「一般財団法人日本宇宙フォーラム」トップページへもどる 「宇宙の日」ホームページへ戻る
「宇宙の日」ホームページ

 

16年度開催結果


2004年 作文の部<中学生部門>入賞作品
(財)日本宇宙少年団理事長賞

「フェスティバルが始まる」
丸岡町立丸岡中学校1年生  佐上坂宣基
 
  どんな大事件だって最初は小さな事から始まるものだ。それは一通の音声Eメールから始まった。
 「タスケテクダサイ。ホントウワ、タタカイタクアリマセン……」
宇宙翻訳機から流れる音声は、それだけを言い残すと後は無音状態。(タスケテクダサイ? 助けるといってもいったい誰を助ければいいんだ)僕の仕事は宇宙通信管制官。いたずらメールならずいぶん見てきたつもりだ。飼い犬が猫を産んだとか土星の輪が外れて木星に衝突したとか、今では普通のいたずらメールでは驚きもしない。でもこのEメールはいつもとは違う雰囲気。発信元を見るとウミリオン星団第七惑星ウミリオン。嫌な予感。ウミリオン星団は太陽系からそう遠くない距離だが、うわさによると惑星ウミリオンの住人サメダ星人とタコル星人が、お互いの姿のことで言い争っているらしい。サメダ星人は平均身長二メートル九センチ、直立歩行型の硬骨タイプの生命体で、何でも噛み砕けるあごが自慢の乱暴者だ。一方のタコル星人の生態はよく知られておらず、見かけの身長は三十センチぐらいだが、体がぶよぶよしていて可変身長型の生命体だといわれている。性格は恥ずかしがりやで、普段はツボのような家に住んでいると聞く。僕あての音声Eメールはタコル星人から送られたものだった。(とうとう本当の戦争になるのかも知れない)僕は予感が外れることを期待しながら、宇宙平和交流団へ向けてEメールの転送キーを押した。
 それから一週間。タコル星人からのEメールも忘れかけていたときに、僕は宇宙平和交流団からの緊急の呼び出しを受けた。宇宙平和交流団では、僕が転送したEメールをめぐり大論争が起きていたのだ。
「これだけの事実では何も判断できない。」とする慎重な意見。「このままでは戦争になる可能性がある。早い段階で仲直りを勧めるべきだ。」とする平和論者。「ほかの星のことに口を出すことは、星間条約の違反だ。」と譲らない反対派。交流団は一週間の大論争を続けたが結論を出せず、第一受信者である僕に意見を求めてきたのだ。
 僕は人前で話すのが一番の苦手。名前を呼ばれてステージに登ったときには、僕は緊張のかたまり状態になっていた。でも宇宙の平和に関わる大切なことだ、きちんと自分の意見を述べなければ。僕はしっかり前を見つめてゆっくりと話し出した。
 「私たちもかつて、体の色や生まれた場所によって人を差別していました。そして差別は争いにつながり、争いは憎しみしか生まないことを私たちは歴史から学びました。今、この間違いを繰り返してはなりません。意見の違いや形の違いが悪いのではなく、お互いを理解しようとしないことが問題なのです。そこで僕は提案します。もっとお互いを理解するために、宇宙の仲間を招いてのフェスティバルの開催を僕は要求します。」
 フェスティバル。それは昔から受け継がれる人類の知恵。フェスティバル。それは人類の最も平和的な問題の解決方法。食べて話せば誰だって友達になれる。歌って踊れば、意見が違っても認め合うことが出来る。きっとうまくいく。きっとわかり合える。僕は自分の心が震えているのに気がついた。会場はしばらくは水を打ったような静けさ。震える僕の心。そして次の瞬間には会場が壊れるほどの拍手の嵐。
 「フェスティバル、フェスティバル。フェスティバルを開催しよう。仲間を呼んで、家族を呼んで。」
 「フェスティバル、フェスティバル。フェスティバルを開催しよう。けんかをしてても、仲良くしてても。」
 興奮につつまれた会場では、いつのまにかフェスティバルコールの大合唱になっていた。みんなの顔が期待に輝き、みんなの声が喜びでこだまする。そして会議は大成功のうちに終わり、地球暦の三年後に宇宙フェスティバルを木星で開催することが正式決定されたのだった。
 それからの三年間はみんなの心が一つになって、地球が一回り小さくなった三年間だった。誰もがフェスティバルを心待ちにしている。誰もが自分の出来ることでフェスティバルを盛り上げようとがんばった。(僕にはフェスティバル実行委員として開会のスピーチが任されている!)そして僕たちの三年間が光のように過ぎ去り、いよいよ宇宙フェスティバルが始まろうとしている。
 今、僕はフェスティバル会場のステージで出番を待っている。客席には平和と交流を求めるいろんな星からの仲間が見える。この一歩を踏み出せば、いよいよフェスティバルが始まるのだ。ファンファーレが鳴り響く。ライトで照らし出されるステージ。大きな拍手。さあ、フェスティバルの始まりだ。


もどる