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17年度開催結果


2005年 作文の部<小学生部門>入賞作品
(財)日本宇宙フォーラム理事長賞

「チョウが住む星」
丸岡町立長畝小学校5年生  上坂 賢司
 
 チョウのじゅ命はとても短い。ひらひらと美しく飛ぶ期間はほんのわずかで、時期が過ぎればいなくなってしまう。もしチョウを見かけたら、それはすごく幸運なことだ。
  ぼくのおじいさんが子供のころには、地球にもたくさんのチョウが生きていたという。おじいさんはチョウをつかまえて観察したり、標本を作ったりしたそうだ。
  西れき二二〇〇年。地球の自然は何度かのピンチを切りぬけ、人間は美しい自然を取りもどすことができた。森には動物や虫があふれ、川では子供たちが魚をつかまえる声が聞こえる。しかし森にも野原にもチョウを見つけることはできない。チョウは地球のかんきょうを受け入れることができずに、ぜつめつしてしまったのだ。花畑をぬうように飛ぶチョウも、大群を作って海を渡るチョウも、今はもう写真の中にしかいない。でもぼくには夢がある。科学技術が進めば、おじいさんが残してくれた標本からクローンのチョウを作れるかも知れない。どうしてもぼくはチョウを見てみたい、そしてチョウが飛ぶ自然の中で暮らしていきたい。ぼくの夢は大人になっても決して変わることはなかった。
  そして今日はぼくの四十歳の誕生日。今日は最高のプレゼントを自分に贈る日だ。それは夢をかなえるための始まりの一歩。――ぼくは小わく星を買ったのだ!!――チョウをよみがえらせるために星を買い取り、星全体をチョウの楽園にするという計画を実行にうつしたのだ。ワープ航法が発明され距離という考えがなくなってからは、平和目的のためなら星を買うことができる。ぼくは二十年分の給料を貯めて小わく星をとうとう買うことができた。地球の友達や宇宙人の友達からお祝いのメールが届いた。
「ケンジ誕生日おめでとう。いよいよ計画が始まるのだな。助けが必要な時はいつでもよんでくれ。」
「○#~◎▽→♪±、☆◇~◎♭↑#←↑。」(地球の言葉に訳すると『ケンジもなかなかやるなぁ。期待して待っているぜ』)
  ぼくはチョウがよみがえる願いをこめて、星にKIBOUという名前をつけた。自家用宇宙船から見えるKIBOUは、今は赤土と岩のかたまりにしか見えない。でもぼくの心には地球に負けないぐらい青く美しい星にうつっている。さあ、これからが本番だ。空気を作り、水を作り、土を作るんだ。そして草を植え、森を作り、チョウをよみがえらせよう。どんなに大変でも決してくじけるものか。
  まず第一段階は大気と水を作ることだ。大気は火星から持ってきたドライアイスを太陽熱でとかせば、たちまち二酸化炭素が星を包むはずだ。二酸化炭素に包まれれば気温はぐんぐん上がり、KIBOUの中にある氷が水になって流れ出すにちがいない。ぼくはきん張しながら、ドライアイスロケットのスイッチを入れた。「ズゴゴゴゴーン」ロケットはあたりを強くふるわせながら、あっという間に見えなくなった。そしてたちまちドライアイスの流星がふり始め、ドライアイスは地面に落ちたかと思うと、煙を上げて見えなくなる。「よし、これで第一段階は成功だ。」ぼくは安心して大きなため息をついた。でも何だか様子がおかしい。どうしたのだろう。二酸化炭素のこさを知らせるメーターが少しも変わっていない。失敗したのか? ぼくの頭はフル回転で働いた。(そうだ重力だ。星が小さすぎて、この星の重力では二酸化炭素を引きとめておくことができないのだ)失敗の原因に気づいたぼくは、KIBOUの中心に重い金属を入れて、重力を強くする方法で問題を解決することができた。今、KIBOUは二酸化炭素の衣をまとい、豊かな水に満たされ絵はがきのような美しさをたもっている。
  次は土を作り、植物を育てよう。この段階では種まきロケットといん石ミミズとが使われる。種まきロケットに積みこまれる種は生育が早く、一週間で成長した植物になり、二酸化炭素を酸素に変えながら一ヵ月後には大量の種を残す。子孫を残した親は子供たちの肥料になり、さらに成長を早めてくれる。そしていん石ミミズは石や土を食べて消化し、最後には栄養のあるフンをしてくれる。
  命はくさりのようにつながってKIBOUをおおい、赤い土は黒い土に、岩山は緑の丘に変わり始めた。ぼくは高台に登って平地を見回した。水平線につながるまで森、丘、川、湖、どこまでも美しい景色が続いている。これならチョウをよみがえらせることができる。ぼくはうれしくなって大きくうなずいた。
  気がつけば、ぼくがKIBOUに降りて五年がたっている。計画は半分が終ったばかりで、やるべきことはまだまだたくさんある。でもぼくは毎日が楽しく幸せだ。
  目を上げると、いま水平線から地球が昇り始めた。さぁ今日も一日がんばろう。


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