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15年度開催結果


2003年 作文の部<小学生部門>入賞作品
(財)日本宇宙少年団理事長賞

「『西遊記』体験ツアーへようこそ!」
札幌市立富丘小学校5年生  菅原 紗也香
 
  うわぁ、迷い子になっちゃいそう。さすが火星最大のマリネリス中央駅は、銀河系各地からやってきた旅行者でいっぱいだ。ええと、オリンポスリゾート行きは96番線か……。初めてのひとり旅にワクワク・ドキドキしながら、わたしはホームへ急いだ。
 銀河系の小学生のあいだでは、いま火星旅行がちょっとしたブームになっている。というのは、人気の冒険ファンタジー『西遊記』の世界が体験できるからだ。千年以上も昔に地球で書かれたこの物語は、宇宙共通語にほん訳されると、あっというまに大ベストセラー! みんな夢中になったんだもの、地球人のわたしは、ちょっと鼻が高いゾ。
 『西遊記』の舞台といえば、やっぱり砂ばくが思いうかぶ。砂ばくをめざして、地球にも異星人がわんさか訪れた。ところが、地球では三百年前から始まった"砂ばく緑化プロジェクト"が成功して、いまではどこも豊かな森林に生まれ変わっている。異星人は、ガッカリ……。でも地球環境にとっては、これってすばらしいことなんだよね。  そこで注目されたのが、おとなりの星・火星だった。テラフォーミングされたマリネリス峡谷は、銀河系でも五本の指に入るくらいの大都市になったけれど、まわりは太古の自然のままだ。赤茶けた大地とけわしい山々、ときどきおそってくる砂あらしも『西遊記』の冒険シーンにピッタリ。わたしも孫悟空(そんごくう)の気分を味わいたくて、こうして夏休みを利用してやってきた。
 96番線は、もうマーズライナー『KINTOUN()』が入っているらしくて、とてもにぎやかだ。でも、見たこともないような異星人ばっかりで、少し心細いなぁ。
「こんにちは。あなたもこのツアーに参加するの?」
 ふりむくと、地球人らしい女の子がニコニコ立っていた。
「ええ、地球からきたルリです。よろしくね。」
「もしかして、瑠璃(るり)色のルリ? わたしはラピス、火星生まれよ。わたしの名前は、おかあさんのふるさとの地球の色なの。」
 えっ、名前の由来が同じだなんて。まさかのぐうぜんに、わたしたちはうれしくなって思わず飛び上がってしまった。
 マーズライナー『KINTOUN』は、白いボールのような船室がいくつも集まっていて、ほんとうに雲みたい。ラピスとわたしも、船室のひとつに乗りこんだ。どうか楽しい旅になりますように……。
「ここ、あいてるぅ?」
 わたしの五人分はありそうな大きなおなかの異星人が顔をつきだした。あんまりこわそうだったので、わたしが返事をできないでいると、ラピスったら、 「どうぞ座って。なかまがふえたらうれしいわ。」だって。へいきなの?
 するともうひとり。こんどは三メートルくらいのノッポの異星人だ。わぁ、どうしよう。
 ふたりは、ケンタウルス座からきたアルとキシマで、なんと、わたしと同じ小学生だった。あんなにきんちょうしていたのに、学校やテレビの話ですぐにもり上がって、なかよくなった。見た目はちがっていても、みんな同じ"宇宙の子"だもんね。
 アルとキシマの『西遊記』の知識は、なみたいていじゃない。アルは物語に出てくる食べ物をみんな知っているし、キシマは、人気のヒーローが星によってちがうことを教えてくれた。わたしのお気に入りは孫悟空だけれど、牛魔王(ぎゅうまおう)が一番人気の星もあるんだって。
「それも、さ。」
 哲学者みたいなことをいうキシマは、なんだか沙悟浄(さごじょう)のイメージだ。そういえば、グルメのアルは猪八戒(ちょはっかい)に似ているかもしれないな。
 わたしたちを乗せた『KINTOUN』は、『西遊記』に登場しそうな火星の観光スポットをつぎつぎとまわった。カセイ谷ではロッククライミングに挑戦したし、ヘラス平原ではアイスホッケーの銀河リーグを観戦した。タルシス三山の『西遊記』にちなんだアトラクションは、スリル満点で、もう最高!
 目の前にオリンポス山がせまってきた。想像していたよりも、ずっと巨大。ふもとに広がるオリンポスリゾートに、さあ、到着だ。
 アルは、銀河料理のすべてをここで味わってみるそうだ。キシマは、太陽系の歴史を調べに博物館に向かった。ラピスとわたしは、お目あての温泉へ……。だって、ここのお湯はお肌にいいんだもん。
 オリンポス山の頂上が、夕焼けで青くそまっている。きれいだなぁ。
「ふたりの名前と同じ色だね。」
 ラピスと顔を見あわせて、わらった。
 火星で出会った新しい友だち――こんどは、わたしの星・地球で会おうね。みんなにすてきな地球の魅力を知ってほしいんだ。


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