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15年度開催結果


2003年 作文の部<中学生部門>入賞作品
日本科学未来館館長賞

「火星旅行で学んだこと」
綾部市立綾部中学校2年生  野島 亜悠
 
  「それにしても、僕達の発見に随分と時間がかかりましたね。」と火星人のダズが言った。「全くです。昔から目撃情報は、沢山あったのですが……。」私は、ダズの意見に同感して言った。「僕達は、君達地球人に気づいて欲しくて、しょっちゅう地球の上空を飛び回ったものですよ。そのたび、今度こそ友達になれるか、と期待していました。」「ええ、UFOに遭遇したというビデオや写真だけで、地球では特番のTV番組が出来たんですよ。」と私が言うと、「それはすごい!!」と一同からどっと笑い声が起った。
 本当にあの頃は、異星人についてわからなかった。今こうして、火星と友好都市関係を結び、火星人と食事会をしている。火星人と知り合って、今や宇宙ブーム一色だ。を飲みながら、ダズが言った。「我々は、昔から地球を見ていますが、地球もかなりくたびれてきましたね。」「ええ……。」私はうなずき、遠くに見える地球をながめながら、こう続けた。「私達は、あの美しい星をなんとしても守りたいのです。」ダズは言った。「よくわかります。地球人は、我々の良き友人です。お役に立てることがあれば、お話しましょう。」
 私とダズは火星の渓谷に目をやった。「太古の昔から、変わりません。」とダズは言った。「いいですね。うらやましい限りです。」と私が言うと、ダズはゆっくりとこう言った。「変わらない、変えないということにも、努力は要るものです。」
 会食を終え、私はダズと別れた。火星ステーションの、自分の部屋に入る。ダズの言葉が、耳に残っている。「変えない努力……。」私はつぶやいて、はっとした。そうだ、私達地球人は、進むことばっかりに努力してきたのだ。私達の自分勝手な思い込みの進歩に、地球はすっかり疲れてしまったではないか。
 現状維持は、私達地球人の発想にはなかった、目からウロコの考え方だと思った。自然環境や絶滅生物など、私達はなくしてしまってから、いつもその大切さに気づいた。悪いことに、気づいていながらも、なかなか自分達の生活を改めることが、出来ずにいる。
 かつて、私達は地球を宇宙一素晴しい星だと、信じて疑わなかった。今、多くの地球人は、地球に対し負い目を感じている。豊かで美しい地球を、自分達の手で傷つけてしまったことを認め、くやんでいるからだ。もうこれ以上、地球を傷つけられない。
 私は火星ステーションの中にある、中央ホールに行った。『ようこそ、火星へ!』と、二千の宇宙語でスクリーンに案内がされている。ここは、あらゆる惑星から訪れている異星人達で、にぎわっていた。案内を見ていると、『火星の信条』という紹介に目がとまった。『争いをせず、話し合いで解決します。お互いを尊重します。ちらかしたら自分で片付けます。全ての生物を愛します。欲ばらず、分け合います。』
 誰にでも理解できる、簡単な言葉で書いてある。私は、このシンプルな信条を、何度も心の中で反すうした。幼稚園で習うようなモラルだ。たったこれだけのことを、きちんと守り、受け継いできた火星は、太古の昔から環境を変えず、戦争も起きていない。私達は幼稚園の時に教えてもらったことを、いつから、どうして出来なくなってしまったのだろう。
 私は、地球が恋しくなり、展望フロアーへ行った。そこから見える青い地球は、それでもとても美しかった。その美しさでもって、地球の人々に訴えているかのように感じられた。地球を見つめる私の横で、急に声がした。
 「きれいな星だね。」声の主は、火星人の子どもだった。五歳くらいだろうか。子どもは続けた。「ぼく、地球に行ったことがあるよ。驚いちゃった。だって、地球は宇宙から見てもきれいだし、地球におりても、とってもきれいでしょ。外からも、中にいても両方きれいって、地球が一番だよね。」
 「……ほんとね!どうもありがとう!」
 私は、思わず子どもにお礼を言っていた。火星人の子どもが教えてくれた、地球の魅力。地球は、本当に沢山の素晴しさのかたまりだ。地球の素晴しさが再発見出来、地球への愛しさがつのった、今回の火星旅行は、とても実りのあるものになった。
 大切なものを失ってから、後悔するなんて絶対いやだ。地球の姿を変えてしまわないように、私達の生活のあり方を変えよう。このことは地球に帰って、すぐに学校や地域に呼びかけたい。火星から学んだことを、多くの人に伝えよう。そして、今度は、私達が元気になった地球で、いろんな異星人をむかえよう。争いのない、平和で美しい地球で、ほこらしく、堂々とした気持ちでダズに言うのだ。
「私の自慢の星、地球へようこそ!」


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