「一般財団法人日本宇宙フォーラム」トップページへもどる 「宇宙の日」ホームページへ戻る
「宇宙の日」ホームページ

 

24年度開催結果


2012年 作文の部<小学生部門>入賞作品
日本宇宙フォーラム理事長賞

みんな私達の友達
千葉県 千葉市立打瀬小学校5年  向井田 智萌
 
 私は陸上競技選手、15才。地球代表として月にある開会式会場でパレードの出番を待っているところだ。地球選手用のアリーナ天井にあるモニターではアトラクションが放送中だ。オープニングは宇宙五輪(オリンピック)発しょうの地となった地球の歴史紹介で、今は、進化した人類が様々な文明を発展させていったあたりをやっている。左手首のケータイが小さく鳴り、着信を押すと目の前に浮かんだ小さな画面におばあちゃんの笑顔が映し出された。
「そろそろ出番だろう? どんな気持ちかなと思ってね。」おばあちゃんがウインクした。
「うーん、ちょっと待ちくたびれたかな。アトラクションも地球人にとっては……。」
「おやおや、ここまでは遠くの星から来てくださったお客様に対する自己紹介だろう。大切なのはこの後じゃないか。」
 突然、モニター画面の映像と音の雰囲気がガラッと変わった。恐ろしい音楽と一緒に流れる地球の悲しい歴史。二度の世界大戦、その後も次々と起こる戦争や内戦。たくさんのとうとい命が消え、たくさんの心も地球までも深くきずつけてしまった。
「えーっ、こんなの見せたら地球人は戦争好きな危険な生物だと思われちゃうじゃん!」
 と、その時再び音楽が変わり、男性の写真が映し出された。近代五輪(オリンピック)の父・クーベルタン。「スポーツを通して心身を向上させ、さらには文化・国せきなど様々な差異をこえ、友情、連帯感、フェアプレーの精神をもって理解し合うことで、平和でよりよい世界の実現にこうけんする」というオリンピズムを提唱し、五輪(オリンピック)を実現した人だ。
「彼のおかげで人類は正しい道へ再び出発できたんだよ。参加国がどんどん増えてもすぐには戦争や内戦は無くならなかった。お互いに主張ばかりして、欲張って、なかなか理解し合えなかったんだね。それでも私達は決してあきらめなかった。ほら、あの時も……。」
「あ、第三次世界大戦危機……。」
「そう、あの時は本当に危なかった。地球を何度もはかいさせるだけの兵器が世界中にあったんだから。もし誰かが怒りにまかせてボタンを押していたら……。いつそうなってもおかしくないほど世界中がピリピリしていたんだよ。でも人類はそれを乗りこえたんだ。」
 おばあちゃんがほこらしげにほほえんだ。私も大きくうなずいた。
「じゃあ、そろそろ。がんばるからね。」
 ケータイを切りモニターに目をやると暗やみの中に花が一輪また一輪と咲き、やがて地球が光り輝く花でおおわれていく場面だった。一人一人のオリンピズムによってもたらされた本当の平和だ。今までに五輪(オリンピック)出場したアスリートだけでなく、観戦して様々な人種・国や文化にふれた普通の人々も「私達は皆友達だ。友達を苦しめることなんかできない、戦争はいやだ!」 と声をあげたのだ。そして何度も交渉を重ねてつらい記憶と心のかべを乗りこえ、ついに人類は「地球人」として心一つにすることができた。それは未知の太陽系外へ挑戦するのにふさわしい資格でもあった。
 しばらくすると、となりの銀河系にある地球型惑星からメッセージが届いた。環境や体の作りなど似ている部分も多く対話はそう難しくなかった。そして複数の惑星と友好的な交流が始まり、宇宙航行技術が急激に進歩すると人や物の行き来がたくさん行われるようになった。しかし文化や習かんの違いから問題も起こるようになってしまった。地球以外の惑星間も同じだった。今後も友好関係を続けるための会議の時、地球代表が自信をもって五輪(オリンピック)を紹介した。そして準備期間を経てついに今年、太陽系で宇宙五輪(オリンピック)開催となったのだ。
 選手パレードが始まった。四つの惑星の選手団が大きな拍手と歓声に迎えられた後、地球選手団も光あふれるフィールドへ出た。満員のスタンドは半分以上地球人だが、宇宙中継され想像もつかない数の宇宙の仲間が五輪(オリンピック)を見守っている。巨大なモニターには何種類もの初めて見る文字が流れ、会場の興ふんと感動とたくさんの笑顔を全宇宙に伝えていた。
 フィールド中央に集まった選手達は星ごとに固まることなく、程よくまぜこぜになっていた。隣にはα星の女子選手。目が合ったほんの一瞬戸惑いが見えたけど、次の瞬間お互いににっこり笑ってがっちり握手した。ぎゅっと握った手はとても温かかった。私はこの温かさを一生忘れないだろう。地球の皆さん見てますか? 生まれた星は違うけど、手をつないでいるこの子もあの子もみんな私の、そしてあなた達の友達です。もう遠い星の誰かではありません。同じ宇宙で同じ時間を生きている大切な大切な友達です。
 きっとこの先もいろいろな場所で問題が起きるだろう。でもお互いを思いやる気持ちを忘れなければ必ず解決できるのだ。五輪(オリンピック)の歴史がそれを証明しているのだから。


もどる