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14年度開催結果


2002年 作文の部<中学生部門>入賞作品
文部科学省国立天文台長賞

「たなばた物語」
一関市立一関中学校2年  阿部 好恵
 
私(カシオ)は、ゴトゴトとゆれる列車の中にいた。窓の外には、白鳥座が大きく翼を広げて飛び回っていたり、おおかみ座がさそり座を追いかけていたり、いろいろな星座や星雲が輝いていた。
今日は七月七日。織姫と彦星が年に一度、会う事が許されたロマンティックな日。私はある目的でここへやってきた。いや、私だけではない。この列車の乗客のほとんどが、私と同じ目的だった。
「終点 銀河中央駅――お忘れ物がございませんよう、お確かめ下さい。」
人の流れにまかせて歩きながら、私の中では少しずつ闘志が湧いていった。実は、私はこの銀河中央駅を中心に行われるマラソン大会に出場するために、やってきたのだ。優勝者には好きな星に名前が付けられるという特典が与えられるのだ。
突然、私の肩をたたく者がいた。そこには、私のライバルのハウトがいた。何をするにもいつも、最後は彼との戦いとなり、私とハウトはいつしか友達からライバルへと変わっていた。
まもなく、アナウンスが流れた。
「さぁ、みなさん、スタート位置について下さい。コースは銀河中央駅をスタートして、天の川橋を渡り、天の赤道をのぼり、スターマウンテンがゴールとなっています。それでは位置について、よーい……。」 バン!
私はおもいっきりダッシュした。出場選手の列が後に続く。どうやら、私が一番らしい。すると、私の横にハウトがいた。また彼との戦いか。私はさらにスピードをあげた。今回もごかくの勝負となった。天の川橋を渡り、天の赤道の中腹に来た。その時だった。何か声が……。私は足を止めた。叫び声がしたような……。

「助けてー!」 さっきより大きな声が聞こえた。間違いない、誰かが助けを求めている。私は、登っていた坂を下った。すると、ハウトも気がついたのか、私を追ってきた。他の選手とすれ違い、私は天の赤道のふもとへと着いた。
どこだろう……。辺りを見回していると、一人の男が息をきらしながらやってきた。
「私は、彦星と言います。実は、織姫が今、崖から落ちて、ひどい怪我をしてしまったんです。手を貸して欲しいのですが……。」
私は悩んだ。今はレース中。助けに行けば優勝はできない。夢が実現できない。でも、このまま見捨てていけば、織姫が危ないのだ。私は彦星について行くことにした。ハウトも私についてきた。少し行くと、織姫が倒れていた。頭から血が流れ、手足の皮がむけ、そこからも血が流れ出ていた。どうやって手当てをしよう。そうだ、と私はひらめいた。以前星の本で読んだ天の川の水が、傷によく効くということを、思い出したのだ。
「ハウト、天の川の水を汲んできて! それから彦星さん、その腰に巻いている布を貸して下さい。」
私は、傷全てを天の川の水で丁寧に洗い、布できっちりと巻いた。まもなく、織姫が気づいた。彦星は、嬉しそうに笑った。

私とハウトは、再びレースに戻り、ゴールのスターマウンテンを目指した。天の赤道を登りきり、ようやく私とハウトはゴールに着いた。二人とも、最後のランナーだった。
「それでは、結果を発表いたします!銀河中央駅主催マラソン大会優勝者は、土星代表のオリオンさんです――。」

「ちょっと待って下さい!」
突然、甲高い声が聞こえた。織姫と彦星だった。
「実は、マラソン大会のさなか、この二人が私を助けてくれたんです! 命の恩人です。」
織姫と彦星は、事のいきさつを語った。会場は静まり返った。
「ぜひ、この二人に栄冠を与えて下さい。」
また会場は騒がしくなった。一人の選手が拍手した。すると、みんなも次々と拍手をし、口々に二人を讃えた。
「……では、本日のマラソン大会優勝者は、土星代表のオリオンさんと、やさしいカシオさん、ハウト君に決まりました。おめでとう!」

会場が歓喜に包まれた。私は嬉しくて涙がとまらなかった。念願の、星に名前をつけるという夢がかなう時がきたのだ。私は一番輝いている星に「カシオペヤ」、ハウトは青白く輝いている星に「フォーマルハウト」という名前を付けた。私は、最高の気分だった。ハウトも顔をクシャクシャにして笑った。

今日七月七日は、織姫と彦星が、年に一度会うことが許されたロマンティックな日。来年またこの場で会うことを誓い、再び、銀河中央駅を旅立った。


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