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16年度開催結果


2004年 作文の部<中学生部門>入賞作品
日本科学未来館館長賞

「コスモフェスタinビーナス」
山形大学教育学部附属中学校3年生  植松未知
 
  「お待ちかね!星自慢大会の始まりです。」
 わぁーと歓声が沸いた。トップバッターは、開催星の金星のプリンセス、コレット。かわいい金色の耳をさげておじぎをした。
 「コスモフェスタinビーナスへようこそ。金星は暗い宇宙の中の真珠。輝く星です。」
コレットは微笑みながら続けた。
 「かつて生命が存在しなかったこの星が生まれ変わったのは、百万年前。小惑星衝突の時、双子星の地球が私達の生命誕生を助けてくださいました。おかげで今ではビーナスの名に恥じない美しい星となりました。」
 惑星衝突の時、地球から金星にマゼラン隊が送られた。衝突は新しい可能性を開く。ダイアナ谷の地中深くに原始大気とストラトマイトなどのラン藻類が移植され、大量の二酸化炭素を消費するコロニーへと進化した。金星で進化したストラトマイトは、今、地球で温暖化を食い止めている。
 「巨大なリングを皆様にお見せしたい。直径約28万km。氷の粒が集まった虹の橋のパノラマは、宇宙一きれいですぞ。」
 大声で言いながら、土星のカッシーニは大きなあくびをした。土星では一日が10時間。金星では一日が6000時間。時差ボケも無理はない。
 オリンポスという耳のとがった小さな老人がゆっくりステージに上がり、話し始めた。
 「赤く輝く火星のオリンポス火山をご存知か。火星にはたくさんの山と谷がある。……穏やかな美しい星じゃ。」
 控えめな自慢だが、僕にはオリンポスがいかに火星を愛しているかが伝わってきた。
 カロリスはちょっとイヌイットに似てる。
 「水星の氷ほどうまいものはないぞ。」
 「水星は太陽に一番近い惑星だ。大気がないから昼は430度、夜は-170度。わしは極地の永久影に住んでいる。直射日光が当たらないから気温も安定しておる。氷は惑星誕生の億年氷じゃ。かき氷にして食べると体の芯までよく冷える。なぁ、お嬢さん。」
 コレットは真っ青になった。そうだよな。ここは灼熱だもの。寒さは苦手だろうな。僕はくすくす笑った。コレットは怒ってそっぽを向いた。
 星自慢は続いている。僕はどきどきした。地球の何を自慢したらいいだろう? 平和? ううん。今、地球では第三次世界大戦が始まろうとしている。温暖化は金星のおかげで防げたが、人間の争いは防げない……。
 「太陽系の第三惑星地球です。地球は生命の星。豊富な水がたくさんの生物を育んでいます。地球の木々の緑を皆様に見せたいです。さまざまな姿の生物を見せたいです。地球ではいろいろな姿の生物がお互いに助け合いながら共存しているのです。」
 そう話す僕の目に涙が浮かんだ。そうだ。地球ではさまざまな姿の生物が助け合って生きているんだ。同じ姿をしている人間が戦争をしているなんておかしいじゃないか。
 言い終わった途端、たくさんの拍手に包まれた。ほっぺたがほてってしょうがない。青い地球が本当に恋しくなった。空が見たい。
 エレベーターでぐんぐん上に上がる。どんどん気温も上がってきた。温度計を見ると、450度。窓の外は激しい硫酸の雨だ。目の前を金色の稲妻が走り、雷が鳴った。そう言えば一分間に20回の稲妻って言っていたっけ。
 窓から空を眺める。金星の地平線が金色に光る。金星は地球の知恵を結集して生きた星になった。地下の世界には緑が大きく繁っている。緑はこれからどんどん育ち、更に新しい生命が生まれていくだろう。二酸化炭素がたくさんの酸素を生む。奇跡の循環だ。
 遠くに地球が澄んだ青で輝いている。金星が真珠なら、地球はサファイアだ。あの美しさを太陽系のみんなに伝えたいと思った。
 「金星に命を育てようとしたことが、地球の温暖化を解決したのだから、不思議ね。」
 振り返るとコレットがいた。他人への思いやりが地球を救った。戦争も思いやりで防がなければならないんだ。僕は大きくうなずいた。
 パーティー会場では司会の声が響いている。
 「コスモフェスタの締めくくりは……。コスモ一周旅行です!」
 コレットが再びステージに上がる。
 「皆様をコスモ一周旅行にご招待いたします。コースは惑星を誕生順に一周します。エネルギーの大きい進化の進んだ太陽や木星から、隕石衝突のこだまが聞こえてきそうな小さな生まれたての星まで、太陽系の一生をみんなで見に行きましょう。この宇宙旅行で、太陽系が一つの家族だと実感できるはずです。もしかするとこの旅行の間に新しい惑星が発見できるかも。私達の星をつなぐレインボーラインが今年つながりました。星は自由に行き来できます。さぁ、みなさん、でかけましょう!」
 夢のスペースシャトルに乗り込む。
 パァーン。硫酸の降る空に大きな花火が上がった。出発だ!


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