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20年度開催結果


2008年 作文の部<中学生部門>入賞作品
文部科学大臣賞

「宇宙でお好み焼きを」
坂井市立丸岡中学校2年生  上坂 賢司
 
「忙しいところすまないが、君には直径5キロのお好み焼きが焼けるかね?」
僕は駅前でお好み焼きの屋台を出している。目の前にいる紳士はそう話を切り出した。外見に特別変わったところはない。立派な紳士に見える。真面目そうな口調だし、お酒に酔っぱらっている様子でもない。二十年も屋台を続けているとずいぶん不思議な注文もあるものだ。紳士は平気な顔で話を続けた。
「君の腕前を見込んでのことだ、ぜひ直径5キロのお好み焼きを焼いてほしい。これは人類の未来に関わることなのだよ。」
 純粋にふざけている。それならこっちも負けるわけにはいかない。
「直径5キロ? お安いご用ですよ。何なら直径10キロでもかまいませんよ。」
「おお、ありがとう。君の人類の思う気持ちに感謝するよ。よし、これで契約は成立だ。君が加わってくれれば鬼に金棒。すぐにプロジェクト本部に連絡しなくては。」
(えっ? 何? これって契約? いったい僕は何を契約したのだろう?)
 三分後。僕はタクシーに乗せられプロジェクト本部に向かっていった。車内で紳士が教えてくれたプロジェクトの内容はこうだ。
「私はドクター鉄男。プロジェクト責任者を務めている。君も人類が『ビタミン愛欠乏症』で苦しんでいることは知っているね。」
 ビタミン愛欠乏症。それは二十一世紀の初めに発見された病気で、自分中心の考えと環境悪化が結びついて発病する難病だ。そして二十二世紀の現在も、最も人類を苦しめる病気として世界中で恐れられている病気である。 「ビタミン愛欠乏症の治療法をとうとう見つけたのだよ。それは何と簡単、心のこもった料理をプレゼントし合うことなんだ。」
 本当にそんなことで病気が治るのだろうか? それに僕がお好み焼きを焼くのと、どう関係するのだろう。それも直径が5キロもあるお好み焼きだなんて・・・・・・。
「地球には何人の人が住んでいるか君は知っているかね。その地球に住むすべての人が隣に住む人の幸せを願って、自分の好きなお好み焼きの材料を少しずつ出し合うんだ。そしてそれを君が宇宙空間で美味しいお好み焼きにするんだよ。その大きさが直径5キロというわけだ。」
 何だか面白いことになってきた。お好み焼きを焼くのは誰にも負けない自信がある。もし直径5キロのお好み焼きを焼けるとしたらそれは僕だ。僕の心にファイトの火が灯った。
 あの日から三年の月日が流れた。冗談にしか聞こえなかったプロジェクトに、僕はいつしか夢中になっていった。それは無重力を生かした魅力的な計画だったからだ。
 (1)お好み焼きの大きさに関して。直径5キロのお好み焼きは、地球ではとうてい形を保つことは出来ない。だが無重力の宇宙では、どんなに大きなお好み焼きも自分の重さで壊れることはない。これは大丈夫。
 (2)裏返しに関して。宇宙では慣性の力をじゃまするものはない。お好み焼きの端をつまんでゆっくり放り投げれば、後は時間をかけて自然に裏返っていく。これも大丈夫。
 (3)お好み焼きを焼く熱に関して。これは太陽熱を利用する。宇宙空間に巨大な凹面鏡を作り、その焦点にお好み焼きをもっていくのだ。たしかに凹面鏡は巨大になるが、これも無重力のため自分の重さで壊れることはない。これも大丈夫。(ただし、お好み焼きから湯気が出てきたら凹面鏡の調整を忘れてはいけない。吹き出す湯気がジェットとなってお好み焼きが動いてしまうからだ)
 一番問題になったのは、出来上がったお好み焼きをどうやって世界に住む人たちに配るかだ。最初は細かくしたお好み焼きを空から降らせる計画だったが、ドクター鉄男はガンとして反対した。
「それはいかん。それではプレゼントにはならない。世界にはプレゼントという言葉すら知らない人がいるんだ。彼らと顔を合わせて手から手へプレゼントを渡せたら、お互いにどんなに幸せな気持ちになるか考えてくれたまえ。そのためのプロジェクトではないか。」
 そのドクターの一言で、お好み焼きはリレー方式で配られることになった。
 目に見えない思いやりが見える形になる。このプロジェクトは本当にすごいと思う。確かに自己中心的な心と、環境を大切にしない心のためにビタミン愛欠乏症は生まれたのだろう。でも僕達はそのことに気づき、反省を生かして未来を変えようとしている。愚かさに気づくことも人間のすばらしさの一つだと僕は思う。人間は過ちを犯す、でも人間だから互いに助け合うことができる。お好み焼きに託した僕たちの願い。(必ずプロジェクトを成功させるぞ)と僕は心に強く誓った。


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