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23年度開催結果


2011年 作文の部<中学生部門>入賞作品
(財)日本宇宙フォーラム理事長賞

希望への旅立ち
兵庫県 姫路市立高丘中学校3年  福井 沙耶
 
 もうすぐだ!
 もうすぐ待ちに待った卒業旅行だ!
 私の通っている学校は、宇宙ステーション内にあるスペーススクールだ。地球からスペースシャトルで約二十分。今年で開校五十周年である。地球の様々な国から生徒たちがやって来る。また、卒業旅行に好きな星へ行けることでも有名だ。
「パンフレットを参考に、希望の星を申し込み用紙に記入してください。締め切りは来週の、金曜日です。」
 どうしよう。私はまだ行き先を決めていないのだ。生徒たちの多くは、自分の将来を見据えて旅行先の星を決めている。おそらく人気の星上位は、長期間滞在できる火星、自然エネルギー開発で有名な木星、医学の最先端技術を持つ冥王星であろう。また、少し遠いが最近、宇宙遺産に登録された美しい星スバルだ。私はどこの星へ行こう……。
「旅行先、まだ決まってないみたいね。」
 後ろからサラ先生に声をかけられた。サラ先生は、この学校の生徒なら誰でも尊敬する先生なのだ。
「私はね、卒業旅行に誰も行かないような、自然ばかりの小さな星へ行ったのよ。」
 ——その星は、環境は地球によく似ていたが、近代的な建物は全く無く大自然に囲まれた星だった。そして台風、地震、津波、竜巻などの自然災害の多い星でもあった。しかし、大きな被害を受けたことは今まで一度もないという。住人の一人が、先生にこう言ったそうだ。私たちには自然の声が聞こえるのだ、この星に生きているもの全てが家族なのだよ、と。彼らは、自然を家族だと考え生活するうちに、植物の声、風の声、そして、星そのものの声が聞こえるようになったのだ。雨が降る前には風が、収穫時期がくれば作物が、自然災害が起こりそうになれば星が、教えてくれる。お互いに理解を深め、共に生きてきた結果なのだ。だからこそ、彼らは自然が困るようなことは一切しないのだ。——
「あの時の感動は一生忘れないわ。私も自然の声が聞きたくてこの道へ進んだのよ。」
 そう、サラ先生は自然環境の研究において、宇宙的にも有名な学者なのである。
「自分が何をしたいのか、それだけを考えて行き先を決めたらいいのよ。」
「はい!」と答えた私は、改めて何をしたいのかを考えてみた。そういえば私は、幼い頃から宇宙を冒険することを夢見ていた。でも、いつの間にかどこかで諦めていたのだ。私にはできないだろうと……だとしたら、これは良いチャンスかもしれない。
「先生、私は宇宙を冒険したいです。」
「まあ素敵ね、この旅行はあなたにとって初の冒険旅行になるのね。」と言ってくれたのだ。
 家に帰ると私は、早速行き先を決定した。その星は、パンフレットの最後にあった。登録はしているが、まだ誰も行ったことのない星だ。冒険に行くのなら、人気のある星や地球人が移住しているような星では意味がない。そう、未知の星でなければならないのだ。
 しかし、行き先は決定したが、またすぐに頭を抱えることになってしまった。なぜなら、どんな星かもどんな住人が居るのかもよく分からないからだ。言葉の壁は、宇宙共通語のスペース語もマスターしているので心配はないだろう。問題は、この旅行の目的の一つが、いかに地球のことを知ってもらうかにあるということだ……そして、ある名案が閃いた。
 数日後、私は卒業旅行、いや、私にとっては初の冒険旅行へと旅立つため、総合宇宙ステーションへとやって来た。
「あ! サラ先生だ!」
「あら、準備はもう完璧でしょうね。あなたは、お土産何にしたの?」
「はい!私は、地球儀を持って行くことにしました。これを見れば、地球がどんな星かよく分かると思ったからです。」
「あら、素敵ね。」と、先生はいつもの口調で言ってくれた。
「そうだ、先生に質問があるんです。あの……自然の声は聞こえたのですか?」
 先生は、微笑みながら、
「自然は家族、という考えを広めているとね、やっぱり私をおかしな人だと思う方も多かったの。それでも負けずに頑張っていたら、部屋のパンジーが『ありがとう』って……。」
 私は、夢は諦めないと必ず叶うと、改めて思った。しかし、私は今、不安でいっぱいだ。おそらく、今このステーションにいる皆もそうだろう。でも、新しい何かに出会える希望と夢で溢れているのも事実なのだ。
 私は、シャトルに乗り込んだ。これから十日間ほどで目的の星に着く。同じ星に行く人がいない私は、一人旅だ。でも、必ず地球へ帰ってくる。先生へのお土産話と、また新たな希望をもって。

 「さあ、出発だ!!」

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