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15年度開催結果


2003年 作文の部<小学生部門>入賞作品
宇宙開発事業団理事長賞

「変わらずに持ち続けてきた気持ち」
丸岡町立長畝小学校6年生  上坂 宣基
 
  「そりゃ絶対おいしいに決まってるさ、まじりっけのない水で作るラーメンは。」
 何も見えない宇宙船の窓に向かってひとりごとを言うなんて、僕は少しおかしいのかも知れない。
 地球れき2003年6月、火星の北極付近で発見された大量の氷。この発見は六万年ぶりに火星が大接近した時に見つけられ、人類の大きな希望になった。そしてこの希望を現実にするために、僕は第一回火星調査隊のメンバーとして宇宙船に乗り込んでいる。(でも本当のことを言うと、僕にとってこの発見は、みんなの感じた希望とは違った意味があった。火星には汚れていない氷がある、火星に行けば汚れていない水でラーメンが食べられる。『よし、僕は何としても火星に行くぞ!』ラーメン好きの僕は、その日以来、火星で食べるラーメンのことで頭がいっぱいになっていたのだ)
 現在は地球れき2033年。僕は四十二才。地球の環境は資源、公害、そして人口、どれをとっても逃げだしたくなるほど悪くなるばかり。三十年のあいだ、たしかに人間はいろんなことをして環境を元にもどそうとしてきた。世界中が環境を守るネットワークでつながれたし、たくさん木も植えられた。公害の少ない技術も開発されたし、少ない肥料で多く収穫できる作物もたくさんある。それでも地球の環境は少しも良くはならなかった。なぜだろう? 地球を救うためには、一人ひとりが自分の問題として環境を考えることが大切だと知っていても、「結局は仕方がないことだよ。」と言われたら、笑顔でうなずいてしまう弱さが人間にはあるからかもしれない。目の前にある得になることにはすぐ反応するのに、全体の将来のために行動することは、ぼんやりとしか考えられない、そんなにぶい心を人間は持っているからかも知れない。そうだとしても、だれも責めることは出来ないし、怒ることもできない。一方でどんどんコントロールを失っていく自然。そしてますますうろたえる人間。そんな地球を何とかしたくて、そんな人間をなんとかしたくて、僕は十二才の時に科学者になる道を選んだんだ。火星でラーメンが食べたくて科学者になった僕だけど、(地球の環境を何とかしたい)この気持ちだけは変わらずに持ち続けてきた。きっと地球のために何かができる、その願いが今かなえられ、僕は夢に見た宇宙船の中だ。火星移住回復計画。それは地球環境に耐え切れなくなった人類が、火星に移住するものだが、地球を見捨てるわけではない。それは地球を休ませる計画であり、地球を元にもどすのに、火星には大きな役割を持っていることを証明する実験もかねているのだ。
 火星は大気が薄くて地表の温度差が100度ぐらいある星だ。人間が移住するには大変厳しい星だ。遠くても、もっと地球に似た環境を探そうとする意見もあった。しかし生きるために一番大きな水の問題をどうするかで、地球と火星以外に、宇宙の奇せき「水」を見つけることは出来なかったのだ。そこで考え出されたのが移住回復計画だ。この計画は人や生き物を火星に移住させるだけでなく、命の源の地球を生き返らせ、地球をもう一度命のあふれる星にしようというものなのだ。そして計画のポイントもやはり「水」なのだ。計画は回復する力を失った地球の水に、火星の北極にある純粋な水を加えることで地球の水によみがえる力をあたえ、よみがえった水の力が、空気を、植物を、動物を、そして最後には、自分の力でバランスを保てる地球をとりもどそうとする計画なのだ。そしてそれだけではない、地球のよごれた水や空気やゴミを火星に運び、火星にあるドライアイスの力で、持ち込んだよごれたものを土や肥料に分解し、火星に畑を作ろうとする計画なのだ。実際の計画に入れば、いろんな調整や失敗があると思う。そして不完全であっても地球を愛そうとする今の気持ちを持ちつづければ、十年先、二十年先、あるいは百年先にきっと命のあふれる地球にもどすことが出来ると僕は強く信じている。
 (地球の環境を何とかしたい)この気持ちだけで、ぼくは今宇宙にいるんだなぁー。そう思いながら窓を見ると、いつのまにか窓にぽっかりと大きな地球が浮かんでいた。やみに浮かび光り輝く地球。なんて青く、なんて美しい星なんだろう。地球にいるときには、悪くなっていく一方にしか思えなかった地球が、こんなに美しく、こんなに力強く見えるなんて。本当は人間がどんなにがんばっても、僕達が地球を守っていくのではなく、地球が僕達を守っているだけなのかもしれない。これまでがそうであったように、これからもずっと。だって人間は、地球を離れては生きていけない存在なのだから。


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