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18年度開催結果


2006年 作文の部<小学生部門>入賞作品
国立天文台長賞

「シュークリームがやって来た」
坂井市立長畝小学校6年生  上坂 賢司
 
 宇宙空間を切りさくように動く光。音のない宇宙を震わせるようなスピードが出ている。宇宙船の窓には、いよいよ旅の目的地、地球が小さく見え始めた。
「すごいぞ!! 本当にすごい。見てよ父さん、ブルーと白、光があふれているよ。」
「そうだパン。あの星が私たちの運命をにぎっている地球という星だぞ。」
「あなた、よそ見をすると危ないでしょう。真っ直ぐ前を向いて運転してちょうだい。」
 文句を言う母さんも、地球の美しさに見とれて窓からはなれない。
 僕の住むクッキー星に、しゃっくりが止まらない病気が流行して一年になる。星中の医者が集まって病気を研究したけど、しゃっくりで落ち着いて研究ができない。だから薬もできずに大弱りだ。そんな時「水に恵まれている地球には、しゃっくりを治す植物『ビックリ草』があるにちがいない」そう発表したのが生物学者の母さんだった。こうしてクッキー星の運命をかけて、僕たち家族が地球旅行に出かけることになったんだ。
「パン、着陸準備だ。地球は人間という生物が支配しているから、失礼のないようにロケットをシュークリームの形に変形させるんだ。」
(クッキー星では、シュークリームを贈り合うことが最高のあいさつだ)
 ロケットは無事着陸。辺りはシュークリームのあまいにおいでいっぱいのはずだ。僕たちがロケットの中で様子を見ていると、においに誘われるようにロケットの周りに人間たちが集まってきた。今度は僕たちの出番だ。僕たちは通訳ドロップを口に入れて、宇宙船のドアから飛び出した。
「地球のみなさんこんにちは。僕はクッキー星から来たパンといいます。」
 僕が地球の言葉でしゃべったからだろう、地球人はいっせいに「おぉー」と、おどろきのため息を上げてざわめいている。
「私はジャムといいます。私たちの星は、しゃっくりが止まらない病気でとても苦しんでいます。地球にはこの病気を治すビックリ草があると聞きます。お願いですから、私たちにビックリ草をわけてください。」
 母さんがそう言うと、今度はシーンと静まりかえってしまった。
 しばらくすると、ちょうネクタイを付けた市長と呼ばれる人が進み出てきた。
「それは出来ない相談だ。地球の植物はどれも数が少ない。それに地球の物を宇宙に持ち出せば、地球はそれだけ軽くなってしまう。軽くなれば地球の自転や公転に狂いが生まれ、とんでもない異常気象を引き起こしてしまう。」
 地球の重さが変われば、いろんな困ったことが起こるのは本当だと思う。でも、ビックリ草がないと僕たちが困ってしまう。どうしたらいいのだろう。その時だ、僕が持っていた生物通訳機がしゃべり始めた。
「私ワ『ビックリ草』デス。環境ヲ良クシテクダサイ。ソウスレバ私タチワ増エルコトガ出来マス。」
 生物通訳機を知らない地球人は、顔を見合わせてキョロキョロしている。父さんが一歩進んで話し始めた。
「この機械は生物通訳機といいます。この機械はちがう星の言葉だけでなく、動物や植物、そして命のある全ての生物と言葉を交わすことの出来る通訳機なのです。」
「私ワ『メダカ』デス。水ヲキレイニシテクダサイ。ソウスレバ家族ヲ増ヤセマス。」
「そうです。木を植え、花を育て、水をきれいにしましょう。環境は何もせずに守れるものではなく、愛情を持って作るものです。例えば私たちの星では、子供が生まれると三本の木を植えるきまりがあります。大人になって木材が必要になった時のために一本。森がいつまでも森であり続けるために一本。そして、木を植えることの出来なかった人のために一本です。地球のみなさん、みなさんが心を合わせれば、すばらしい環境が作れると私は信じます。」
 集まっているみんなの顔が、力にあふれて輝いていくのが僕にも分かった。
「ウーム、たしかに環境を良くすれば生き物は増えるだろう。だが、地球の重さが変わってしまっては……」
「心配はいりません。ビックリ草の重さの分だけプレゼントを用意しているのです。」
 父さんが合図をすると、ロケットの倉庫が開いて、山ほど積み上げられたシュークリームが出てきた。「すごいぞ!」地球のみんなは鼻をクンクンさせて大はしゃぎだ。
 地球人と話をするまで心配だったけど、どうやらビックリ草を手に入れることが出来たみたいだ。クッキー星のみんな、もう少し待ってておくれ。


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