「一般財団法人日本宇宙フォーラム」トップページへもどる 「宇宙の日」ホームページへ戻る
「宇宙の日」ホームページ

 

15年度開催結果


2003年 作文の部<中学生部門>入賞作品
(財)日本宇宙フォーラム理事長賞

「地球人対策会議」
高根沢町立北高根沢中学校3年生  川俣 歩
 
  「臨時ニュースを申し上げます。地球人対策委員会より、各省庁の大臣の皆様に惑星会議の招集が発令されました。大臣の皆様は大至急、火星議事堂にお集まり下さい。くり返します……。」
 「我々の得た情報によりますと、まもなく地球が我が惑星に大接近します。頭脳明晰で経済観念にたけた地球人が、これを見過ごすはずがありません。我々地球人対策委員会は、この状況を踏まえて、皆様方の率直なご意見をお聞かせ願いたいと、思っております。」
 「地球人は誠に愚かな生き物で、全宇宙の中で自分たちより頭の良い生物は存在しないと思っている。我々の住む火星にも近年、相次いで探査機を送り込んで来ては、地表の温度、湿度、その他様々な気象の変化、そして、石ころの成分までも研究しているらしい。それらもすべて、我が火星が太陽系惑星の中で将来移住可能な唯一の惑星と判断したからに他ならないのだ。」
 「環境大臣、それは少し考え過ぎではないでしょうか? 確かに我が星は、地球のすぐ外側を回る、地球に最もよく似た環境惑星でありますが、地球人の大好きな水や緑がありません。そんな、荒れ果てた石ころだらけの星に興味など持たないのではないでしょうか。」
 「教育大臣、あなたはいつも、物事を安易に考える性質で困りますね。これまで我々が得た地球人のデータを、あなたは甘く見過ぎています。彼らは、赤ちゃんのおむつに使う高分子吸収ポリマーという物質に目をつけ、その莫大な吸水性を利用し、砂漠を緑に変える、夢のような技術を持っています。地球の半分の大きさしかないこの星を、水と緑の豊かな星にすることなど、たやすいことかもしれませんよ。」
 「国土大臣、あなたはいつからそんなに地球人の肩を持つようになったのですか? 確かに地球人の持つ、頭脳や技術には、驚くものがあります。だからこそ、我が星の頭脳優秀者を選び抜いて、地球の先進国と呼ばれる国に、スパイとして送り込んできたのです。
 皆さん、先ほどから、我々の星が荒れ果てた石ころだらけの無味乾燥地帯だと言っておられるが、我々が今いる火星議事堂がどこにあるかお忘れではないでしょうね。」
 「建設大臣のおっしゃる通りですね。地球人が、何度火星探査機を送り込んできても、この星に地球の先進国以上の地底都市が存在し、そこで我々が地球人以上の社会を営んでいることに気付くことはないでしょう。
 我々が地下に、この巨大都市を造り上げたのにもかかわらず、地表には全く手を加えず、無味乾燥地帯のまま放置しておくのには理由があります。
 初めに環境大臣が、地球人は誠に愚かな生き物だとおっしゃいましたが、正にその通りです。戦争という名目で、同じ星に住む仲間の命を奪い、築いてきた街や遺産を破壊し、核兵器なるもので、神様がお作りになった惑星自体をも傷付けています。そんな、私利私欲のために征服を続ける地球人に、我々の存在を知られては困るのです。火星は、石ころだらけの、つまらない星だと思わせておくためのカモフラージュなのです。」
 「さすが文化大臣は、いつも冷静でいらっしゃる。さて、これまで皆さんからたくさんの意見をお聞かせ頂きましたが、あまり地球人を歓迎するムードではありませんね。かといって、争うという無意味なことなど、絶対にしたくはありません。
 どうでしょう皆さん、地上への出入口をすべて閉鎖し、様子を見ることにしてはいかがでしょう。いつ出るか分からないおばけに、恐れをなすことは無いでしょう。」
 「地球人から見たら、我々がおばけだったりして。おっとこれは冗談。とりあえず賛成。」
 「賛成。」
 今から四十二年前、一時間四十八分をかけて地球を一周、人類初の宇宙飛行に成功した、現ロシアの宇宙飛行士ガガーリンの言った、「地球は青かった」という言葉はあまりにも有名である。

 二〇〇三年八月二十七日。この日火星が地球に大接近するという。そして、二二八七年まで、これを上回る接近は起こらないと言われている。この接近の前後一、二ヶ月間は、火星の光が非常に強くなると言われている。
 地球から肉眼で見える、この赤い色彩の星を、昔の人々は、血を連想させ、神話の戦争の神様の名前から、マルスという称号を与えた。そんな惑星の地底都市で、まだ見ぬエイリアンたちが、こんな会議を開いているのかもしれない。


もどる