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17年度開催結果


2005年 作文の部<中学生部門>入賞作品
宇宙航空研究開発機構理事長賞

「僕が作る未来」
丸岡町立丸岡中学校2年生  上坂 宣基
 
  僕は勉強より体を動かすことが好きな中学二年生です。名前はノブキといいます。いつもなら夕食が終わった時間はテレビゲームに夢中なのですが、今日はそうもしていられません。明日の理科のテストが気になるので少しだけ勉強することにしたのです。
 僕は夕食が終わると自分の部屋に戻りましたが、勉強する気にはなれずに机に向かうとラジオのスイッチを入れました。ラジオからは静かな音楽が流れてきました。
「どうして宇宙の勉強なんかしなくちゃいけないんだろう。宇宙なんて何万年も変わらない退屈な場所なのに。」
 僕がそうつぶやいた時です。電気スタンドから小さな光の粒があふれ、光は点滅を早めながらその明るさをだんだん強くしていくのでした。僕の頭の中はぐるぐる回り始めて何も考えることが出来ません。やがて光は人間の形に集まったかと思うと、光の中には男の人が立っていました。
「私の名前はタキオン。怖がることはない。君が秘密の合言葉で私を呼んだのだよ。さぁついておいで、君に宇宙の過去と現在、そして宇宙の未来を見せてあげよう。」
 気がつくと僕は、ずいぶん前から光の列車の中でタキオンと並んで座っているのでした。列車の窓からはアルコールランプよりももっと青い光が、ススキの野原に風が渡るように流れていきます。(僕はどうして列車に乗っているの)と聞こうとすると、(そうだ、僕たちは今、宇宙の誕生を見に出かけたのだ)と僕の心に喜びがわきあがるのでした。
「ノブキ、君には想像できるかい。全ての原因である宇宙が生まれたその時のことを。」
「僕は自分の目で見たことしか信じないよ。それに全ての原因なんて興味もないし。」
 でも僕は自分の言葉が終わらないうちに、その考えがうそであるのに気づいていました。僕は勉強が得意ではありませんが、数学や理科、体育や音楽、それに国語や社会、様々な勉強が、実は一つのことを学んでいるような気がして、ずっとその意味を知りたいと思っていたのです。
「宇宙は今から一五〇億年前に、ほんの小さなゆらぎから生まれたのだよ。ゆらぎはビッグバンと名付けられた大爆発を引き起こし、全ての物質の母となり、空間を作り、時間をも生み出したんだ。さぁごらんノブキ、たった今宇宙は生まれるよ。」
 すると、またたきの何億分の一の間にゆらぎが生まれたのでした。そしてゆらぎは、またたきの何万分の一の間に大爆発に変わり、強い光を放ったかと思うと、その光さえも吹き飛ばして広がっていくのでした。
 退屈だと思っていた宇宙が、こんなにも力強く誕生したことに僕の心は震えていましたが、自分の言ったことを恥ずかしく思った僕は平気なふりをしていました。
「次は君がいる時代の宇宙を見せてあげよう。」
 すると列車は、何もない空間に大きな弧を描いて僕たちの地球に向かうのでした。いく筋もの光の帯が列車の向こうに飛び去っていきます。それは長い時間のようであり、ほんの一瞬のようにも感じられました。
「ごらん、ここが君のいる宇宙時代。何が見えるのか自分の目で確かめてごらん。」
 そこに見えるものは争い、不平等、自然破壊。僕の心は暗くなりました。それでもよく目をこらしてみると、愛する気持ち、不平等をなくそうとする気持ち、自然を大切にする気持ちが見えてきました。僕は自分の心に明かりがついたように胸が熱くなりました。
「どうして宇宙を学ぶことに意味があるのかもう君は知っているはずだよ。ノブキ、今まで地球にはいくつもの文明が生まれ、そして滅んでいったことを君は知っているよね。」
 僕には少し難しい話でしたが、自然を大切にする意味や、平和に暮らすことの大切さを心の中で考えてみました。
「宇宙を知ることは文明を知ることなんだ。そして文明を知ることは、人はどこから来て、なぜ自分がここにいるのか知ることにつながっているんだ。ノブキ、謙虚に宇宙を学ぶときに、人間は何を目指すべきかさえも知ることが出来るのだよ。さぁ、君とはここでお別れだ。今の気持ちを忘れずに君が未来の宇宙を作っていくんだ。」
「行かないでおくれタキオン。聞きたいことがあるんだ、知りたいこともたくさんあるんだ。」
 辺りが青白くボウッとけむったかと思うと、僕にはもう何もわからなくなりました。
 気がつくと、僕は自分の部屋で机に向かっていました。ラジオからはさっきの静かな音楽が流れています。夢を見ていたのでしょうか。いいえ夢ではありません。僕の心にはこんなにも強く未来を思う心があるのですから。僕はラジオを消すと、理科の教科書を静かに開きました。

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