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22年度開催結果


2010年 作文の部<中学生部門>入賞作品
特別賞 宇宙開発担当大臣賞

笑顔でつながる宇宙の絆
大阪府 交野市立第三中学校2年生  岡田 智実
 
 紀元後三九九〇年、ここ地球では一〇年後に開催される宇宙博の準備が始まろうとしていた。参加星は一九三。なにしろ初めてのことで、宇宙博開発準備室部長となった私は毎日が大忙し。とはいっても、何かを一生懸命準備するのは楽しい。
 「宇宙博か……」ふと仕事の手をとめて私は思った。あの頃の人々はこんな日が来ることなど想像できなかったに違いない。あの頃とは、そう、今から約五〇〇年程前のこと。地球の人類は地球以外にこの宇宙に多くの文明のある星の存在を知ることができた。当時の記録にはその時の興奮と喜びがあふれんばかりに記されている。しかしそんな喜びもつかの間。地球をはじめ、宇宙の数々の星達は、いかに自分たちが優れた技術を持っているかを誇示するために競争を始めた。やがてあちこちで起こる戦争。暗い時代は一〇〇年程続き、その間多くの美しい自然と尊い命が奪われた。ここ地球も例外ではなかった。その時の反省から植えられたのが一本の木だった。この木はとても不思議で、その木の周りの人々の心がすさんでいる間は葉も暗褐色で、小さなまずい実しかならない。ところが、人々の心が明るくなり、笑い声を聞かせると大きく成長するのだ。平和の樹と名づけられたその木は、その後南極を除く各大陸に毎年一本ずつ植えられている。また今の地球の平和を象徴するかのように「ピースマイル」という赤色のとても美味しい実がなり、人々の観光スポットとなっている。ところが、ヒョンなことからその木の噂が宇宙全体に広がった。平和の木を見たい。平和の道へのお手本にしたい。宇宙の人々のそんな声に応えるために開かれることになったのが宇宙博だったのだ。ところで、宇宙博というとどんなパビリオンが作られるだろうと想像されるかもしれない。でも意外なことに、ここには一切のパビリオンを作らない。会場は地球そのものだ。地球にしかない海や土、緑の匂い、水の音や風の囁き。自然が作り出す数々の色。季節のうつろい。これらかけがえのない宝物を、五感をフルに使って感じてもらうのだ。ただ同時に私達は別の企画も考えていた。宇宙の人々がすべて宇宙博に来られるわけではない。会場は地球だが、誰もが参加できる宇宙博にしたい。でもどうすればそんなことができるだろうか。
 そんなある日、私は電子新聞の「探して下さいコーナー」でふとこんな記事を目にした。
「近頃のみんなは忙しくて、険しい顔ばかり。笑顔をどこかに落としてきたのかも。みんなの笑顔を探してください。Fromユー。」
 これだ。私はひらめいた。それから早速私は行動に移り、全宇宙の人にこんなメッセージを送った。「あなたのとびきりの笑顔の写真を送って下さい。ただし一人一枚で。」
 私の計画を種明かししよう。みんなの笑顔を集め、コンピューターで一つの大きな球体の3Dモザイク画を作る。つまり一人一人の笑顔が一つの大きな笑顔になるというわけだ。計画はすぐに実行に移された。すべては、コンピューターと専用ロボットがやってくれるとはいえ、これを完成させるのにはその後九年と九ヶ月の月日がかかったのだった。そのモザイク画は「HOPE」と名づけられた。
 四〇〇〇年、九月十二日、今日は宇宙博開幕の日だ。あと五分で開幕の合図。成功しますように。私は何度も心の中で手を合わせて祈った。握り締めた手に汗がにじんでくる。十秒のカウントダウンが始まった。そしてゼロの合図! その瞬間、わっと歓声があがった。HOPEが会場の上空に姿を現した。大きな笑顔がみんなを見ている。「私の顔!」「僕のだ!」ちょっぴり秘密だけれど、私にはそれが自分の顔に見えた。その時、私は気がついた。住む星が違っても笑顔はみんな同じなのだ。しかもそれだけではない。みんな上を見上げては次に隣どうしの人と笑いあっている。まるで笑顔の連鎖。違う星どうし姿形は違うのに、一つの笑顔が次々とみんなの笑顔を誘い合う。なんて素晴らしいのだろう。そして会場から、いや、この地球からあふれんばかりの盛大な拍手が沸き起こった。
 宇宙博は大成功だった。参加した人々は平和について考え、また地球の美しさに誰もが感嘆の声をあげてくれた。その上あちこちで見られた笑顔。身近にあるのにその大切さ、素晴らしさになかなか気づくことができないことはとても多い。そんなことを改めて感じさせてくれた宇宙博でもあった。
 ところでHOPEの役目は終わったのだろうか。とんでもない。彼の活躍はこれからだ。HOPEは立寄衛星というものに乗せられて、今はいろんな星を巡回中。すべての人々に笑顔になってもらうために忙しく飛び回っている。そして時々私の元にもその様子を知らせるメールがやってくる。たくさんの人の笑顔の写真を載せて。もしかしたらそこにはユーの笑顔があるかも……そんなことを考えていると、私の顔にも自然と笑みが広がるのだった。

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