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22年度開催結果


2010年 作文の部<小学生部門>入賞作品
日本科学未来館館長賞

宇宙を利用した未来の研究者「ぼく」
奈良県 橿原市立白橿北小学校6年生  森平 健太
 
 ぼく達は祈っていた。「はやぶさ10(テン)」が無事に帰還することを……
 今から107年前の2003年5月に「はやぶさ」が打ち上げられた。「燃料切れ」「行方不明」「イオンエンジン停止」などの数多くの危機を乗り越えて2010年6月に地球に帰還した。その時には残念ながら小惑星イトカワの物質は何も採取されず失敗に終わった。そして2014年には、「はやぶさ2(ツー)」が打ち上げられた。
 「はやぶさ」の帰還から100年。12年前に打ち上げられた「はやぶさ10」が今夜大気圏に突入する。「光学望遠鏡すばる」で確認された128億光年離れた銀河を、光速99・99%走行とワープ航法を使って目指した。「はやぶさ10」は「光学望遠鏡」と「電波望遠鏡」を備え、高性能カメラとビデオで128億光年離れた銀河から地球を撮影する。それは128億年前の地球だ。つまり宇宙誕生から、わずか数億年後の生まれたての銀河を見ることができる。それだけではない。「はやぶさ10」は、そこから地球に帰還するまでに50回の撮影を行う。50億光年離れた場所での撮影では地球の産声を聞くことができる。
 ぼくがこの「はやぶさ10」の開発プロジェクトに参加した理由は、ぼくが長年研究してきた恐竜絶滅の真実を知りたかったからだ。「はやぶさ10」は6500万光年先でも地球を撮影することになっていた。
 しかし「はやぶさ10」の12年間に及ぶ飛行にも「はやぶさ」同様にたくさんの危機があった。光速走行のエンジントラブル。通信が途絶えたのは30回を越え、そのたびに行方不明になった「はやぶさ10」を根気強く24時間体制で探し続けた。また時空の抜け穴「ワームホール」を使ってのワープ航法は、いつも危険と隣り合わせで、ブラックホールにのみこまれそうになったこともあった。「もうだめだ!!」という危機の時にも宇宙航空研究開発機構の管制室で、ぼく達は「はやぶさ10」を信じて通信を送り続けた。祈りと共に。そして、ぼく達以外の世界中の人々が不可能だと言った「はやぶさ10」の帰還。ぼく達は、最後の祈りを「はやぶさ10」に送っていた。
 2110年4月17日。オーストラリア上空で大気圏突入。夜空に光の帯を残しながら「はやぶさ10」の撮影データの入ったカプセルが落下した。これからぼく達が目にするものは、ぼく達がここに存在していることのすべてを教えてくれるだろう。
 日本にカプセルを運び、このカプセル開封のために作られた特別な専用施設で、とうとうカプセルは開けられた。それは「未知の世界に入る秘密の扉」のようだった。
 まず映し出された映像は、128億年前の宇宙。それは、ゆったりと回転する巨大な銀河だった。今まで見たこともない神秘的な世界だ。これがビックバンによって生まれた宇宙なんだ。ぼく達の最初の一歩だ。
 そして、誕生した太陽が猛烈なスピードで回転し燃え続けていた。その渦の中から小さな星くずが生まれている。地球誕生だ。「はやぶさ10」が50億光年先で撮影したものだ。そしてまだ微惑星の衝突は続く。だんだん地球が火の海になってきた。とても熱そうだ。そこに雨だ。雨が降り出した。ものすごい雨だ。マグマにしみている。ものすごい豪雨は千年も続いた。だがこの雨は普通の雨ではなく、とっても熱い。しだいに雨がやみ、山と海が広がる地表が見えた。
「地球誕生には、こんなにすごいドラマがあったんだ。すごいぞ地球。」
 ぼく達は驚きの声を上げた。次はいよいよ恐竜絶滅の6500万年前の地球の映像だ。ぼくのドキドキは最高潮だ。目の前には海があった。鳥のような生き物達が魚をとっている。
「ヘスペロニスだ。イクチオルニスもいるぞ。なんて美しいんだろう。」
 どこかなつかしささえ感じる、静かな世界。しかしそれは突然壊された。火星と木星の間にある小惑星帯がひしめきあっている所で、2つの小惑星がぶつかって直径10㎞の巨大隕石が地球のメキシコのユカタン半島へ……落ちた。空がまっ赤になり、森林火災がおきた。そして恐竜達を焼きつくしていった。隕石が落ちてできた巨大クレーターが300mの巨大津波をおこし、生き残った恐竜をすべて飲みこんでいった。その後、隕石の落下で巻き上がった粉じんが地球をおおい、太陽光をさえぎってしまった。それは10年間も続き草木は枯れ、生き物は死に、「死の星・地球」となってしまった。
 1億5千万年繁栄した恐竜は巨大隕石の衝突という偶然によって絶滅した。しかし、その死の星がまた緑の地球によみがえった。気の遠くなるような時間とドラマがあった。そして、ぼく達はいる。この宇宙から帰ってきた地球の真実を、これからの地球のためにぼく達は何をするべきなのか考えるべきなんだ。

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