「一般財団法人日本宇宙フォーラム」トップページへもどる 「宇宙の日」ホームページへ戻る
「宇宙の日」ホームページ

 

19年度開催結果


2007年 作文の部<小学生部門>入賞作品
日本科学未来館館長賞

「月にウサギを」
交野市立妙見坂小学校5年生  岡田 智実
 
 ここは星坂小学校五年二組。今日は月についての調べ学習の発表の日です。五年生になると宿泊学習があり、この学校の行き先は月です。どうして月なのかは後でお話するとして、ちょっと教室をのぞいてみましょう。
 何しろ初めての宿泊学習。みんなドキドキわくわくしながらも、真剣に発表しています。
 月と地球は同じころに生まれたのに、この地球のような環境は月にはないこと。つまり、地球に当たり前のようにある水や空気、生き物などが、実はとてもかけがえのないものなのです。でも、この貴重な宝の中にすんでいる地球人たちは、その宝に気がつかないばかりか、その宝を壊しさえしていることがわかりました。今、月は誰もが行ける星というわけではありません。少し前まではそうだったのですが、地球と同じように、月の環境が破壊されそうになってきたからなのです。そして、これから地球や宇宙の未来を真剣に考えていける子供たちだけに、月での宿泊学習が許されることになったのです。
 さて発表の最中のことです。一人の子が突然言い出しました。
 「先生、昔は月にうさぎがいたのですか?」
 みんなえーと騒ぎ出しました。
 「月は空気や水がないんだよ。生き物がいるわけないじゃないか。ぼくたちだって、宇宙服を着ないと外に出られないからって先生に言われたばかりじゃないか。」
 「でも、本当にぼくのおじいさんのそのまたおじいさんの日記に書いてあったんだ。その人は、昔に月の探査機『かぐや』のデーター分析をした科学者なんだよ。その人が子供の時に書いた日記に、『今日はお月見です。ウサギがおもちをついているのが見えました。その後お月見のお団子を食べました。とてもおいしかったです。』と書いてあったんだ。」
 「えーっ、そんなんあるわけないやん。」
 みんなが口々に叫んでいたその時、
 「みんなちょっと待って。先生はその話聞いたことがあるわ。月に本当にいるのではなくて、ウサギがいるように見えるだけらしいけれど。じゃあみんな今度は月のウサギについて調べてきましょうか。」
 今度はみんな月のウサギのことを調べました。月のウサギは月の海の部分がおもちをついているウサギに見えて、これは日本で考えられていたものだということ。また、秋の一番月がきれいな中秋の名月と呼ばれる日には、お団子やススキ、ハギの花を飾ったりしていたこともわかりました。そして、もう一度月の写真を見てみると、
 「わあ、本当にウサギだ。」
 「すごい、おもちつきっておもしろそう!」
 「やってみたいなぁ」
 みんな興奮しています。
 「でもやっぱり本物の月のウサギを見てみたいなあ。先生昔の人のように、地球からウサギを見ることはできないのですか?」
 「先生も見たいけれど、今は夜も明るいし、それに空もよごれていて月もぼんやりとしか見えないものね。残念だけどちょっと無理なんじゃないかな?」
 確かに今は世界中で特殊な化学物質を使うようになって、地球温暖化は防げたものの、夜でも空は黄土色なのです。星はもちろん月さえほとんど見えないのです。
 その日から五年二組の児童たちは、生物だけでなく地球も守っていける生活にかえていこう。そして月にウサギを取り戻そうという運動を始めました。でも他の人はなかなか関心を持ってくれません。月のウサギより、毎日の生活が便利な方が大切だと思っていたからです。それでもみんな昔のお月見の風景を書いたポスターを作るなど、根気よく訴え続けたのです。また、『月にウサギを』の運動を始めたのを記念して、みんなはタイム花火衛星を打ち上げました。これは五十年後のお月見の日の夜十時、空に花火のメッセージが浮かぶ仕掛けになっています。でも空が汚れたままだと残念ながら見ることはできません。みんな五十年後、月のウサギも花火も見られたら……という願いをこめて打ち上げたのです。
 やがて五十年がたちました。今日は九月十二日。私の六十歳の誕生日。そして何百年ぶりのお月見の日です。夜十時になるといっせいに町中の光が消えることになっています。この五十年の間に空は少しずつ青さをとり戻し、地球も元気になりました。その時町の光が消えました。シュルル、パパーン! 空に色とりどりの文字が浮かび上がっています。
「MOON&EARTH HAPPY BIRTHDAY!」
 わーっと歓声があがりました。さあ次はいよいよ月のウサギ。どんな姿を現してくれるのでしょう。ぜひあなたも空を見あげてみてくださいね。


もどる