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17年度開催結果


2005年 作文の部<中学生部門>入賞作品
日本科学未来館館長賞

「イオの地より」
由利本荘市立本荘東中学校2年生  佐藤 華純
 
 拝啓 地球では木々が新しい葉を出し始め山全体が新緑でいっぱいのことだろう。ヒカルは、カゼをひいたりせず、元気で暮らしているかな。お母さんの手伝いをしっかりしているかな。妹のカオルとは仲良くしているかな。お父さんはこのイオの地で、スペース調査隊の仲間といっしょにがんばってるよ。  さて、地球でも新聞やニュース番組なんかで話題になったと思うけど、ついに、お父さんたちのチームが、世界で初めて地球外生命を発見したんだ。イオの地下のマグマの中から、バクテリアが見つかったんだよ。
 発見は、ほんの偶然だったんだ。お父さんたちは、その日、イオのマグマの成分を明らかにするために、基地近くの噴火口からマグマを採取し、超高温型の顕微鏡で観察していたんだけど、その時、何かマグマの中をうごめくものを見つけたんだ。初めはこれが生物体とは誰も思わなかったんだよ。一〇〇〇℃にもおよぶマグマの中に生き物が住んでいるなんて、考えられないことだろう。しかし、それを生命探査装置にかけると、確かに生物体だったんだ。
 これまで研究者たちは、地球と同じような穏やかな環境の中に生物体を探していたんだ。でも、それはなかなか見つからなかった。お父さんたちが発見したバクテリアは、地球人から見ると過酷な世界に暮らしていたんだ。宇宙を知るためには、常識にとらわれていてはいけないのだと強く感じたよ。
 お父さんは、このバクテリアに、ヒカルとカオルの名前をとって「ヒカオルズ」と名づけようと思っている。バクテリアに自分の名前がつけられてもあまりうれしくないかもしれないね。でも、このバクテリアは、超高温の中で平気にくらしているから、遺伝子を分析し、利用することで、地球人の健康や医療に役立つものがつくられる可能性があるんだよ。地球人の未来を担っているバクテリアであることが理解できれば、すごいことだと思えるようになるだろう。
 ところで、実はもう一つ、このイオで別の発見もあったんだ。それは温泉。イオは火山の星だから、あちこちから温泉がわいているんだ。数日前から、基地近くの温泉をお風呂に引いて利用しているんだよ。その気持ちのいいこと。将来、イオは、乳頭や別府と並ぶような、温泉地になるかもしれないね。
 先日、基地の隣に、露天風呂をつくったんだ。そこは、木星をゆっくりながめながらお湯につかることができるから、お父さんたちのいこいの場なんだ。木星の大赤斑を目の前にしての温泉は最高だぞ。どうだ、うらやましいだろう。
 今、基地からは、ちょうど日の入りの頃に地球が見える。太陽の光を十分に浴びて、きれいに輝いているよ。月面に巨大太陽電池基地をつくり、地球のエネルギー問題を完全に解決してから、もう5年もたったんだね。化石燃料が使われなくなって、温暖化現象も少しずつ改善されてきただろう。豊富なエネルギーを利用した砂漠の緑化運動も進んでいるようだね。
 生活も豊かになったことだろう。インターネット中心の社会になって、こうやって紙に書いた手紙を受け取ることも珍しくなったんだろうね。家庭用炊事ロボットもだいぶ改良が進んでいるようだね。お母さんも新しいのを欲しがっていたよ。でも、うちはそんなにお金持ちじゃないから、しばらくがまんするようにいっておいたよ。
 ただ、いくら生活が豊かになっても、ものやエネルギーのむだづかいはいけないよ。お父さんたちは、宇宙開発の最先端にいるけど、ここでは、常に節約を考えている。そうしないと生きていけないんだ。「もったいない」という言葉を地球からなくしてはいけないよ。
 さて、お母さんからの手紙に書いてあったけど、ヒカルもお父さんと同じ宇宙開発の仕事をめざし始めたそうだね。お父さんはとってもうれしかったよ。でも、この仕事に就くためには、宇宙の一員としての「広い視野」がなければならないと思うんだ。
 宇宙開発は、決して地球だけのために行っているわけじゃない。地球も宇宙の中の一つの天体として、宇宙全体の発展をめざさなければならないんだよ。そのことを、しっかり勉強した上で、宇宙をめざしてほしいね。お父さんも応援しているよ。
 夏にはきっと帰れるから、そのときまた、いろいろ宇宙のことを語り合おう。お母さんとカオルのことも頼んだぞ。
敬具

 親愛なるヒカルへ
  二〇三五年五月十日
   宇宙開発木星調査団
   イオスペース調査隊長のお父さんより

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