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21年度開催結果


2009年 作文の部<中学生部門>入賞作品
日本科学未来館館長賞

「蒼く輝く宝物」
兵庫県 姫路市立高丘中学校1年生  福井 沙耶
 
「お姉ちゃん、ちょっと待って!」
「早く、もう行くから……。」
 今から私たちは、宇宙へと旅立つのである。といっても、修学旅行先が銀河なのが一般的な今、別に珍しくも何ともない。私たちは旅行ではなく、天文学者を目指して研修へ行くのである。
「さてと……出発!」
 まず、銀河を散策しながら課題に出ている星や流星群などの観測とデータ採集に行った。予定よりかなり早く課題が終わったため、太陽系の観測もしに行くことにした。
「あれ?お姉ちゃん、あの星何だろう?」
「妹が指す方向には、蒼く輝く星が一つあった。見たことのない星だ。
 ―もしかして……地球?―
 えっーと……地球……慌てて銀河事典で調べると、隅に小さく(かつて太陽系にあった惑星。現在は存在不明。)とあった。確かに、この星を習った覚えはない。しかし、どこかで聞いたことがあるような……。
「そうだ!おばあちゃんの昔話……。」
 私の祖母は私が幼い頃に亡くなった。その祖母がよく話してくれた昔話があった。
「昔々……あるところに、地球という星があったの。その星は蒼く輝くきれいな星だったの。でもね……。」
 その地球が壊れ始めたのは、今から約千年前の西暦二〇八九年頃。温暖化、砂漠化などの環境破壊が進み、食料と資源を求めて人類は核兵器を用いた戦争を始めた。そして人類自らの手で地球を再起不能へと追いやったのだ。その地球には、多くの人々が残されたまま、わずかな人だけが地球から脱出することに成功した。そして、私たちの今住んでいる星へとやって来たのである。その星には多くの資源があり、また環境も地球とほとんど変わらなかったからだ。
「地球って本当にあったんだ!」
 早速、私たちは地球発見の大ニュースを、宇宙研究開発銀河局へ報告し、地球での滞在許可をもらった。
 蒼く輝く星には、大陸は一つ。人々はいろんな言葉を話した。そして、エネルギー源は主に風力発電、太陽光発電などの自然エネルギーであり、石油は全く使用していなかった。きれいに澄んだ川。青い空や海。緑であふれた山々―。自給自足で暮らす、のどかで平和な星だった。
「ようこそ地球へ……。」
 たくさんの人々が私たちを迎えてくれた。その中心に穏やかな笑みを浮かべる老人がいた。その老人は、地球の様々な話を聞かせてくれた。核戦争により地殻変動が起こり、かつて六つあった大陸が一つになった話。たくさんの命が失われて地球から笑顔が消えた話。地球が復活するまでの努力の話……。
「この地球が笑顔を取り戻すのに、どれだけの月日が流れたのじゃろうか。でもな、お嬢さん方、それだけ笑顔は宝なのじゃ。その笑顔を守るために、わしは二百年、生きているようなものじゃ。ハッハッハッ!」
 その老人の笑顔はとても幸せそうだった。
 数日後、私たちは地球を去ることにした。
「最後に、お嬢さん方の住む星の名を教えてくれんじゃろうか?」
「あ、はい。『愛(ア)都夢(トム)』です。」
と私は老人に宇宙名刺を手渡した。
「愛都夢……よい名前じゃのう。」
と呟き、老人は私たちに別れを告げた。
 帰りのシャトルの中で、私たちは夢から覚めたような不思議な感覚に浸っていた。『地球』……本当に夢みたいな星だった。
 私たちの住む愛都夢では今、急速に科学技術が進歩している。しかし、その代償に、かつて山のようにあった資源が今はもう、ほんの一握りにまで減少している。最初、この星にやって来た地球人は夢と希望を胸に「二度と同じ過ちを繰り返すまい。」と決意したはずだ。しかし科学の進歩によって、たくさんの夢を叶え、少しずつだが確実に向かう方向が変わってきているのである。そう、まさに第二の地球になろうとしているのだ。(私たちが抱いていた夢、叶えてきた夢って一体何だったんだろう?それよりも、もっと大事な何かが他にもあったのでは。私たちは夢を追いかけることに夢中で、何かもっと大切な物を見失っていたのかもしれない。)
 その日から私たちは、猛勉強し、五年後、天文学者という夢を現実にした。もちろん、地球の環境や生態を詳しく調査するためだ。そして、地球で学んだことを伝えていくうちに、愛都夢の何かが変わろうとしていた。
 今、私たちは、もっと大切な何かを発見するため、新しい第一歩を踏み出すのだ!無限の可能性にあふれた、二つの星とともに。


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