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20年度開催結果


2008年 作文の部<中学生部門>入賞作品
国立天文台長賞

「地球に学ぶ僕らの未来」
交野市立第三中学校3年生  岡田 哲志
 
 西暦二二〇八年、ここは地球から二光年離れた星「黎明」。数年前に発見され、大昔の地球と環境が似ているため、一年程前ぼくらは送り込まれた。地球や生命の起源をさぐるためだ。ピリリリ。おや、宇宙電子メールが来たようだ。電源を入れ本文を見る。その瞬間僕は凍りついた。電子メールはこんなことを伝えてきたのだ。
「地球は異常気象。欧州では冷害、アフリカでは干ばつ。北米では巨大ハリケーンが次々発生し、深刻な食糧危機が発生。食料自給率が低い国は大打撃を受けるだろう。今は地球で餓死者を出さないことが先決だ。申し訳ないが、今後少なくとも二年間はそちらに食料を送ることができない。そちらには二年分ほどの非常食があるはずだが、今後の予定を考えてくれ。では幸運を祈る。以上」
僕たちはすぐさま緊急会議を開いた。ここで働く人たちは十一人。多くはないが、毎日の食事を節約したとしても非常食を食いつぶすのはなんともこころもとない。一日二食にしてはどうか、見切りをつけて地球に帰るべきだ、などいろんな議論がなされたが、結局ぎりぎりまで自分達の手で食料を賄う方向でやっていこうということに決定した。でもそれは口で言うほど簡単なことではない。今までは少しの野菜ぐらいはこの施設の中で作っていたが、それだけでは到底栄養としては不十分だ。五大栄養素がバランスよく揃っている植物を早急に開発する必要がある。
 結局僕がその責任者となり、とりあえず二種類の植物を作る計画を決めた。仮称は「ベジー1」と「ベジー2」であり、概容はこうだ。
「ベジー1」≪少量の水で育つイネ科の植物。実は稲で、根は芋。葉も食べられる。主食および野菜の替わりとなる。≫
「ベジー2」≪つる科の植物で実はトマトのような果肉がある。種子はたんぱく質が多く大豆のよう。≫
 次の日から早速研究が始まった。まずはイネの細胞と芋の細胞との細胞融合からだ。一ヶ月かかり融合できた、と思ったが・・・・・・。出来たのはなんと芋のように葉が多く、稲のように根がヒョロヒョロ。失敗だった。
 今度は前と別の細胞を使い融合させた。次はなんとなく食べられそうなものができた。(しかしまだ葉は稲のようだったが・・・・・・)僕はおそるおそる味見をしてみた。
「“イネ”の方はいいかな。“イモ”の方は・・・・・・ウェェなんてひどい味なんだ。ええいこんなものはいらない。」
 腹が立ったので、思い余って茎を折ってしまった。
「おや?この白い液は何だ?フム意外に甘いが少々濃いぞ。水で二倍に薄めてみよう。オッなかなかいけるぞ。」
 それはちょうど甘い牛乳のような味の飲み物だった。しかも調べてみると、カルシウムや鉄分なども含まれているのがわかった。他のみんなにも好評で良かった。しかし“イモ”の方は困ったな。もう一度だ。
 九ヶ月たって、やっとほぼ目標通りのものが作れた。しかし食料にできるまで育てるにはかなりの月日がいる。時間がない。急がなくては。僕はまたすぐ、「ベジー2」にとりかかった。これは前回の失敗も生かし、六ヶ月たって完成することができた。僕らは完成したベジー1をベジーネ、ベジー2をダイージと名づけた。とりあえず生きていくのに最低限の栄養はこれで確保できるだろう。
 地球からの朗報が届いたのはそんな頃だった。食料危機がなんとか回避できそうだというのだ。各国が協力しあって、難を切り抜けたらしい。僕たちへの食料配給も再開されるとのこと。みんなほっと胸をなでおろした。
 結局僕たちがやったことは無駄になったのだろうか。いやそうじゃない。僕たちは今回のことを通じて大切なことを学んだ。
 今まで当たり前のように思っていたけれど、僕たち人類は地球から多くの恩恵を受けていたのだ。食料を始め、環境としても・・・・・・。その恩を仇で返すような真似をしてはいけない。ところが、最近人類は、その約束を忘れつつあり、より便利な生活ばかりを追い求めている。しかし今回のこともあり、食料自給率の低い国はもちろん各国も反省し、『地球との共存共栄』を目標に今後のあり方を考えていくらしい。
 これから人類は宇宙に移住する計画もたてている。だがまず考えなければならないのは、便利さよりも『食べ物は自分で作る』だろう。今回作ったベジーネやダイージもその星とそこに住む人間を育む一端となってくれれば嬉しいが。そんな思いを抱きながら僕は二つの植物にそっと水をやった。植物ごしに窓をのぞくと太陽が輝いていた。地球や他の惑星、そして僕らとこの星を見守るように。


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