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21年度開催結果


2009年 作文の部<中学生部門>入賞作品
(財)日本宇宙フォーラム理事長賞

「発見のその先に」
東京都立小石川中等教育学校1年生  鈴木 梨紗
 
 私は今、とある星に来ている。それは三ヶ月前の小さな発見がきっかけだった。
 三ヶ月前、ある科学者が、一つの不思議な星を発見した。普通、星はビッグバンから始まった宇宙の膨張のため地球から遠ざかっていくのに、この星だけは逆に近づいてくるのだ。そのことがニュースで当時、大注目を浴びた。
 早速その星に無人の探査機を飛ばして詳しい調査が始められた。その結果、驚くことに地球と同じような文明を持っていることが分かった。更に調査を続けたら、ついにその星の住民と交信ができたのだ。探査機の映像や交信の内容から平和で環境の良い星だと分かった。
 地球ではこの大発見に大騒ぎになった。その星の秘密が分かれば地球を素晴らしい星に出来るかもしれない。そのため、私は探査隊の一員となってこの星に来ているのだ。
 到着した時に人々はとてもあたたかく迎えてくれた。また、一目見ただけでは区別がつかないくらい地球そっくりの文明であった。でも、地上に一歩降り立つとすぐにおかしなことに気がついた。この星で右手を動かそうとすると左手が動くのだ。また動作も全て逆になる。上は下に、右は左に、前は後ろに。まるで鏡を見ながら動いているようだ。だから、宇宙船から外に出た時は、訳がわからず慌ててしまった。地球からの乗組員は皆バタバタと、とても不思議な動きをしていたので、この星の人は驚いたに違いない。けれどもしばらくするとちょっとした動きには慣れてほとんど間違わなくなった。
 でも、急な動きはなかなかそうはいかない。大きな犬にいきなり吠えられた時には犬に向かって走っていってしまった。この時は犬が驚いて逃げていってくれたけれど、危険で仕方ない。だが危ないことばかりではない。その日の夕方に見た夕日は最高であった。美しい森の中のとても澄んだ湖に光を反射させてキラキラと輝いていた。
「美しい光景ですね……。」
 隊員の一人が感動して言った。
「早くこの星の秘密を見つけなければ。」「それが分かれば本当に大発見ですね。」
 隊員達は皆うなずいた。
 翌日から私達は調査を開始したが、動きが逆になる現象以外特に変わったことは無かった。そこで次に直接住民に話を聞くことにした。皆親切に答えてくれたがなぜかある質問だけは誰に聞いても何も話そうとしない。例えば、
「素晴らしい星ですね。」
と聞くと、誰もが話を変え、ちょっと悲しそうな顔をする。
「科学が進歩していますね。」
と聞くと誰もがそれには答えず、足早に去っていく。町の図書館にも参考になる資料は何もない。
「この星の人は何かを隠している。」
そう不思議に思ったが、その謎を突き止めることなく数日間が過ぎて行った。ある日、私は親しくなった一人の住民の誕生日会に招待された。以前話をした時に二十五歳だと聞いていたので、私は彼に、
「おめでとうございます。二十六歳になったんですね。」
と言った。ところが彼から、
「いや、私は二十四歳になるんです。」
と言われた。まったく訳が分からない。すると彼は、
「この星では、年がだんだん若くなってくるんです。つまり、年齢も逆になるのです。それにはちょっと理由があって……。」
というと、やはり悲しい顔をして黙ってしまった。私はだまって彼を見ていた。すると彼はちょっとためらいながらも、誰も話してくれなかったこの星の秘密を話してくれた。話を聞いた後、私の頭の中は真っ白になってしまった。彼の話によると、この星は間違った方向へ科学技術を発達させてしまったらしい。すると、ある時を境になぜか時間が逆戻りを始めた。そして段々と元の姿を取り戻し、今自然も平和もあり、文明も発達した素晴らしい星になったのだ。でもなぜ皆悲しい顔なのだろう。なぜ話をそらしたがるのだろう。しかし彼の最後の一言で私は全てを理解した。
「まだ時間の逆流が続いているんです……。」
 私達は地球が素晴らしい星になるための秘密を求めてここまで来た。そこで発見したのは、悲しい星の歴史であった。でも私達は気がついた。私達がこれからすることをこの星が教えてくれている。この星の歴史を地球に伝えることが地球を素晴らしい星にする本当の大発見なのだと。
 私達は、この星の人々に別れを告げ、すぐに宇宙船に飛び乗った。急がなければ、そして一刻も早くこのことを伝えなければ。地球の未来が、みんなの笑顔でいっぱいになるように……。


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