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17年度開催結果


2005年 作文の部<中学生部門>入賞作品
国立天文台長賞

「宇宙開発と科学者達」
福島市立北信中学校3年生  菅野 仁紀
 
「久しぶりですね。カンノ教授。」
 ハワイ島マウナケアのオニヅカセンターで、ヨコヤマ博士が握手で出迎えてくれた。
 僕は五年ぶりに、D4宙域から地球に帰還した。僕は今、ペガサス宇宙基地で宇宙環境問題に取り組んでいる。
 今回の任務は「すばる国際天文台」に新設予定の「太陽系宇宙線観測装置」の設置だ。
 僕が初めて、マウナケアの「すばる天文台」を訪れたのは、三十年前の十二歳の時だった。白い雲のじゅうたんが眼下に広がるマウナケア山頂には、世界各国の天文台が並んでいる。中でも日本の「すばる」は際だち、その白い姿を輝かせていた。やがて日が沈むと、夜空には無数の星が輝き始めた。星の帯になった。
 「天の川だ。」
と、僕は叫ばずにいられなかった。まるで星のミルクが流れているかのように見えた。僕は、あの感動を今でも鮮明に覚えている。
 その「すばる」上空には、昔と変わらない無数の星が今でも美しく輝いている。それは、まるで奇跡のようだった。
 なぜなら約二十年前、地球は滅亡の危機にあったからだ。人口爆発による飢餓、鉱産資源の減少、熱帯雨林の消滅、オゾン層の破壊など、地球環境はどんどん破壊されていた。そして、地球上の生物は次々と滅んでいた。
 そんな中、世界中の科学者が地球を守るべく立ち上がった。もちろん僕もその一人だ。
 僕は専門分野の放射線に関する分野を担当。世界各地を巡り放射線の測定を行った。そして、異常な値を示す測定器を見て、僕は愕然とした。オゾン層の破壊が急速に進んでいたのだ。地球温暖化は予想以上に進んでいて、地球環境は危機に瀕していた。そこで、世界中の科学者で組織する「ISA」が「オゾン層修復装置」を開発。オゾン層修復に成功したおかげで、有害な紫外線や宇宙線は吸収され、地球に再び生物が住める環境が戻った。
 また、その間に世界各国の協力で、地球の軌道上に「スペース・コロニー」が造られた。人口増加により地球上に住めない人々はそこへ移住するためだ。その後、人類は宇宙で生活することがあたりまえになった。地球環境を維持するためにも、それは必要なことと判断された。そのため「スペース・コロニー」が何基も造られ、地球上の人々もそこに住みたがった。そして最終的には、地球の総人口の約半分が宇宙に移住していった。
 さらに、地球と月は「スペース・リニアモーターカー」で結ばれ、片道十時間で行けるようになった。月には大都市が築かれ、宇宙開発の拠点なのだ。また、月の地下資源も採掘され、地球の資源不足も解消された。
「科学の力」は、こうして太陽系の惑星全てに及んでいった。
 一番大きな発展を遂げたのは、火星である。
 十年前、火星のテラフォーミング計画が提案され、火星の地球化が始まった。
 まず、火星の極冠の氷を溶かし、火星の温室効果を高め、気温を暖かくした。そこへ、火星で育てられるよう遺伝子操作で品種改良した藻類を持ち込んだ。藻類は予想どおり火星の大気に酸素をもたらし、大成功を収めた。
 なぜ、人類はここまで急速に宇宙へ進出できたのだろうか。それは、二十五年前にNASAの無人探査機「ディープインパクト」をテンペル第一彗星に衝突させたことがきっかけだ。その後もその他の彗星に同じ実験が繰り返された。そして、彗星を構成していた物質の分析によって、太陽系の起源が解明され、採取された物質の中からは、太陽系に地球外の生命体が存在していたという証拠も見つかったのだ。
 そして同じ年、二〇〇五年に打ち上げられたスペースシャトル「ディスカバリー」に、野口聡一宇宙飛行士が搭載したドングリは、「地球の環境保護・宇宙開発のシンボル」として地球と火星にそれぞれ植樹された。
 そして、それは今まさに地球と宇宙の環境保護のシンボルとなりつつある。
 全世界が体験した「地球滅亡」の危機。その危機を、科学者をはじめとして、全世界の人々がひとつになって解決したシンボルだ。
 僕達はそれまで、国どうしの問題を「国際的」にしか考えることができなかった。しかし、地球滅亡の危機を乗り越えて、「地球的」な考え方ができるようになったと思う。
 同じ目的に向かって、国や民族の違いを乗り越えて協力できる、ほんとうに「ひとつの地球人」になることができたと思う。
 惑星に、地球のような環境破壊が起こることがないように、今後は「宇宙的」に考えた宇宙開発が必要だ。科学技術の進歩に合わせた、人類のモラルの進歩も忘れてはならない。
「いつまでもこの美しい星を守ろうよ。」
 僕は、ヨコヤマ博士といっしょに夜空を見上げながら、小さな星々に誓うように呟いた。

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