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23年度開催結果


2011年 作文の部<中学生部門>入賞作品
(財)リモート・センシング技術センター理事長賞

青い地球
東京都 東京都立小石川中等教育学校3年  鈴木 梨紗
 
「おじいちゃん、地球は本当に青いわけ?」
「えっ……。」

 衝撃的な台詞だった。六五年間生きてきて、そんなことを聞かれたのは初めてだった。
「で、でも、そんなこと、常識の範囲じゃないのか?」
「おじいちゃんは実際に見たの?」
 孫の中学では、宇宙環境科学の授業があるのだが、どうやら今日は地球の話だったらしい。どきっとした。確かに実際に見たことは無い。

 なんだ、おじいちゃんは見ていないんだ。いつもいつも聞いたことをそのまま信じないで確かめなさい、と言っているのに。
「見てもいないのに青いと言い切れるの?」
「そうだと思うけど……。」
「じゃあ本当にそうなのか見に行こうよ。」

確かにそれもそうだ。私が子供だったときは宇宙に行くのは特別な人だけだったが、今は誰でも宇宙旅行ができる。地球は本当に青いのだ。それを孫と確かめに行こう。
「さあ、冒険の始まりだ。早速でかけるぞ!」

 九時間後、私は宇宙空間にいた。前から行きたかったし、クラスにも行った子がいたから、楽しみだったんだ。最初は、実はちょっと不安だったけれど、それよりも、まだ知らない世界を知ることが出来るこの冒険にワクワクもしていた。見たことのない景色が窓の外に流れる中、アナウンスが聞こえる。
「さあ、まもなく地球が見えますよ。」

 私たちの地球はやっぱり青かった。本当に青かった。真っ青な海に白い雲と緑色の島が浮かんでいる。写真で見た通りの地球だった。少しほっとしていた時、孫が言った。
「写真と同じだけど、でも写真と違うよ!」

 本当に地球は青いんだな,と私は感動していた。十五歳になるまで見たことない。思っていたのとは全く違い、目の前で見る地球はこんなにも大きく美しかった。地球を出てから結構経つのに私は全く飽きなかった。全てが新しいことばかりで楽しくて仕方が無い。
「やっぱり宇宙は行ってみなくちゃだね、おじいちゃん!」

 孫と同じ気持ちだった。地球は写真よりはるかに青く、何よりも荘厳でそこにあった。言葉も出ないほど圧倒されると同時に、今まで見なかったことを後悔していた。それに何か大事なことを忘れていたように感じた。まだわからないことがたくさんある。それを知ろうとする気持ちを無くしていたのではないか。
 おじいちゃんはさっきから何か考え事をしているようだ。ちょっと疲れたのかな。ツアーはこのあと月に向かい、『地球の入り』と『地球の出』を見てから戻る予定になっている。青い地球が段々小さくなり、逆に月がだんだん大きくなっていく。日の出だって見たことがないのに、地球の出が見られるなんて。
「宇宙ってこんなにも楽しい所なんだね!」

 孫はさっきからしゃべりっぱなしだ。楽しんでいるのなら来たかいもある。そのうち太陽の影に入り急にあたりが暗くなった。青い地球は想像していたが、黒い地球はこれまであまり考えなかった。表があれば裏がある。そんなことは考えてみれば当たり前なんだな。
「おじいちゃん見て。街が光って見えるよ!」

 あちこちが明るく光っている。夜の地球は青い地球と違ってまた別の綺麗さだ。街の明かりが宇宙からも見えるなんて。私は感動していた。あの光は人が生活をしている証なんだなあ。それに改めて気がついた。やっぱり自分で確かめることは大切なんだ。世界や宇宙はとてつもなく大きく、私が知っていることはとても小さいことだと感じた。
「もっともっとたくさんのことを知りたいよ。」

 地球に戻る時間になり孫は残念がっている。私も同じだった。もっと長くこの時間を楽しみたかった。ずっとこの星を眺めていたい。けれども違う気持ちも湧いて来た。まだ知らないこともたくさんある。いくつになっても今回のように、もっともっと自分の体でいろんなことを知りたい。もちろん孫とともに。

 「また一緒に宇宙旅行をしようね。」
 「また一緒に宇宙旅行をしような。」
 二人は同時にそう言って笑いながら、近づいて来る地球をみつめていた。
 心の中に、新たに始まった冒険への期待を抱いて。


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