが、私の体は環境汚染物質で出来ているので、ブラックホールにゴミと思われ、吸われたのだった。
「今のままでは、地球の環境汚染はもっと酷くなっていくわ。地球という星が危うくなり、地球人の体はもっと汚染にまみれ、生きていけなくなって絶滅するわ。そればかりでなく、全宇宙に影響を及ぼし、軌道が狂ったり、存続の危機に見舞われたりする星も出てくるわ。」
 なんということだろうか。もしかしたら、地球人たちをゴミ用のブラックホールで吸ってしまえば、全宇宙の平穏は保たれるのか。そんなことはしないだろうし、させてはならない。
「やったー!太陽系代表のアオバ選手が帰ってきたー!」
というペジャ選手やラーヌ選手や他の選手たちの歓声で、私は我に返った。いつの間にか、私は競技場に戻っていたのだ。
 みんなとっくにゴールしたと思っていたが、彼らは私を待っていた。私を放ってゴールまで走ったら、その選手が金メダルだったのに、誰もそうしていない。もし私が逆の立場だったら、どうしたであろうか。彼らの行動は、地球では考えられないことだ。
 それからみんなで千メートルの途中のところから、また走り出した。やはりラーヌ選手は速い。私は二位だった。だが全選手のタイムが二十分を超えている。普通の人が走るより遥かに遅いタイムが、宇宙オリンピックの千メートル走のタイムとして記録された。
 自分の利得と競争を優先するのではなく、他の者を思いやることを最優先に考えるから、他の星々は地球のような環境汚染を出さないのではないかと思った。それに優しく美しい心をもったなら、環境汚染がすすむことなど有り得ないだろう。
 宇宙オリンピックの閉会式で、私は選手たちとスクラムを組んでいた。金メダルよりも大事な友情がそこにあった。彼らのような美しい心をもって、環境汚染に立ち向かう運動をしていこうと、私は決意していた。宇宙の星々も、互いの友情によって輝き合い、恒久の平和を望んでいるのだから。


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