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23年度開催結果


2011年 作文の部<中学生部門>入賞作品
宇宙航空研究開発機構理事長賞

宇宙で生まれた「きぼうの花」
茨城県 土浦市立土浦第三中学校3年  正田 真悟
 
 すべては,一本の植物から始まった。
 時は少し未来——。
 ここは宇宙ステーション「きぼう」実験棟の中。すくすくと育っているこの植物は大気中の放射性物質を蓄える性質を持つらしく、危険な物質を取り扱う「きぼう」実験棟には欠かせない存在だ。
 数年前にこのステーションで真空状態での交配に成功し、『放射能を吸う』という画期的な性質を持つ植物として世界中で話題になった。この植物は普通とは違い,放射能を吸って酸素を出す。
 この素晴らしい植物が開発されてから、福島やチェルノブイリなど、世界中の原発事故跡地に植えられた。しかし、この植物はみんなの期待を見事に裏切った。種はいくら水をかけても、いくら待っても一向に芽が出なかったのである。
 なんと、この植物は無重力の下でしか育つことができなかったのである。
 僕はノーベル賞をもらう予定だったが取り消され、それから、僕のミッションはこの種を地上で発芽させることに変わった。
「どうして宇宙でしか育ってくれないんだ。」
 ぼくはあきらめ混じりにつぶやいた。すると驚くことに、種はみるみる成長して僕に語りかけてきた。
「こんにちは、シンゴさん。あなたが私を生み出してくれたのですね。
 私はチェルノブイリに咲くヒマワリとフクシマに咲くヒマワリをかけ合わせて作られました。二つの場所で私に込められた思いが、地球の母なる源・宇宙で、一つに結びついたのです。」
「でも、なぜきみは地球で育ってくれないんだい。」
「それは、地球の皆さんの想いが足りないからです。いま、地球で真剣に美しい地球を取り戻したいと願っているのは、未だわずかのみ……。地球にいる全人類が、戦争や過剰な開発を反省し、再び美しい土地を取り戻そうと努力するならば、私は地上に根を張り、花を咲かすでしょう。」
 そう言い残して、植物は元の種に戻ってしまった。

 「僕達の努力で、地球の未来は変えられるんです! いや、僕達が未来の子孫のためにも、変えていかなくてはならないんです!」
 その翌日、僕は研究室のモニターを通じて必死に訴えかけた。そして、その日から人類のモチベーションは大きく上がった。あきらめかけていた人々が、美しい地球を取り戻すために立ち上がったのである。
 大人たちは一本一本木を植え、有害物質を取り除いていく。子供たちも地域の清掃に参加し、リサイクルを進める。各国の首脳達も友好の握手を交わした。
 そうして世界はひとつになった。国籍も人種も、性別も、年齢も、宗教も、すべての壁を乗り越えて、全人類が、「地球を取り戻す!」という目標に向かって歩み始めた。
 そしてある日、ついに花は咲いた。
 世界中に笑顔があふれた。原発事故や核実験によって長い間、故郷を離れていた人々は久しぶりに自宅に戻り,今までの生活を取り戻した。
 人類は、地球の未来を変えたのである。
 ……始まりは、ひとつの植物だった。
 宇宙ステーションで生まれたその花は、「きぼうの花」と呼ばれ、世界中で親しまれている。

 僕は窓の外に目をやった。勉強の合間にうたた寝をしていたようだ。
 そこには、太陽の光を浴びて輝く、一面のヒマワリの花……。
 忘れもしない二〇一一年三月の福島原発事故の後、僕が庭に植えたヒマワリだ。
 僕が住む茨城県土浦市にも、放射性物質は降り注いだ。ほうれん草や原乳は一時出荷停止に。自宅周辺の放射線量は事故以前の三倍の数値のままだ。
 ファイト・レメディエーションといわれるヒマワリや菜の花が放射性セシウムを吸着する作用を、宇宙空間がさらに強化・発展させてくれたら……。
 心はいつでも宇宙を夢見て、旅することができる。宇宙は人類の源なのだから。
 ……僕は信じている。
 宇宙は,地球が抱える困難を解決する鍵を、きっと授けてくれることだろう。
 ……僕はヒマワリに祈る。
 福島やチェルノブイリで故郷を離れた人たちが、いつか必ず故郷に帰れますように。

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