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15年度開催結果


2003年 作文の部<中学生部門>入賞作品
宇宙開発事業団理事長賞

「協力が必要条件」
奈良市立伏見中学校1年生  猪川 千晶
 
  「ようこそ、火星へ」と書かれた銀色に光る入星審査所が見える。火星に到着したようだ。この前来た時よりも緑のドームが広がっている。人工の川の水面が太陽の光にキラキラと輝いている。のどかできれいな景色だ。
 百年前、火星は宇宙で一番注目されている星だった。細胞を活性化させる物質C15が、火星にだけ存在することが、無人探査機によって分かったからだ。火星に一番近い星に住む地球人は、他の星には負けられないと、研究を進めていた。私はそんな時に打ち上げられた宇宙船の乗員だった。私達の船は火星に一番に着いた。やったあ、私が一番に火星を歩いたぞ。私達は地球連邦の旗を立て、冷たい砂漠のような火星で基地の建設を始めたが、砂嵐がひどく作業は困難を極めた。翌日、AM星の宇宙船が着陸した。おりてきた人を見て驚いた。私の友達のメダだった。メダは「チーコも来てたん? やっぱ目当てはC15? 人類の宝やねー。」と言った。「そうだね。」と答えながら私は一番にこだわっていたのが少し恥ずかしくなった。同時通訳装置のおかげで私達は自由に話ができた。ドームがうまく作れなくて困っていると言ったら、メダは「うちらドーム作るの得意やけど、酸素作りは苦手やねん。」と言った。私達は酸素を作るのが得意だから、協力して作業することにした。作業は大変効率よく進み、五日で地球とAM星の合同仮設基地が完成した。ほっとしている時に、ボロボロの旧式宇宙船が着陸した。「火星は今から俺達ギザ星人の物だ。お前達はとっとと帰れ。」とギザ星人は船から降りるなり言い捨て、大きな機械を置くと、水を作り始めた。乾いた地面に細い川ができた。なんて嫌な奴等だろうと思ったが、無視して私達は作業を続けた。酸素を作るのに必要な水が不足していたので、私達はギザ星人の作った水をこっそり取って使った。ところが何回目かに見つかってしまった。ギザ星人は怒って石を投げてきた。私達も石を投げ返した。石を投げあっているうちに、水製造機に石が当たってしまった。当たり所が悪かったようで、機械が大きく揺れ始めると、水がドードー噴き出し始めた。大洪水になった。それと同時に、オリンパス山が噴火し地震もおきた。ギザ星人は自分達の船へとびこんだ。私達も自分達の船へ逃げこもうとしたが、なんと地震で倒れたドームの下敷きになっていた。メダが叫んだ。「どないしよう。死んでまう。」死ぬよりましだ。私達はあの憎たらしいギザ星人の船に逃げこむことにした。何故か船の入口が開いていた。船の中に入って驚いた。ギザ星人が全員倒れていた。酸素不足が原因のようだ。船も穴だらけだ。私達は慌ててギザ星人の手当てをした。意識を取り戻したギザ星人は「あの機械を爆破しない限り水は止まらない。あれを爆破できるのは俺達だけだ。船を頼んだぞ。」そう言うと機械の爆破にむかった。死ぬかもしれないのに。私達が彼等をおいて逃げてしまうかもしれないのに。本当はあいつらいい奴なのかも……。穴の補修、船の操縦、酸素作り、爆破に成功したギザ星人の救出、けが人の手当て等、私達は自分のできることを必死にし、助け合った。洪水と噴火がやっと治まった時は皆ヘトヘトだった。船から出て火星を見た時、メダがつぶやいた。「火星はケンカ嫌いなんや。」「それに誰の物にもなりたくないみたい。」私も言った。地球連邦の旗がズタズタになって落ちていた。ギザ星のもAM星のも同じだった。
「俺達どうしても火星に移住したかったんだ。」
ギザ星人が言った。なんだ。C15を一人占めするつもりじゃなかったのか。ギザ星の太陽の寿命が近い影響で、ギザ星はあと数年で人が住めなくなるらしい。「うちんとこ水足りへんねん。きー来へん?」メダがギザ星人に言った。「火星は皆の物ということにして、一緒にC15の研究もしようよ。」私も言った。「いいのか?」「もちろん」「当たり前やん。」私達は手を固く握り合って、仲間になった。水を作れるギザ星人は移住先のAM星人に大歓迎された。
 火星では着々と研究開発が進んでいった。AM星人がドームを、ギザ星人が水を、地球人が酸素を作った。すぐに、手が十本あるとても器用なミダ星人と優秀な医者の昴星人も仲間に加わった。色々な星から様々な技術を持つ人達が次々とやって来た。厳しい環境の火星での研究開発には協力が必要条件だ。出身星や年齢を問わず、真面目なら誰でも(悪人は除く)歓迎された。入星審査所で、宇宙一精密で正確な機械を作れるM-II星人特製の悪意発見装置を使って、悪意を持つ人をチェックし、入星できないようにしたので、安心して共同の研究開発ができ、科学はどんどん進歩した。異常細胞を正常な状態に戻す薬もC15を使って開発された。おかげで病気が減り、人の寿命もずっと伸びた。今128歳の私は現役の宇宙飛行士で、宇宙を飛び回っている。火星の科学が人類を幸せにしていると感じながら。


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