「一般財団法人日本宇宙フォーラム」トップページへもどる 「宇宙の日」ホームページへ戻る
「宇宙の日」ホームページ

 

22年度開催結果


2010年 作文の部<小学生部門>入賞作品
文部科学大臣賞

宇宙が食糧危機を救う?!
埼玉県 さいたま市立尾間木小学校5年生  津久井 南帆
 
 キーンコーンカーンコーン。六時間目始まりのチャイムが鳴った。私達五年三組はみんなすばやく席に着いた。今日の社会科は、食料について。私達は、食料が不足する時代が近づいている問題について習った。医学が発達して寿命がのび、世界の人口は急に増えている。でも、耕地面積には限りがあるから、食料生産を増やすのはむずかしいらしい。授業の最後に、先生はこう質問した。
「みなさんは、食料生産を増やすためにはどうしたら良いと思いますか?」
 私はあるアイデアを思いつき、元気良く手を挙げて発表した。
「必要な食料を宇宙で育てて、それを地球に運べばいいと思います。」
 クスクスという笑い声があちこちから聞こえる。変かなぁ? いいアイデアだと思ったんだけど・・・・・・なんて考えていると、先生がニコニコしながらこう言った。
「みなさん、もう実際に、宇宙でそんな研究が進んでいるそうですよ。来月の小惑星への修学旅行の時、その研究所を特別に見学させてもらえることになりました。」
「えーっ!」
 みんなびっくりしてさけんだ。本当にそんな研究がされているなんて、実は私も驚いた。もちろん、放課後はその話題でもちきりに! 楽しみだねという声がろう下までひびいた。
 学校の帰り道、親友の星菜(せいな)ちゃんは、
「宇宙で食料を育てるって、よく思いついたね。月乃(つきの)ちゃんはきっと、おじいちゃんの才能を受けついでいるのかもね!」
と言ってくれた。私、月乃のおじいちゃんは昔、小惑星探査機「はやぶさ」の研究チームの一員だった。「はやぶさ」が宇宙開発を進めるきっかけになったことは、理科の教科書にものっているんだよ。家に帰った私は、おじいちゃんの研究日記を読み始めた。研究が進んでいる今、新しいことは何一つ書かれていない。だけど、おじいちゃんの宇宙への強い思いが伝わってくる日記は、私の宝物。読みながら、修学旅行がどんどん楽しみになっていった。
 一か月後、私達はいよいよある小惑星にやって来た。たくさんの探査機が打ち上げられた中で見つけた、地球と一番似た土を持っている星。シャトルからおりた私達は、重力の小さいこの星で歩くのに苦労しながら、研究所にたどり着いた。研究所の中に入ると、ヘルメットをぬいでも、普通に息ができた。
 目をかがやかせてきょろきょろしていると、研究員の天川(あまかわ)さんがやさしく説明してくれた。
「みんなは、植物を育てるために何が必要か知っているかい? 一つは日光だ。この研究室では、人工えい星に鏡を付けて日光を集めているんだ。鏡の向きや角度を変えることで、気温も調節する研究をしているよ。」
 私達は、頭の中を整理しながら聞いていたけど、天川さんはもっと驚くことを説明した。
「次は、必要な水と二酸化炭素の研究室。最近、地球から二本のパイプがつなげられて、水蒸気と二酸化炭素が送られて来るシステムが完成したんだ。地球からの水蒸気で、小惑星の上空で雨雲を作って、雨をふらせることが出来るんだよ。水蒸気の量で雨量を調節できるから、大雨で水害をおこす心配もない。
そうそう、二酸化炭素のパイプがつながったことは、地球にもすごく良いことなんだ。地球の二酸化炭素を減らすことが出来るからね。何十年も問題になってきた温暖化をくい止められそうなんだよ。一石二鳥だろう?」
 私達は、わぁーと声を上げ、拍手をした。
 見学の最後に案内された中庭には、信じられない光景が広がっていた。天川さんは、
「私たちのチームワークの結晶、小惑星で育てた第一号の小麦たちだよ」
とうれしそうに言った。そして、
「でも、育てた小麦をどうやって、早くたくさん地球に運ぶかがむずかしいんだ。」
と続けた。その瞬間、私の頭の中で百万個の電球が光り、おじいちゃんの日記の中の言葉を思い出した。
「プラズマイオンのトンネルなんてどうですか?」
 私はワクワクしながら、天川さんに伝えた。すると、天川さんは興ふんしながら言った。
「プラズマイオンか! 昔はたくさん研究されていたようだけど、試したことがなかったな。私達は、新しい方法ばかりにとらわれていたのかもしれない。ぜひ試してみよう。」
 夢のような小惑星への修学旅行から帰って来た私達。今日は、おみやげにもらった小惑星産の小麦粉を使っての調理実習。みんなで、チームワーク良くパンを焼いた。さっき天川さんが、プラズマトンネルの研究が順調に進みそうだと知らせてくれた。近い将来、プラズマトンネルで運ばれた小惑星産の食料が、地球中で食べられるかもしれないね。


もどる