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21年度開催結果


2009年 作文の部<中学生部門>入賞作品
特別賞 宇宙開発担当大臣賞

「地球をまわる謎」
千葉大学教育学部附属中学校3年生  辻村 光樹
 
 「これ、まさか宇宙人が。」
 男は宇宙船の外壁にできた大きな五本指の手形のへこみを見て言った。
 月旅行も簡単になった時代。ここは月にある日本独自の居住基地。男は今、宇宙船整備場にいる。彼は船体整備士だ。
 この宇宙船は東京発、月面基地ゆきの二六便。「大気圏を出てまもなく、船体は軽い衝撃を受けた」とパイロット。この衝撃の原因が生物の手であるらしいとは、二六便の搭乗者の誰もが想像つかなかった。船体には五本指の手のへこみがある。形は人間の手と似ているが、大きさが明らかに違う。大きい。乗客たちはこれを見て驚いた。男も、「この生物は人間のような高等生物だろうか。しかしなぜ地球の大気圏の上空スレスレまで接近しているのだろうか。」と想像をふくらました。
 このできごとは、またたくまに世界の人々に知らされることとなった。乗客の人達が、写真等をネットに投稿したことがきっかけだ。報道機関もこのニュースに飛びついた。地球では大変な議論が巻き起こった。今までは宇宙人の足跡をたどり、探していたが、今回は違う。宇宙人がこちらに向かってきていて、地球のスレスレのところまで来ているのだ。「宇宙船で宇宙人をはねてしまった。宇宙戦争だ。」といった話が飛び交い、「人類滅亡」といううわさまで出てきた。
 このできごとの翌日、宇宙船整備場には大勢の科学者達が集まっていた。衝突した物体が生物であるという学者もいれば、生物ではない、ほかのものであるという学者もいた。学者達は調査を始めた。整備士の男は、宇宙人がいて地球にせまっているという仮説を支持した。彼は宇宙人は存在すると信じている。なので、船体の調査結果を楽しみにしていた。
 結果が出た。船体は強い金属製であったため、へこみから物体の詳細な形や様子はわからなかったが、宇宙人の体の部分の衝突痕がないので、衝突したのは手のみであることがわかった。また、衝突痕の角度などから、この物体は今でも地球を周回していることがわかった。男は、この周回している物体をキャッチして、調べることはできないのかと期待した。
 科学者達も同じことを考えていた。衝突したのは手だけかもしれないが、今まで追い求めてきた宇宙人の存在を確認するチャンスであると判断された。そして、物体の回収作業は、当事国である日本が担当することになった。
 方法は、まず二六便の詳細な飛行データと船体の衝突痕から物体の現在の周回軌道を計算し、次に有人宇宙船で軌道上の物体に近づき、キャッチするというものだ。高速飛行中の物体に高速で飛行しながら近づく作業、物体とのランデブーが、最も大変な作業らしい。男はこの件の関係者として、このランデブーを行なう特殊な宇宙船に搭乗することになった。ほかにも数名の一般人が選ばれ、搭乗することになった。もちろん彼らは作業は行なわないが、男は宇宙人をついに発見するその瞬間に居合わせることができると思い、非常に楽しみにしていた。
 そして作業当日。事前に計算していた物体の周回軌道と現在位置にはほとんど狂いがなかったため、作業は極めて円滑に進んだ。そして、ランデブーの作業に入った。
 遠くに白い物体が見える。本当に小さい。その物体はだんだんと宇宙船に近づき、なんとなく形が見えるようになった。宇宙大ハッケンの瞬間である。男は鳥肌が立った。物体はやはり手だけのようだが、この物体は宇宙船の捕獲用網によって回収された。
 宇宙船はその後、地球に帰還した。捕獲した物体は船内の特殊環境研究室に置かれていると男は聞いたので、彼はそこへ向かった。宇宙人の存在を信じている彼は、期待してそこへ向かった。
 しかし、そこにあったのは……手は白で手首は金属の輪になっていて、内側が空洞になっている手袋だった。この手袋、実は昔の宇宙服の手袋である。
 再調査の結果、二六便に衝突したのはこの手袋であると断定された。この手袋は昔、何らかの理由で宇宙空間に放出されてしまい、そのまま「スペース・デブリ」として地球を周回していた可能性が高いということだ。男は宇宙人を追いかけたつもりで実はゴミを追いかけていたという事実を聞いて、非常に惜しい思いをしている。
 宇宙人……。簡単に姿を現してくれないものだと改めて彼は知った。


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