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23年度開催結果


2011年 作文の部<中学生部門>入賞作品
特別賞 宇宙開発担当大臣賞

世界を救え、宇宙探査の大冒険
鹿児島県 鹿児島市立鹿児島玉龍中学校3年  木田 夕菜
 
 今にも手が届きそうな3D映像の巨大なモニターの向こう側では、大きな宇宙探査用貨物船が映し出されていた。
「頼みましたよ。あなた方の手に地球の未来はかかっているんです。」
 そう言って、探査船の前に立ったその人は船長の手をぎゅっと握った。この人は、二百の国々の代表として選ばれた地球大統領。世界の人々の念願であったこの大統領の誕生で、これまで絶え間なく起きてきた世界のあらゆる紛争は、終息に向かいつつあるのだ。
「地球のことは、私に任せてください。残された大きな課題解決のためには、どうしてもあの鉱石が必要なのです。」
 そう言って、大統領は、また、船長の手を強く握った。
 二〇六一年、地球は危機に瀕していた。今から約三十年前、世界は、低炭素社会を目指して、化石燃料の使用をやめた。しかしそのために世界的な電力不足に陥ったのだ。
 ちょうどその頃、火星探索の旅から戻った宇宙開拓船が火星の衛生ダイモスに豊富に存在する鉱物を持ち帰った。それは、わずかな量でも大変なエネルギーを放出する画期的なものだった。世界中の国々は、こぞって宇宙工作船をダイモスに送り、この鉱物を地球に持ち帰った。
 しかし、大変なことが起きた。この鉱物のあまりにも大きなエネルギーは、コントロールするのがたいへん難しいのだ。そのため、世界各地で様々な事故が続けて起き、その度にその国の環境は著しく汚染され続けたのだ。最早、世界の国々は自国の利益だけを考えている場合ではなくなった。この鉱物を安全に処分し、危機的状況にある電力不足を解決するために、民族、宗教、過去の歴史の壁を取り払い、世界の国々が手を結び合うこととなったのだ。
 こうして誕生した地球大統領は、ある一つの提案をした。それは再生可能な自然エネルギー、太陽光の利用だった。しかし、それを聞いた世界の人々は、そのことにはあまり期待しなかった。それは、技術が飛躍的に進歩したこの時代においても、太陽光発電は、世界の電力をまかなえるものではなかったのだ。
 大統領の提案はついえたかに見えた。しかし、ある宇宙工学の科学者が大統領にこう提案したのだ。
「宇宙空間に巨大な太陽光発電所を作りましょう。」
 太陽光は、地球に届くまでに大気中の散乱や吸収のために随分と減衰されてしまっている。だから、ほとんど減衰されない宇宙空間に巨大な発電プラネットを建築し、地球に送電しようという計画だ。しかし、その科学者は、少し顔を曇らせながらこうつぶやいた。
「ただ一つだけ、宇宙の発電所から地球に電力を運ぶためには、どうしてもはるか四百五十年前にあのガリレオ・ガリレイが発見した木星の四つの衛星にしか存在しない鉱石が必要なのです。」
 この時代になっても、木星の衛星に鉱石を採取に行くというのは、命の危険を伴う、正に冒険とも言うべき行動であった。大統領は、涙ながらに訴えた。地球の未来のために、この大冒険に力を貸してほしいと。すると、どうであろう、世界のあらゆる国から、その冒険者たちが集まったのだ。その中には、つい最近まで、いがみ合い続けてきた隣国の兵士たちも混じっていた。彼らはこの一つの地球のためにわだかまりと武器を捨て、互いの命を預けた冒険に出かけようとしているのだ。
 モニターには、がっちりと大統領の手をにぎった探査船の船長の精悍な顔が映し出された。浅黒く日に焼け、東洋系の顔立ちをしたその人は、ゆっくりとそしてしっかりとした口調で語り始めた。
「私がまだ小さいころ、私の国は大きな災害を経験しました。その時に、人々が私利私欲に走ることなく、協力し合い一つになることの大切さ、そして強さを知りました。世界が一つになろうとしている今、こんなに心強いものはありません。この探査は必ず成功するでしょう。私のその思いは今、確信となり揺るがないものとなっています。私たちがこの大冒険を成し遂げ、また、地球に降り立った時、一緒にまた笑い合いましょう。」
 そう言って、乗り込んだ銀色の船体に太陽の光が反射してきらりと光った。それはまるで新しい地球の未来を示しているかのようだった。

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