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16年度開催結果


2004年 作文の部<中学生部門>入賞作品
(財)日本宇宙フォーラム理事長賞

「宇宙の夏が始まる前に」
岡山大学教育学部附属中学校3年生  藤原衣通子
 
  夜。空は星でいっぱいだ。明りを消すと蛍が僕の部屋に入ってきた。淡い光がいっぱいに広がった。
早く小川に返してやろう。そうして空に放とうとしたその時!
 突然、空は真昼のように眩しくなった。蛍は逃げる気配を見せない。次の瞬間、空を見上げた僕の目にはとんでもないものが映っていた。
 何とそこには、キラキラと輝く白鳥が羽を広げていたんだ。ゆっくりとクチバシを開ける。そして、蛍を飲み込んでしまった。でも蛍の光は消えずに輝き続け白鳥の尾でピタリと止まった。
 「デネブ……」そう言って、瞬きすれば僕は白鳥の背に乗って空へ向かっていた。地球は僕の後ろで青い光りを放っている。
 「どうして、ここにいるんだろう。」
 「そんなこと、わかってるわ。」今まで鳴きもしなかった白鳥が突然話し出した。
 「だってあなたは、パスポートを持っていたもの。」
 「パスポートって蛍のことかい?」
白鳥はうなづき、一本道を作るように上を目指す。
 「あなたには地球の代表者として、天の川祭りの準備を手伝ってもらうの。」
 「天の川祭り?」
 「夏の宇宙最大で最高のお祭りよ。それよりデブリって知ってる?」
 「宇宙のゴミって聞いたことがあるよ。地球人が捨てているんでしょう?」  「そう。最近デブリが次々と増えて、お祭りを開催する土星は大変なのよ。」
白鳥は悲しい顔をした。宇宙にはそのお祭りを毎年楽しみにしている人達がたくさんいるんだ。僕は地球の代表だ。少しでも力になりたい。
 「私達とデブリの回収をしてほしいの。」
 「もちろん! お祭りを今年も開催しよう。」
白鳥は微笑んで、さっきよりも速く速く僕を導いた。
 かつて来たことのない地、土星に降りた。輪は氷で出来ていて辺りはひんやりとしていた。その輪には宇宙船、燃料タンクなどが所々に挟まっている。それらにより溶け出した氷もあるようだ。
 「天の川祭りまであと七日。たくさんの人達が協力してくれるわ。」そう言って白鳥は次の代表者を導くため飛び去った。輪に近付くと地球人と似ている顔の人がやって来た。
 「この靴を履けば氷の上でも滑らないよ。」
 そう言って、靴を渡してくれた。
 「僕は、海王星から来たパル。君は地球人だろう?」
 「うん、和也っていうんだ。僕はこれから何をすればいいの?」
 「これからみんなで大きな宇宙船を運ぶんだ。手伝いに行かない?」
 パルの手足は三つで、肌は海王星の水色だ。
 宇宙人達が集合していた。肌の色、手や指の数。地球人とこんなに違う人達がいることに驚いた。でも、そんなこと広い宇宙で気にならないんだ。それが嬉しくて仕方なかった。
 すぐに駆けつけてみんなの手伝いをした。氷を崩さないように必死でやり終えた後は汗ビッショリだった。白鳥や隕石、彗星に乗って来る宇宙人のみんな。出遭っては仲良くなり助け合い宇宙を知ってゆく。土星は少しずつきれいになってゆく。
 「人も集まってデブリも残りわずかだね。」
 パルは大きくうなづいた。
 「穴の部分も火星の氷で埋まったしね。」
 三日目の夜、リーダーになって指示をしてくれているポポさんが叫んだ。
 「みんな! 最後のデブリだぞー!!」
 パルも僕も満面の笑顔だ。すぐにシャベルで回りの氷を削り出す。声を掛け合いデブリを持ち上げる。
今までの全てが終わり、今からが始まる瞬間だった。
「やったー!!」
 喜びが宇宙に広がる。土星の輪は美しいリングになった。ここにはお店が並び、たくさんの人達が集まるんだ。
 「ポポさんが集合だって。」パルが呼んだ。
 ポポさんは笑顔でこう言った。
 「花火をプレゼントしたいんだ。」
 お祭りに先駆けての花火。空は深い青と黒を上手く使い花火を待っている。ポポさんの合図で金色の花火が空に広がり天の川が流れる。あの白鳥も楽しそうに他の星座と飛んでいる。
 「地球では花火が上がると『たまやー』って言うんだ。」
 「たまやー!」パルは嬉しそうに叫んだ。
 みんなの笑顔で宇宙の夏は始まった。


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